2013 Fiscal Year Research-status Report
再現性による「ふりかえり」を促進する仕組を用いたジェネリックスキルの積み上げ教育
Project/Area Number |
24501161
|
Research Institution | Osaka Seikei University |
Principal Investigator |
浅井 宗海 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 教授 (90511816)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 知子 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 助手 (00626319)
中井 秀樹 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 准教授 (60330065)
稲村 昌南 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 准教授 (70320009)
千代原 亮一 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 准教授 (80411742)
|
Keywords | PBL / ふりかえり学習 / ビデオアノテーション / コンピテンシーディクショ ナリ / ジェネリックスキル / eポートフォリオ / 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
本研究は、PBL(Project-Based Learning:プロジェクト型学習)を使った学習プログラムの中で、自己の行動事実に関する再現性のある情報を用いて、学生に学習後の「ふりかえり」を行わせることにより、学習者の自己評価の精度と自己評価力を高める仕組みを構築し、それと共に、「ふりかえり」から導き出された行動特性に基づき、評価の客観性を高めるコンピテンシーディクショナリを作成することを目的とする。そして、以上の仕組みを土台に、学習と評価のサイクルを通して学生に自己の強み弱みを正確に把握させることで、ジェネリックスキルの効果的な育成を目指すものである。 ここまで、本研究では、大学2、3回生を対象にPBL形式の授業を繰り返して実施し、コンピテンシーディクショナリを使った自己評価を行い、この繰り返しにより評価が平均的に向上することが分かった。また、PBLでの学生の様子をビデオ撮影し、「ふりかえり」において、明確なエビデンスとしての再現性あるビデオ記録を使って自己評価を行わせるといった実証実験を行った。その結果から、ビデオを使った「ふりかえり」支援の有効性を確認することができ、この結果を受け、既存のeポートフォリオシステムにビデオアノテーション機能を追加した。この機能により、ビデオ視聴時に評価すべきと感じた場面に、ビデオに連動して自己評価、さらには他者評価も書込んで共有できるものとなった。 しかし、学生の書込から、自己評価力に関する問題点として、行動事実に関する評価内容が表面的な記述に止まっているという事実が判明した。よって、これまでに構築した学習システムの改善として、特に、学生の行動事実に対する分析力及びそれを文章化する表現力を高める訓練の仕組みを検討する。また、改善のヒントを得るために海外調査、及びPBLの評価を遠隔によって相互に行うといった実験を実施する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、研究目的から4つの取組を行う計画を立てた。①PBLの活動を再現性のある情報として残し、「ふりかえり」時に、これらの情報を使って学習者に自己・他者評価を行わせ、「内省的な観察」を通して自己評価力が高まることを検証する。②以前行ったPBL から導き出した明確な自己目標を基に再度PBLを実施し、学習後に、目標達成について再評価させることで、ジェネリックスキルに対する積み上げ学習が促進されることを検証する。③PBLの繰り返しによって得られたビデオ及び書込ログ(自己評価等)等を使った行動特性の解析や、他大学から得た関連情報を基に、コンピテンシーとそれらの到達度評価を行うためのルーブリックを作成する。④①の他者評価や、③のコンピテンシーとルーブリックを使った評価によって、「ふりかえり」における自己の評価精度が向上することを検証する。 2年間の取組として、①では、eポートフォリオシステムにビデオアノテーション機能を追加し、PBLでの学生の様子を撮影したビデオを視聴しながら、自己・他者評価をビデオに連動して書き込める仕組みを完成し、これを使った実証実験を開始した。②では、自己目標を明確化するためのコンピテンシーとルーブリックのプロトタイプを開発すると共に、この尺度を使った学生の目標設定と学習プランの作成、実施、評価という学習サイクルを構築し、この実証実験から学生の評価が平均的に向上するという結果を得た。③では、プロトタイプとして作成したコンピテンシーとルーブリックについて蓄積した2年分の評価及び検証データを基に、これらの妥当性の分析とその改善に着手した。④では、学生の評価が行動の表面的な記述に止まっているという問題が明確になったため、評価の深化を促進する仕組みの検討に入った。 このように、本研究は、最終的な検証及び改善の段階に達している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の平成25年度の計画では、次年度(平成26年度)に、①PBL形式での授業とビデオを使った「ふりかえり」についての継続的な実証実験の実施、②オレゴン大学のアクティブラーニングや教育支援システムに関する調査及び意見交換、③同一被験者に対して繰り返し実施したPBL活動の検証を通じての積み上げ教育の構築、④研究成果の論文等での公表及び本研究の報告書の作成という4項目が予定されていた。この計画に従って、次に示す①~④を実施する。 ①及び③について、PBL形式での授業とビデオを使った「ふりかえり」の学習及びその繰り返しは、既に、正規の授業の中に組み込まれており、平成26年度では前期と後期に2、3年生を対象にそれぞれ1回ずつ行うことが決定している。尚、ここまでの実証実験で、学生の評価が、行動の表面的な記述に止まっているという問題が明確になったため、学生の行動事実に対する分析及び表現力を高める訓練の仕組みを検証する。そのために、再現性のある情報(ビデオ)を使った評価とそれを用いない評価とを比較して前者の教育効果を検証すると共に、繰り返しによる効果も検証する。また、他者評価の有効性を検証するために、PBLについて大学間での相互評価の実証実験を前期中に行い、完全なる第三者による他者評価が学習者の評価認識に及ぼす影響を検証する。 ②については、オレゴン大学が運営するOBA(eポートフォリオシステムを含むオープンな学生中心の学習環境)の調査及び担当者との意見交換を行い、本研究の学習システムにその成果をフィードバックする。④については、学会発表や論文として投函した3年間の研究成果を研究報告書としてまとめ、配布する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、PBL形式での授業とビデオを使った「ふりかえり」についての継続的な実証実験と、ビデオに連動した文字記録を用いたPBLでの「ふりかえり」の実証実験に伴う設備・消耗品等の費用として約210千円を予定していたが、実際の支出は約24千円であった。この理由は、後者の実証実験で他大学との連携についても検討しており、そのためにPC等の設備・消耗品を利用する予定であった。しかし、その実証実験で他大学との内容調整に時間がかかり、本年度の実施ができなかったためである。 もう一点は、学会への参加及び発表と、研究協力者との打合せに掛かる旅費として約300千円を予定していたが、学会の開催地が比較的近郊になり、予定額より少なくて済んだためである。 次年度は、PBL形式での授業とビデオを使った「ふりかえり」についての継続的な実証実験と、同一被験者に対して繰り返し実施したPBL活動の検証を通じての積み上げ教育の構築の実施を予定しており、この中で、本年度実施できなかった他大学(研究協力者の大学)との連携による実証実験を前期授業で実施する。そのために、物品費約181千円と旅費約84千円を予定している。9月にオレゴン大学のアクティブラーニングや教育支援システムに関する調査及び意見交換を行う予定であり、そのための旅費(当該大学の事情に詳しい研究協力者、研究代表者、共同研究者)として約1,250千円を予定している。また、研究成果について学会発表や、論文等での公表、本研究の報告書の作成のために、旅費約240千円、その他(印刷費、学会参加費等)約131千円を予定している。 よって、合計は1,886千円となり、次年度使用額を含めて、予定通りの執行を想定している。
|
Research Products
(6 results)