2013 Fiscal Year Research-status Report
恐竜化石を活かした自然史リテラシーの涵養と環境教育への展開
Project/Area Number |
24501107
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
佐藤 裕司 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (80254457)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半田 久美子 兵庫県立人と自然の博物館, 兵庫県立人と自然の博物館, 主任研究員 (20311483)
池田 忠広 兵庫県立人と自然の博物館, 兵庫県立人と自然の博物館, 研究員 (50508455)
三枝 春生 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (70254456)
古谷 裕 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (90173541)
|
Keywords | 自然史 / リテラシー / 恐竜化石 / 生涯学習 / 環境教育 |
Research Abstract |
本研究は、兵庫県立人と自然の博物館(以下、「博物館」)が実施してきた恐竜化石の発掘調査を基軸とした生涯学習プログラムと地域づくり支援について、その効果を検証し、兵庫発の自然史の知見を持続可能な地域づくりをめざす環境教育へと発展させることを目的とする。 本年度は、平成24年度に開催した国際シンポジウム「白亜紀前期の恐竜研究最前線」(2013/3/16)、フォーラム「恐竜化石を活かした地域づくりフォーラム」およびサイエンス・カフェ「篠山層群の化石から白亜紀の生き物を復元する」(2013/3/17)の成果をまとめ、博物館紀要に報告した。この報告内容と平成24年度の検証委員会報告(http://hitohaku.jp/top/pdf/kensyouiinkai_report.pdf)を踏まえ、恐竜の「発掘」から「復元」へとテーマを移行させ、自然史に無関心な市民層への動機づけとなるエデュテインメント(楽しみながら学習できる)プログラムの開発に取り組んだ。その一つとして、「アンモナイト化石の石けんレプリカづくり」のワークショップを各種のイベントにおいて試行した。また、恐竜の骨化石レプリカや歯化石のシリコン型を製作するなど、具体的な教材製作も進めた。 さらに、兵庫県加東市の小学校の協力を得て、6年生理科の単元「大地のつくり」において恐竜の復元画や歯化石の拡大レプリカを教材に用いた授業を企画・実践した。本企画では、大地の営みがもたらす「恩恵」と「災い」の二面性を伝えることを重視し、「恩恵」の側面において子どもたちの知的好奇心を喚起する素材として恐竜化石を活用した。授業においてアンケート調査を実施し、児童からの評価を得た。その結果、「恐竜」は「大地のつくり」の学習において教育効果を高める素材として有効であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、「恐竜」という親しみやすい素材を動機づけとした、新たな自然史リテラシー涵養のための手法開発を行い、持続可能な地域づくりをめざす環境教育への展開を試みる。このことから、平成25年度は(1)恐竜復元をテーマに自然史に無関心な市民層への動機づけとなる手法の開発、および(2)自然史教育および環境教育の先進事例調査の2項目について重点的に取り組むことにした。 (1)では、これまで「発掘」を基軸としてきた展示や学習プログラムを、恐竜「復元」を基軸とした内容へと展開させた。篠山層群の恐竜発掘調査では、これまでに多くの恐竜の歯化石が発見されている。丹波竜(竜脚類)、鳥脚類、曲竜類といった植物食恐竜、および原始的なティラノサウルス類を含む肉食恐竜の歯化石が産出している。これらの歯化石を素材にして、拡大レプリカ製作など具体的な教材開発を進めた。恐竜の歯化石の拡大レプリカや復元画を教材に用い、小学校理科「大地のつくり」の授業実践に取り組んだ。児童による授業評価アンケート調査を実施したところ、「恐竜」が「大地のつくり」の学習に非常に有効であることが示された。このほか、恐竜と同時代の示準化石アンモナイトを利用して、自然史に無関心な市民層への動機づけをめざした自然史学習プログラム「アンモナイト化石の石けんレプリカづくり」を開発し、ワークショップにおいて試行した。 (2)については、全国の地域再生に関わってきた地域再生アドバイザーから先進事例をヒアリングした。そのアドバイスをもとに、高校生を対象とした「自然史入門合宿」のモデル事業を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度が最終年度となる。篠山層群で産出した恐竜化石等の学術研究について論文等の成果が期待されることから、それをきっかけに地域づくりや学校教育での恐竜化石等の一層の活用促進を図る。 学校教育では、昨年度に行った小学校理科単元「大地のつくり」での活用を推進する。「大地のつくり」では、自分たちが生活する地域の大地の成り立ちを学び、大地が変化すること、そしてその変化は時として大災害を引き起こすことを知らせることが重要である。このためには、大地の営みがもたらす「恩恵」と「災い」の二面性をいかにバランスよく伝えるかが重要である。前者においては、子どもたちの知的好奇心を喚起する素材が望まれる。平成25年度の実践研究から、その素材として「恐竜」は有効であることが示された。この成果を学会発表し、報告書(論文)としても公表する。これをベースに、恐竜化石を活用し、自然史リテラシーの涵養をめざす小学校理科「大地のつくり」指導プログラム案を作成し、教員や指導者向けの研修で意見交換する。また、昨年度開発した学習プログラムによるワークショップを実施し、自然史エデュテインメントの普及とその効果を検証する。その一方で、恐竜の歯化石を活用した新しいプログラム開発にも取り組む。 これらを通じて、兵庫発の自然史の知見を環境教育へと発展させる学びのデザインに関して一定の成果を得る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
セミナー等で外部講師を招聘するための謝金を用意したが、内部講師で実施した。また、教材開発における化石のレプリカ製作が既存の鋳型をもとに作製できたため、予定より安い経費で仕上がったことによる。 繰り越した経費は次年度開催予定の関連展示に必要な物品購入などに当てる。 全体としては、今後の推進方策で述べた実施内容にしたがい、実践・研究の成果を学会発表したり、報告書(論文)として公表するための経費に使用する。具体的には、学会発表等の準備作業の補助に係る謝金や学会参加の旅費に当てる。また、報告書の印刷代(または論文の別刷代)にも使用する。教員や指導者向けの小学校理科「大地のつくり」の指導案作成や、恐竜の歯化石を活用した新しいプログラム開発にも取り組む。その際に、初等教育の専門家等からアドバイスを得る必要があり、そのための謝金に使用する。このほか、研究のまとめに必要な物品類の購入にも使用する計画である。
|
Research Products
(6 results)