2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24501097
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
谷口 和成 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90319377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠 潤平 香川大学, 教育学部, 教授 (80452663)
内村 浩 京都工芸繊維大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90379074)
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Keywords | 科学的思考力 / 認知促進 / 教員研修 / 形式的操作 / 小中大連携 / 推論形式 |
Research Abstract |
本研究は,科学的思考を行う際の基礎となる,形式的操作の推論形式(変数制御,相関性,蓋然性など)に注目し,英国で開発された“認知促進(Cognitive Acceleration: CA)”の概念を用いて,これらの操作能力の発達を総合的に促すことにより,(1)直接的,根本的に科学的思考力を育む理科授業およびカリキュラムの開発,およびその(2)評価方法を開発することを目的としている。さらに,(3)CAの概念を日本の理科教育において実践できる教員研修プログラムを現職教員との協働による開発を目指すものである。 本年,上記(1)については,本学附属小中学校の教員との連携研究体制を引き続き維持し,異なる学年(小5,小6,中2)の理科において「形式的モデルの使用」に関する思考操作能力の発達を促す授業の開発と実践を行った。その結果,異なる発達段階(学年)ごとに明らかな反応の違いが確認され,共通の思考操作を縦軸として,継続的にはたらきかけることの意義が明らかになった。 上記(2)については,中1を対象とした「変数」の思考操作能力を測るパフォーマンステストを開発し,CA授業を行うクラスと対照クラスにおいて事前事後で調査した。その結果,CAクラスに有意な変容が確認されたが,テストの妥当性についてはより詳細な検証が必要である。 上記(3)については,昨年度,開発した「CA研修プログラム」を京都府教育委員会との連携の下,府内の公立中学校の理科教員(30名)を対象とした教員研修において使用し,その効果について検証した。研修の結果,現在の理科教育におけるCAの視点の必要性を共通認識とすることができたが,研修後のアンケートの結果,内容が豊富すぎて,1日の研修では実際の授業の指導案作成まで至らないことから,追加の研修の機会を求める声が多数聞かれるなど,研修の内容について検討が必要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童・生徒の思考操作能力の総合的な発達の評価法については,課題の妥当性についての検討が遅れているものの,本研究の主要な目的である,CA授業を実現できる教員研修プログラムおよび日本の教育環境に適合したCA授業の開発は,概ね当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を総括しつつ,本研究における3つの目的(【研究実績の概要】参照)の達成を目指した最終的な検討を行う。 具体的には,前半では,(1) CAを組み込んだ理科授業(以下CA授業)に興味を持つ理科教育関係者を対象とした,ミニシンポジウムを開催し,これまでの研究成果を報告し,そこでの議論を開発中のCA理科カリキュラムにフィードバックする。 また,(2)前年度に開発したCA研修プログラムの内容,展開を再検討し,引き続き,京都府教育委員会と連携の下,教員研修を開催する。研修中のパフォーマンスや作成される授業プランの展開案等により受講者のCA授業に対する理解度を測るとともに,研修終了時のアンケート調査を行い,開発プログラムの効果を検証する。 中盤~後半では,(3)研修参加教員も含めたCA授業に興味を持つ教員の実践のための支援体制を構築する。たとえば,昨年度,実現できなかっった「CA授業研究会」を組織し,研修外でも共同で授業プランを検討,構築する機会や実践における質問や疑問に答える場を提供する。さらに,この研究会のWebページ(HP)を立ち上げ,開発される授業プランや成果・課題等の情報を共有する。 終盤では,(4)以上の研究成果を総括し,学会発表や論文および公開ミニシンポジウムなどによって全国に発信する。また,可能ならば,国際会議に参加して国際的な周知を目指す。
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