2013 Fiscal Year Research-status Report
立体視アニメーションと電子線制御による時間領域を含む電磁気学3次元可視的教育
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24501076
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
山田 悟 石川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40249777)
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Keywords | 科学教育 / シミュレーション / 電磁気学 |
Research Abstract |
高等専門学校・大学の電気電子系の学科において, 電磁気学は, 電気電子系分野における非常に重要な基礎科目の 1 つとして位置づけられている。特に 近年では, 電子機器の動作周波数の高周波化や光デバイスの普及にともなって, その振る舞いを記述する電磁気学の重要性が増している。しかし, 教授する立場としては現状をながめると, 学生が電磁気学を完全に理解するにいたるまでには非常に多くの問題があると判断される。 その理由は, 電磁気学では, 電磁気学の基本法則である「マクスウェルの方程式」が電界と磁界との 3 次元的な時間領域の相互作用をともなうために, ニュートンの運動方程式のようにある程度の直感的な理解ができない。さらには三次元ベクトル解析や時間をともなった微分方程式などの数学的知識や 基礎物理学の知識基盤の上に成立しており, 初学者にとって学習困難となっているためである。 本研究では,これまでにこうした状況を改善するために,タブレットPCを利用した教育用電磁界シミュレーションプログラムならびに実空間の電磁界現象の検証を目的とした電子線制御システムを構築した。 教育用電磁界シミュレーションプログラムは,iPhone, iPadなどiOS搭載機で動作する。現在は2次元の電磁波シミュレーションまで行うことができ,電磁波の干渉,反射,透過,屈折などが自由に観測できるようになっている。 実空間の電磁界検証システムとして,ブラウン管型の電磁線制御システムを製作し,電界・磁界による電子線制御を行い,その結果を蛍光板状で確認することができるようになっている。 作製した成果物は,工業高等専門学校の2年生に利用させており,良好なアンケート結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発するシステムは,実空間での電磁気の理解を目指したブラウン管電子線制御装置とタブレットPCで動作する電磁界シミュレーションアプリケーションである。 ブラウン管を用いた電子線制御装置は完成しており,外部からの電界,磁界により電子線が制御できるようになっている。制御された電子線は,蛍光板状で目視で確認できるようになっている。こうした原理を利用した製品として,ブラウン管テレビがあるが,現在の高専生,特に低学年はブラウン管テレビの存在を知らないものも多く,デモ実験は新鮮な体験となっているようである。 タブレットPCで動作する電磁界シミュレーションアプリケーションは,iOS搭載機であるiPadとターゲット機種として開発したが,iPhoneでも動作することを確認している。1次元シミュレーションでは,電磁波の振幅と波長を入力することにより,その時間的な振る舞いが確認できる。また,誘電体内に入射した電磁波の透過,反射の現象,さらには,誘電体内での速度の変化を捉えることができるようになっている。2次元シミュレーションでは,平面波,点源からの電磁波などを自由に設定でき,その時間発展が観測できる。複数の電磁波の干渉や誘電体内での電磁波の屈折も観測可能である。 ただし,電磁界シミュレーションではシミュレーション領域が大きくなると多量のメモリ消費が発生するために,限られた領域でのみでしかシミュレーションができないことが課題となっている。 特に3次元シミュレーションは,限られたリソースしか持たないタブレットPC等小型端末では本質的に解決できない問題であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
ブラウン管型の電子線制御装置については,概ね完成していると考えている。今後は,電子線の制御をPCから行えるようにし,荷電粒子が外部電界,磁界から制御可能であるものであるという認識を学生に持ってもらいたいと考えている。 電磁界シミュレーションについては,iOS搭載機上での3次元シミュレーションについて,メモリの制約から限界ではないだろうかと予想している。現段階ではメモリ消費を抑えるべく,アルゴリズムを検討していき,領域が狭くシミュレーションの精度を犠牲としても,iOS搭載機で動作するように開発を継続する。 その一方で,近年急速に低価格化が進んだWindowsを搭載したタブレットPCを本システムに採用することも検討している。Windows機であれば,メモリの制約はある程度緩和されるからである。 Windowsタブレットで動作する3次元電磁界シミュレーションは,Webブラウザで動作するシステムとする。開発言語は,WebGLおよびJavaScriptとする。WebGLは,Webブラウザ上で容易に3次元を表現するための枠組みであり,Chrome, Firefox, Safari で動作する。システムをWindowsネイティブのアプリケ=ションとしないことで,動作環境を限定せず,MacOS X , Linuxでも動作するようになる。 あわせて,1次元および2次元電磁界シミュレーションプログラムもWebブラウザ上で動作するように移植する予定である。こうすることで,アプリを配布せずとも広く一般に利用することができるようになるからである。 今後は,本システムを授業に取り入れ,その効果を検証していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の成果報告を予定していた応用物理学会の開催時期が,所属する機関の行事と重なっており,参加することができなかった。 前年度出席し,報告できなかった成果を学会にて発表する予定である。
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