2012 Fiscal Year Research-status Report
自由記述式コースウェアに対応したLMSの開発と学習データの分析
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24501215
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡邊 博之 日本大学, 工学部, 教授 (40147658)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | LMS / SCORM / M系列乱数 / コースウェア / 学習時間 / マハラノビス距離 / SN比 |
Research Abstract |
自由記述式コースウェアに対応したLMSの開発と学習データの分析について,次の研究成果が得られた。 (1)LMSの開発 LMS(学習支援システム)で学習を行う場合,ユーザが問題を自由に選択すると回答が暗記されやすい状況が発生する。このため,SCORMではマニフェストファイルの記述によって,ランダム出題を可能としている。しかし,ランダム関数を使用すると,複数回学習したときに出題頻度の差が生じる問題点がある。本研究では,M系列乱数を用いて擬似的に一様分布で,任意の問題数のランダム出題を提示可能とするSCORM対応のLMSを開発した。問題名はユーザが問題を自由に選択できないように非表示にした。また,M系列乱数の発生には初期値が必要なため,ユーザに応じて異なる初期値のランダム出題を発生するようにした。この結果,周期の長い問題が出題可能となり,問題名と回答だけを暗記することのないシステムとなった。 (2)学習データのMTS法による分析 学習支援システムを用いたコースウェアの回答によって得られる学習データには,得点と学習時間がある。繰り返し型コースウェアでは,全学習者が合格点に到達するため,学習時間が分析法の対象となる。本研究では, Cプログラミング繰り返し型コースウェアを対象に,基準空間として仮想教員グループの学習時間を用い,メンバシップ関数を用いて学習時間を有限の値に変換し,マハラノビス距離によって学習時間を分析する方法を提案した。この結果,学習時間の短いグループと長いグループとに2分類した。本提案手法の妥当性は,実測値と比較することによって確認し,学習時間を長引かせる問題項目を明らかにした。また,マハラノビス距離を直交表へ割付けることによってSN比を求め,問題項目のコースウェアに及ぼす定量的な影響を分析した。更に,任意の問題項目で構成されるコースウェアの学習時間を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究目標は(1)自由記述式演習問題を含むさまざまなコンテンツを作成し,そのコースウェアをSCORM対応LMSの開発によって動作確認すること,(2)LMSに蓄積された学習データを分析することである。これらに対して,それぞれ具体的に次の展開を行った。 (1)C言語及び英語の自由記述式の演習問題を作成し,マニフェストファイルでいくつかの出題方式が可能なコースウェアを作成した。また,演習問題をランダムに発生することが可能なSCORM対応LMSを開発し,作成したコースウェアの動作確認を行った。問題をランダムに出題することを含めて,LMSの開発については電気関係学会東北支部連合大会で発表した。特に,英語の自由記述式の演習問題では,回答欄の文字数を固定すると,記述した文章が隠れてしまう問題点が発生したため,回答欄を自由に可変できる機能をシステムに追加した。 (2)学習データ(得点と学習時間)の分析をマハラノビス距離を用いてグループ化する新しい分析法を提案した。この手法は今後,教育工学の分析手法として広く活用することが期待できる。この成果は国際会議ICCE2012で発表した。 以上の(1)と(2)の観点から,当該年度の研究目標は達成できた。また,コンテンツをインターネットで国民に広く利用できるように提供し,得られた成果を社会に発表した。しかし,自由記述式の回答は短い文章を正誤判定するLMSの開発に留まっている。長い文章においては検討したが,基礎的アプリケーションの作成に留まり,それをLMSに実装するには至っておらず,当初の計画以上に進展しているとは言えない。このため,「おおむね順調に進展している」と自己点検評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
LMSの開発と学習データ(得点と学習時間)の分析について,次の研究を進める。また,作成したコースウェアを国民が広く利用できるようにホームページ上で提供すると共に,今後も学術的な成果報告を学会及び研究会を通して行う。 (1)英語及びC言語の演習問題を作成し,コースウェアとして一部は体系化した。今後はデータベースに蓄積されている数多くの演習問題の中からランダムに数問を出題するため,問題数をさらに増やす予定である。また,さまざまな方式のコースウェアを作成し,どのようなコースウェアがより学習者の学習効果やステップアップに結び付くかを検討する。LMSの開発においては,自由記述式の回答を正誤判定するアルゴリズムの基礎的検討を行い,問題点を改善した上でLMSに実装する。特に,英語を対象とするコースウェアでは,課外講座の英単語と英文法の学習者各50名を対象に運用を行い,LMSサーバで学習データを収集する。C言語を対象とするコースウェアでも,同様に受講生50名を対象に学習データを収集する。自由記述式の演習問題では無回答問題が増えるため,ヒントの提示が必要となる。これに伴い,回答の暗記が問題点となる。しかし,当該年度に開発したランダム出題可能なSCORM対応LMSによって,そのような学習者がどのように無回答問題から回答が導き出されるかをランダム出題の回答パターンから得られる結果によって検討する。 (2)自由記述式の演習問題でLMSサーバに蓄積された学習データについて,当該年度で提案したマハラノビス距離を用いた新しい分析法を用いてコースウェアの特徴を分析する。また,設備備品費で購入した高速データ取込解析システムを用いて,演習問題の無回答及び回答問題がどのような特性を示すかを分析し,回答パターンと比較することによって結果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費で新規購入した高速データ取込解析システム(基礎医学研究システム,MP150WSW-ENT)及びEEGマッピング研究用プログラム(ATAMAP2)によって,演習問題の回答時の学習者の状況が分析できる。しかし,多くの学習者のデータを収集するには,メモリ及びハードディスクの容量が不足するため,消耗品費で購入する必要がある。また,さまざまなコースウェアを効率よく作成するためには,コンテンツ作成支援ツールが必要である。研究成果を印刷するためのプリンター用トナー,及びネットワーク経由でデータを転送するためのLANケーブルも必要である。これらも消耗品費で購入する。研究成果は全国大会や研究会で発表する必要がある。また,技術講習会への参加,市場の動向調査,資料取集を行う必要がある。これらは旅費で使用する。
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