2013 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災被災地域における地学学習内容の検証と再構築
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24501089
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
川村 寿郎 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (60186145)
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Keywords | 東日本大震災 / 地学学習 / 理科教育 / 被災地 |
Research Abstract |
本研究は,東日本大震災被災地域の小中学校における地学の学習内容について検証し,被災地に適合し改訂した学習内容として再構築して実践的に普及することを目的とする。平成25年度は,以下の点が実績としてあげられる。 1.被災地域における地学学習内容について,平成24年度に実施した中学校理科担当教諭に対するアンケート調査の集約と分析を行った。その結果,大震災の前後において,地学学習指導内容や授業改善意識,及び地域の地学特性の再認識に対する強い要望が認められた。 2.岩手県・宮城県の内陸部における地盤災害の被災状況と今後必要とすべき地学学習教材を検討した。特に,仙台地域を例とした丘陵部~平野部の地下地質ボーリング資料や各種地質情報について,その教育的活用方法について検討し,一部を公表した。また,児童・生徒が大震災をもたらした津波や液状化を理解するための教具を作成した。 3.岩手県・宮城県の沿岸被災地では,地学学習として,津波のほか,地震動・液状化・地盤沈下の事象とともに,太平洋プレートの沈み込み域に面した地形特性(特に沈降海岸)や地質特性(南部北上帯),さらには各地域に応じた防災学習まで連関した内容の展開が必要である。関連する資料の収集を平成24年度に続いて行うとともに,学習内容の整理と展開方法について検討した。 4.宮城県の沿岸被災地域において,小中学校理科担当教諭を対象とした研修会・講習会を実施し,地域の地形・地質特性と今後の地学学習内容の展開方法について解説するとともに,教師の実践に向けた学習指導内容について吟味した。また,研修会の内容をコンテンツとした配信用資料の作成に着手した。さらに,検討した新たな地学学習内容に基づいた社会教育教材を検討し,ジオパーク活動や出前講座などを通じて,一般市民を対象とした学習内容項目について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画として平成24年度から継続された①地学学習内容のアンケート調査と分析に加えて,②学習モデルコンテンツ作り,③教材資料の収集の3項目は全てほぼ計画通り実施され,④学習モデルの紹介と普及の一部が実施された。さらに,平成26年度に予定している⑤学習モデルの吟味は,被災地の理科担当教員ばかりでなく,一般市民に対しても実際に解説・普及を行うことによって進んだ状況にある。しかし,④学習モデルのコンテンツの配信紹介は,コンテンツ資料の著作権が発生するので,当初の予定通りには進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に行った地学学習内容の整理と学習モデル作りに引き続き,平成26年度には被災地により適合した学習モデルの構築とそれを利用した普及や実践支援の研究を進める。 1.平成25年度に引き続き,被災地での地学学習内容の項目整理とコンテンツの作成を行う。 2.宮城教育大学で実施している「地(知)の拠点整備事業」と連動させて,被災地での地学学習コンテンツを紹介し,クラウド上での利用を試みる。 3.被災地の理科担当教諭を対象として,学習モデルの紹介と利用の普及を図るとともに,希望する教員の実践にあたって支援を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度には,インターネットを介した学習モデルコンテンツを公開して被災地域の地学学習支援に役立てるために,ホームページ開設と維持の費用を計上していたが,コンテンツ作成で著作権の課題が発生ずるため,開設に至らなかった。一方,所属大学において「地(知)の拠点」事業が開始されて,そちらで公開が可能となるため,次年度までその整備を待っている状況にある。 所属大学の事業において,次年度中に情報配信整備が進められ次第,その中でコンテンツを公開して被災地域での利用を図る予定である。その場合には,新たなホームページの開設・維持の費用は不要となるため,コンテンツ作成費用や被災地での普及・実践支援に充当する。なお,公開資料の著作権に関しては,速やかに該当機関や個人の了解を得る予定である。
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