2013 Fiscal Year Research-status Report
知識と技術を学ぶ放射線学習プログラムの形成と教育実践
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24501071
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
山本 淳治 摂南大学, 理工学部, 教授 (90144427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀口 哲男 近畿大学, 原子力研究所, 講師 (30278741)
吉田 茂生 東海大学, 工学部, 教授 (70174927)
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Keywords | 放射線 / 工学教育 / 放射線測定 / 遠隔実験 |
Research Abstract |
本研究の目的は,放射線測定実験を遠隔実験によって行うことができる安心安全な放射線学習プログラムを形成して実践することである.このため,学習者がインターネットを介して遠隔から操作して実験を行うための測定装置と学習課題に応じた教材を製作して,実践のために提供することである.今年度は,次の測定装置と学習課題の教材製作を行った. 放射線測定実験は放射線源からの放射線を検出器で測る実験とした.学習者が遠隔から測定条件を随時設定して,これによって変化した検出器の測定値を読み取る.学習者が遠隔操作に使用する機器は,スマートフォン,タブレットPC,ノートPCなどの携帯型情報端末とした.そして,情報端末での遠隔操作は特殊なソフトウェアを使わず,情報端末に付属している一般的なWebブラウザを使う仕様とした.また,サーバを用いない新たな操作方式を加えた.このため,遠隔操作に使用する情報端末には機種依存やOS依存がなく,インターネットに接続できれば学習者が所有する情報端末がそのまま利用できる. 学習課題として昨年度の放射線防護の基本に新たに放射線検出器の特性を加えた.防護では,学習者が遠隔操作で線源と検出器の間に遮へい板を挿入して「遮へいすること」による放射能の減衰効果を,あるいは,遠隔操作で線源と検出器の距離を変化させて「距離をとること」による放射能の減衰効果をそれぞれ知ることができる.また,検出器の特性では,線源を固定して学習者が遠隔操作で検出器を回転させることで検出器へ入射する放射線の方向を変化させる測定とした.検出器には放射線の入射方向による検出依存性があることから,この測定によって検出器の使い方を知ることができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習者が自ら測定装置を遠隔で操作して放射線の測定値を得る体験ができるように,一定の台数の測定装置が必要である.学習者あるいは学習者グループがそれぞれに割り当てられた測定装置にそれぞれの携帯型情報端末(例えば,スマートフォン)からインターネットを介して操作信号を送るのであるが,昨年度はこの信号を複数台の測定装置が接続された1台のサーバが中継して制御する方式とした. 測定装置の製作に参加している大学生を対象とした試行の結果,このクライアントサーバ方式は機能した.しかし,学習課題の追加や測定装置の台数の増加に応じて,サーバの演算速度の向上が求められ,さらに,サーバ上で動作させるために製作した処理プログラムが肥大化し,その更新に時間を要することが分かった.そこで,今年度はそれぞれの測定装置にマイコンボードを1台ずつ装着して,マイコンと学習者の情報端末をインターネットを介して1対1で直接結ぶ方式を開発した. 放射線防護や検出器の特性など学習課題に応じて測定装置の操作手順は異なるが,マイコンボードに実装する制御プログラムをそれぞれの学習課題に応じて製作することで対処できるようになった.すなわち,測定装置の制御はマイコンに実装するプログラムの開発のみになるため,新たな学習課題に対するソフトウェア製作の生産性が向上した.さらに,サーバの設定やサーバのプログラムの更新に掛かる時間が省略できた.昨年度は,学習者のために準備するノートPCの他に学習者が持ち込む携帯型情報端末も使える実験方法を追加で開発したことにより遅れを生じたが,今年度は上述の改善の結果,おおむね順調に進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
学習者が遠隔から測定装置を扱うための操作方式としては,学習者の携帯型情報端末と測定装置に装着したマイコンを1対1で結ぶ方式がクライアントサーバ方式に比べて開発工程と製作経費の点で優れている.各学習課題に対して,測定装置のマイコンに実装するソフトウェアの制御部分のプログラムは異なるが情報端末との通信部分のプログラムは共通にできるため,開発工程の短縮が見込める.また,この測定実験の仕様ならば1台1万円以下のボードで満たすことができるため,測定装置の台数や学習課題の増加などに安価に対応できて拡張性がある.今後はクライアントサーバ方式も採用するが,この操作方式を中心に開発を進める. 一方,測定装置に関しては,測定実験の試行の結果見直しを検討する.放射線の防護と検出器の特性を学ぶ現在の装置は,一辺60cmのフレームを立方体に組んだ構造にしている.そして,立方体の上面にモータの駆動装置を取り付けて,遮へい板や検出器を載せる台を上面からつり下げてモータによって動かしている.この構造にしたのは,学習者が遠隔からの操作状況や検出器の指示値をWebカメラを使って視認するときに対象物以外の余計な物体がカメラに入らずに見やすくなる画像にするためである.しかし,測定装置は据え置くため,台数が増えると広い空間が必要になることがデメリットとなる.また,出前授業など1台を持参してデモする場合にも不向きである.そこで,放射線源か検出器を遠隔操作で動かす機能(例えば,直線移動や回転)別に用いる装置を考案する.そして,これを組み合わせて1つの学習課題を構成できるように,測定装置の仕様とデザインを再検討する.
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Research Products
(2 results)