2013 Fiscal Year Research-status Report
知的障害児のための3Dを用いた文字発音学習支援システムの開発
Project/Area Number |
24501230
|
Research Institution | Kurume Institute of Technology |
Principal Investigator |
小田 まり子 久留米工業大学, 工学部, 准教授 (20269046)
|
Keywords | 特別支援教育 / 知的障害 / 教育支援 / コンピュータグラフィックス |
Research Abstract |
本研究では、知的障害児を対象に、文字や音声、口唇動作を関連付けながら学習できる3D-CGを用いた教材ソフトウエアを開発した。発音の学習においては、“Lip Reading”を応用し、学習者自身の顔をモデルにした口唇動作CGアニメーションを開発した。従って、学習者は自分の顔に似たモデルによる正しい口唇動作を見ながら発音、口唇動作を学習できる。また、文字(平仮名)の学習においては、子どもたちの興味を喚起し、集中力が続くように、文字を3-D CGで表現し、アニメーションをつけた。 子ども達は、自分の顔や友達の顔を大画面で見ることを喜ぶので、学習者口唇モデルCGアニメーションは、学習に興味を持たせ、集中させるためにも役に立ったといえる。カードや本などの文字に興味がなかった児童も、文字のCGアニメーションには興味を示し、最終的にカードの平仮名文字を読めるようになった。また、文字と発音、口唇動作と発音の関係性を理解できるようになった。特別支援学校の先生方からは、同じように文字に対する興味が無く、識字能力が低い児童に対しても同じように興味を惹きつける事ができると期待されている。 特別支援学校における教育には、久留米工業大学の学生が技術的・教育的支援を行った。この教育支援は、久留米工業大学学生にとって、障害児をサポートする教育経験、およびソフトウエアの利用者(ユーザインターフェース)を考える貴重な経験となった。児童の学習にとっても、学生のサポートは有効に働き、横で指導している大学生の期待にこたえて頑張ろうとする児童の姿も見られた。大学生とのふれあいが児童たちに良い影響を与えていると考えられる。今年度までの研究成果については、"知的障害児のためのCGアニメーションを用いた教育支援ソフトウエアの開発"(教育システム情報学会誌, No.31 Vol.1 2014)で報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、特別支援学校に通う子供たちの障害は重度、重複化しており、障害の状態や発達度合いも多様化している。久留米市立特別支援学校にも多くの肢体不自由と知的障害の重複障害児が在学しており、開発した教材ソフトウエアを利用するためには、児童にあった入力機器を開発する必要が出てきた。そこで、マウスやキーボード、タッチパネルによる入力が困難な児童のために、タッチセンサーなどを用いた入力機器を開発をした。そして、平成25年度は、通常のパソコン入力機器を利用することが困難であり、音声によるコミュニケーションにも障害がある肢体不自由児を対象にパソコン機器を用いた教育支援をに取り組み始めた。対象となる児童は、肢体に不自由はあっても、知的な学力がある程度あり、学習意欲が高い。そこで、我々は、学習者の理解度に合わせて、算数(四則演算)、国語(平仮名、カタカナ、漢字)、英語(単語、文法)を系統的に学ぶことができるCGや音声を用いた学習教材を開発した。また、授業の最後に、その日の学習内容の理解度を確認することを目的に、算数、国語、英語のドリル型教材ソフトウエアも開発した。学習過程における全ての成績(正誤判定)結果が記録されているので、単元内容の理解度、定着度の確認だけでなく、生徒が学習した内容、時間の記録にもなる。 平成25年9月から5か月にわたり、久留米市立特別支援学校において、開発した教材ソフトウエアを用いた教育支援を行った。小田研究室の13人の学生でローテーションを組み、5か月の間に、特別支援学校から指定のあった27回、特別支援学校へ赴き、延べ80人の学生が教育支援を行うことができ、定期的な支援体制を整えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、研究対象児童を重複障害児3人に増やし、児童に合わせた教材ソフトウエアの開発、入力機器の開発を継続的に行う。平成26年4月より、勤務先が久留米工業大学から羽衣国際大学に変わったが、本研究を継続できるように、研究代表者が週に一度、久留米工業大学に行き、研究協力者との打ち合わせを実施し、平成25年度と同様、久留米市立特別支援学校における教育支援も週に一度、継続的に実施していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年4月1日より、研究代表者が久留米工業大学から羽衣国際大学(大阪府堺市)に移籍することになった。新しい職場である羽衣国際大学において、支障なく研究を継続するために有効な機器を揃えることを考慮し、平成25年度は、年内に必要となる最小限の機器だけを購入し、26年度使用額として残すことにした。また、平成26年度も久留米市立特別支援学校での教育支援を継続するためには、久留米工業大学において研究協力者である学生と打ち合わせをしたり、久留米市立特別支援学校を定期的に訪問する必要がある。そこで、神戸(現住所)から久留米(久留米特別支援学校、久留米工業大学)までの交通費が新たに発生することがあらかじめ予測できていたため、平成25年度の研究費を26年度研究旅費用に充てるため残した。以上の結果、次年度使用額が生じることになった。 平成26年4月1日より大阪府の羽衣国際大学に勤務している。平成26年度も久留米市立特別支援学校での週1回の教育支援を継続するためには、神戸(現住所)から久留米(久留米特別支援学校)までの交通費が必要である。次年度使用額は、まず、神戸と久留米往復の交通費に使用する予定である。また、研究環境を整えるために必要な機器を順に、購入していく予定である。
|
Research Products
(3 results)