2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24501097
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
谷口 和成 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90319377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠 潤平 香川大学, 教育学部, 教授 (80452663)
内村 浩 京都工芸繊維大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90379074)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 科学的思考力 / 認知促進 / 教員研修 / 形式的操作 / 小中大連携 / 推論形式 |
Research Abstract |
本研究は,科学的思考を行う際の基礎となる,形式的操作の推論形式(変数制御,分類,比例性,蓋然性など)に注目し,認知論アプローチにより,これらの操作能力の発達を総合的に促し,より直接的,根本的に科学的思考力を育む理科授業およびカリキュラムの開発を目的としている。ここで,認知論的アプローチとして,英国で顕著な成果を挙げている「認知促進(Cognitive Acceleration: CA)」プログラムを参考とし,CAの考え方を日本の学習環境において実践できる教員研修プログラムを開発し,それを通した現職教員との協働により,その実現を試みるものである。 本年度は,①附属小中学校の教員との連携研究体制を構築し,具体的な事例の紹介や実際のCAプログラムの授業の見学や実践を中心とした,CAの考え方と実際の授業を積極的に関係づける「CA研修プログラム」を開発した。 その後,②このプログラムを附属校の理科および算数・数学教員を対象として,試験的に毎月1回程度実施する中で,各教科におけるCA授業を各教員が開発し,授業実践を行った。ここで開発した授業では,小5,6年理科で「変数制御」「比例性」,同3,4年算数で「分類」,中1理科で「変数制御」「比例性」「複合変数」,同数学で「蓋然性」の推論形式を取り上げた。また,事前に児童・生徒の思考操作能力の発達状況を評価する課題を実施し,その結果をふまえた授業展開とした。その結果,すべての授業において,推論形式に対する認知的葛藤がおこり,それが思考の発達状況の違いによる活発な討論につながり,結論に至る思考の過程に対するメタ認知を促すといったCA授業の展開が実現した。 以上の結果により,開発した研修プログラムを受けた教員が,日本の学習環境に合わせたCA授業を構築し,実践できるようになっていることを示すとともに,このプログラムの有効性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童・生徒の思考操作能力の総合的な発達の評価法については,対照群の設定の問題が解決できておらず,検討が遅れているものの,本研究の主要な目的である,CA授業を実現できる教員研修プログラムおよび日本の教育環境に適合したCA授業の開発は,概ね当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 前年度に開発した研修プログラムを用いて,京都教育大学にて「(仮題)科学的思考の基礎を育む研修講座」を開催する。研修のねらいは,①通常の理科学習の中に,形式的操作能力の発達を促す「認知促進(CA)」の考え方を組み込むことができる教員の能力育成,②受講者が作成したCA授業を集約・再配置することにより,義務教育期間を通して思考操作能力の発達を促す理科カリキュラムの検討,③児童・生徒の思考操作能力の評価法と授業におけるその活用法の理解である。研修は複数回(3回程度)を予定し,毎回とも実践を通した理解を求める展開とする。評価は,上記のねらいに対する研修中のパフォーマンスや作成される授業プランの展開案の変遷等で受講者の理解度を測るとともに,毎回の研修終了時の自由記述式のアンケートおよびプログラム終了時のテスト形式のアンケートにより行う。実施にあたっては,具体的な実施計画段階から,京都府・市教育委員会との連携協力体制を構築する。 (2) 研修に並行して,教育現場においてCA授業の実践を行いながら,その支援のための教材研究を継続的に行う。特に,CA授業の核となる児童・生徒の話し合い活動(討論)を活発化し,より効果的にするための手法について,ソフト・ハードの両面から検討する。 (3) 研修参加教員も含めたCA授業に興味を持つ教員の実践支援の体制を構築する。例えば,「(仮題)CA授業研究会」を組織し,参加者を広く受け入れ,研修外でも共同で授業プランを検討,構築する機会や実践における質問や疑問に答える場を提供する。さらに,(次年度初めにかけてを予定)研究会のWebページ(HP)を立ち上げ,掲示板等を介して,開発される授業プランや成果・課題等の情報を共有する。 (4) 学会および国際会議に参加して,研究成果の発表や議論を通した情報収集を行い,開発した研修プログラムやカリキュラムの改善を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・方策(1)に関連して,毎回の教員研修において,CA授業を実践した経験のある現職教員を講師として招聘するために,その旅費および講師料(3回×3名程度)を支出する。 ・方策(1)(2)に関連して,研修中の受講者やCA授業中(特に話し合い活動中)の児童・生徒の会話や行動を記録するために,デジタルビデオカメラ(8台)を購入する。また,CA授業における教材作成のための費用(消耗品)を支出する。 ・方策(2)に関連して,児童・生徒の話し合い活動支援のためにタブレットPC(11台),Student s Response System(1クラス)購入する。 ・方策(3)に関連して,サーバーパソコン(1台)やネットワーク環境を整えるための周辺器材を購入する。 ・方策(4)に関連して,国内学会および国際会議等での研究成果の発表や情報収集のための必要経費を支出する。
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