2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24501121
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
吉野 巌 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60312328)
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Keywords | メタ認知 / 算数 / 文章題 |
Research Abstract |
前年度(平成24年度)に行った調査データの再分析を行った。前年度の調査では、算数の文章題解決場面において、メタ認知的活動の程度をより簡単に測定する質問紙を開発するとともに、小学校5年生の2クラスに対してメタ認知的支援を含む介入授業を時期をずらして行い、その効果を質問紙で測定することを試みた。インタビューデータから算出した得点を文章題解決の4つの段階(問題理解、立式、計算、答えの確認)ごとに求め、質問紙の各段階の得点との対応関係を再分析したところ、問題理解段階では質問紙の回答とインタビューの回答が十分に対応していたが、立式段階では両者の対応関係はそれほど強くなかった。計算段階と確認段階では両者の対応関係は中程度であった。この結果から、立式段階の質問紙の項目を見直す必要性があることが示唆された。一方、介入授業の効果に関する再分析で、事前調査のメタ認知得点で上位・下位群に分けて分析を行ったところ、実験群1も実験群2も、介入授業の直後の調査時点で下位群の子どものメタ認知得点が上位群に追いつき、介入授業の効果が示された。 また、大学生対象にメタ認知を活性化することが論理的な思考を促進するかどうか調べたところ、模範解答と自らの解答を比較した上で自らの思考を振り返ること(反省的モニタリング)によって課題の成績が上昇した。このことから、小学生の算数指導においても、単なる振り返り活動ではなく、解決に失敗した時の自らの思考内容をまとめて次に生かすような活動の有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究協力者である小学校教員が異動となり異動先で教頭になってしまったため、元の小学校でも異動先の小学校でも調査を行うことが困難になってしまった。このため、平成25年度に計画していた新規の調査は行わず、前年度の調査データの再分析を行った。また、小学校での調査ができないことから、大学生のメタ認知を育成する方法についての研究を行い、その研究から小学生のメタ認知能力育成に効果的な方法について考察することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
小学校での研究に協力できる可能性のある先生何名かと打ち合わせを行っている。小学校での実践授業は今年度後期を予定している。そのための準備として、前期中に算数文章題メタ認知質問紙(特に立式段階の項目)を改良する。メタ認知的支援を伴う算数指導法の改良については、「頭の中の先生」を意識化させる働きかけを強化することが中心であり、そのために、①教師の発問や授業プリントに「頭の中の先生」という表現を増やすこと、②ノート指導において「頭の中の先生」にアドバイスしてもらう内容を書き込むように指導すること、③特に問題をうまく解けなかった時に、なぜ解けなかったのかを振り返ってノートに書くように指導すること、を授業で行うようにする。これらオリエンテーション、授業ワークシート、授業指導案などの詳細を平成26年前期中に策定する。その上で、新しい指導法に基づく算数介入授業を、平成26年度の10-12月の3ヶ月間にわたって、実験協力校の小学校5年生を対象に行う。また、介入授業の事前調査、事後調査、遅延調査として、ワークシートによる文章題解決課題を複数回行い、メタ認知能力を測定する。これらメタ認知得点や問題解決得点の変化から、新しい指導法の効果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究がやや遅れていることと、別の科研費(分担者としての)から支出した旅費もあり、資料収集や学会発表のための旅費が想定していたほどかからなかったことなどによる。 本研究では、児童のワークシートへの記述・回答を収集し分析することが中心であり、そのデータ化のための補助設備や人員が必要である。補助設備として、パソコン、ビデオ、データ解析ソフトは購入したので、より周辺的なソフトや記録媒体等を購入する予定である。また、ワークシートへの記述をテキストデータとして入力するための補助人員として学生をアルバイトとして雇用したいと考えている。このデータは膨大であり、各年とも、1日約6時間として、1人×50日分の謝金を計上した。また、学会発表(国内)についても、2回(研究成果発表ならびに資料収集)ほど予定している。
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