2012 Fiscal Year Research-status Report
流体力学に関する誤情報の拡散とその防止法に関する研究
Project/Area Number |
24501111
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
石綿 良三 神奈川工科大学, 創造工学部, 教授 (00159790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 陽一 神奈川工科大学, 工学部, 准教授 (50210349)
根本 光正 神奈川工科大学, 工学部, 助教 (90085134)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 科学教育 / 流体力学 / 流れ / 科学入門書 / 理科教育 / 科学実験 / ベルヌーイの定理 / 原理の誤認識 |
Research Abstract |
多くの一般向け科学書、大学における物理学の教科書、テレビ番組、インターネットなどで流体力学に関連する現象の原理が多くのケースで間違って解説されている。このような誤認識がどのように発生、伝達、拡散するのか、そのメカニズムを解明し、防止策に結びつけることを研究の目的とし、調査、分析、考察と成果の公開・普及を目指している。 平成24年度は、149冊の科学入門書、理科教育関係図書、流体力学関係図書を購入し、流体力学に関連する現象の説明について調査を行った。噴流の圧力が大気圧よりも低くなるとの誤認識とそれから波及する影響、翼の原理の間違いなどが広く散見された。間違いの6~7割はベルヌーイの定理の誤認識によるもので、これまでの調査・分析結果とも大きな相違はない。このような伝達は、著者の知識・理解不足、他書の安易な転載、読者の関心を引くための内容(厳密な説明よりも面白さを優先)、平易な記述から誘発される説明不足と誤解、読者の理解の仕方などさまざまな要因が複合していることが見えてきている。また、流体力学の研究者とのディスカッション(延べ40~50名ほど)を通じて誤情報の拡散実態や誤解している当事者の心理などについて理解と考察を深めた。今後さらに調査、分析を深める必要がある。 成果の公開・普及については、学会発表1件(日本機械学会)を行った。理科教員等の研修会の開催2回、小中高生対象の理科教室・模擬授業10数回、日本機械学会HPでの実験動画公開18件(http://www.jsme-fed.org/experiment/index.html)、科学イベント(第18回流れのふしぎ展、日本機械学会)の開催を行った。これらの活動では、公開・普及の他、一般市民、理科教員および青少年の理解の仕方や知識などの把握も目的の一つにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般向け科学書については過去の研究と併せて300冊程度の調査を行い、誤認識の拡散実態の概要は把握できつつある。大学の物理学の教科書については、物理教育の創世記から1950年代くらいまでの情報が断片的にしか入手できておらず、誤認識の発端と初期の伝達の解明が不明確ではあるが、数10年に渡って誤認識が伝達されてきた流れは概ね把握できつつある。また、伝達・拡散の要因についても分析が進行しつつある。ただし、これらは推論の域であり、より明確な根拠が求められる。 一方、成果の公開・普及については、明確な誤認識(たとえば翼の原理、噴流の圧力など)に関する情報発信を主として日本機械学会を通じて実績を積み上げている。また、これらの情報発信システムを構築できてきたことは今後の活動に対して効果的である。 学会発表は6件行い、研究者ばかりではなく一般市民、理科教員、青少年への成果の公開を順調に行っている。また、日本機械学会ホームページ(http://www.jsme-fed.org/experiment/index.html)において実験動画像の公開を18件追加することができ、誤解しやすい事例などについても言及した。雑誌論文については、まだ検証を必要とする部分が残っており平成25年度以降に順次投稿を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
一般向け科学書と物理学教科書(大学基礎教育用)の調査・分析は継続していく。特に、1950年代以前の物理学教科書の調査が求められる(関連図書、雑誌の購入、調査・データ整理のため謝金を予定)。図書における拡散実態は概ね把握できつつあるものの伝達のメカニズムについては、より深い分析と考察が必要であり、これを進めたい。 インターネット上の誤情報については調査を始めてはいるが、あまりにも広範かつ流動的であり、全体としての実態の把極めて困難である。そこで、一般的なネット情報の伝達について考察を進め、ネット特有の情報発信と受信における問題点の抽出からアプローチしていきたい。 流体力学の研究者、理科教員とのディスカッション等を継続し、情報収集と考察を図る(調査旅費を予定)。これらを通じて誤認識の伝達メカニズムの解明への一方策としたい。 各種科学イベント(展示会、理科教室、理科教員研修会、学会HPでの情報発信など)を通じて、実態調査とともに成果の公開・普及を継続していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)27,301円は消耗品費を一部節約したものであり、次年度繰り越しとした。平成25年度の使用計画に大きな変更はない。
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Research Products
(7 results)