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2013 Fiscal Year Research-status Report

インド精神医学史における疾病概念の変遷および宗教的実践と精神療法の関連

Research Project

Project/Area Number 24501240
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

森口 眞衣  北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (80528240)

Keywordsインド医学 / 医学史 / 精神療法 / 疾病概念 / ネパール写本
Research Abstract

本年度において以下のような研究成果を得た。
(1)インド精神医学史における疾病概念の変遷:インド医学書においてパーソナリティ(人格)概念に関連する記載は解剖学・胎生学的に身体構造を扱うセクションに含まれる。パーソナリティが身体と関連し病的要因の区分と連動するという捉え方はギリシア医学に類似する位置づけだが、医学書によって内容に差があり、インドでは基準が一定でなかった可能性がある。またパーソナリティに関する記載は医学書以外にも社会的規範を述べるテキストにも含まれており、宗教との関連付けもうかがえた。インドにおけるパーソナリティ概念は多様であったと考えられる。
(2)宗教的実践と精神療法の関連1:元来は宗教的実践としての位置づけをもつ瞑想は現在ではストレスやリラクセーションなどの用語に近接した存在となり、特に精神医療との接点が目立つ。瞑想は禅やヨーガなどの形態で宗教に由来する修行法として20世紀にアジア世界から欧米に紹介される過程で精神医学や心理学の潮流へ様々に取り入れられた。西洋世界における瞑想の受容は現在も実践される精神療法の多くに影響をもたらしたものと考えられる。
(3)宗教的実践と精神療法の関連2:明治・大正期の日本で森田正馬と福来友吉は精神療法・教育心理の領域における著名な研究者である。両者とも研究出発点を催眠研究においたが、その後福来は超能力や宗教の研究に関心を深め、森田は神経質という精神病理学的事象の発見と森田療法の確立に向かう。当時の催眠は興隆と衰退の波を展開しており、両者の研究の方向性もその影響を受けたと考えられる。
(4)写本研究を用いたインド医学書の構成についての成果:インド医学書『スシュルタサンヒター』のネパール写本を用いて現行刊本における章記載の配置を検討・訂正し、本来の配置は臨床的視点に基づいていた可能性を指摘した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度における現在までの成果は本研究の目的に対し、以下の2点から当初の計画を大幅に修正することなく次年度の研究に取り組むことが可能であると判断した。
(1)インド精神医学史における疾病概念の変遷:パーソナリティ概念の記載を通してギリシア医学の体液学説とドーシャ説の比較考察に着手し、相違点・共通点をもとに医学領域としての検討を進めている。
(2)宗教的実践と精神療法との関連:宗教的実践としての「瞑想」と、現代の精神療法の中で実践されている「瞑想的療法」の比較に着手し、歴史的視点による変遷をもとに両者の関係性を考察している。
また、以下の2点は新たに当初の計画で想定していなかった関連研究として浮上したものであり、部分的には計画以上の進展があった。
(3)精神医学研究と宗教との関係:明治・大正期の日本における著名な二名の精神医学研究者が共に催眠現象という宗教と近接した領域の研究に取り組んでいた経緯を調査し、精神医学研究と宗教研究の関連性について考察を開始した。
(4)インド古典医学書のネパール写本を用いた構成に関する検討に着手し、精神医学のみの領域にとどまらないインド医学史研究としての将来的な発展につながる成果のひとつを提示した。

Strategy for Future Research Activity

本研究の計画に基づく推進策は以下の通りである。
(1)インド精神医学の領域に属すると考えられる疾病概念について、現代精神医学の前提となる西洋医学での枠組みに対する比較考察をさらに多くの対象で展開する。
(2)瞑想という宗教・精神療法に架橋する実践を中心に、人間の心の癒しに取り組む領域において宗教的なものが必要とされる現象の背景を考察する。
また、新たに研究計画から発展した関連研究に対する推進策は以下の通りである。
(3)日本の精神医学研究が宗教に関連した実践に対してどのような視点をもち、対象として扱ってきたのかを歴史的に調査する。それによって上記(2)との関連づけをはかる。
(4)ネパール写本を用いたインド古典医学書の文献的調査を進め、資料根拠としての精度向上を行う。それによって(1)と関連づける形でインド精神医学のインド医学全体における位置づけを検討し、また精神医学以外の領域で同様に現代医学との比較考察が可能となる領域の調査を進める。

  • Research Products

    (6 results)

All 2014 Other

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (4 results)

  • [Journal Article] The Clinical Viewpoint in the Structure of the Susrutasamhita2014

    • Author(s)
      Mai Moriguchi
    • Journal Title

      Journal of Indian and Buddhist Studies (Indogaku Buykkyogaku Kenkyu)

      Volume: Vol.62 No.3 Pages: 1094-1100

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 森田正馬・福来友吉と催眠2014

    • Author(s)
      大宮司信・森口眞衣
    • Journal Title

      北翔大学障害福祉システム学部研究紀要

      Volume: 第14号 Pages: 23-31

  • [Presentation] 『スシュルタサンヒター』における病理学的側面について

    • Author(s)
      森口眞衣
    • Organizer
      日本印度学仏教学会第64回学術大会
    • Place of Presentation
      島根県民会館(松江市)
  • [Presentation] インド医学における「パーソナリティ(人格)」概念の枠組みについて

    • Author(s)
      森口眞衣・大宮司信
    • Organizer
      日本精神病理・精神療法学会第35回大会
    • Place of Presentation
      京都府民総合交流プラザ・京都テルサ(京都市)
  • [Presentation] 「瞑想」と精神療法

    • Author(s)
      森口眞衣・大宮司信
    • Organizer
      第17回日本精神医学史学会
    • Place of Presentation
      東京慈恵会医科大学(東京都)
  • [Presentation] 森田正馬・福来友吉と催眠

    • Author(s)
      大宮司信・森口眞衣
    • Organizer
      第17回日本精神医学史学会
    • Place of Presentation
      東京慈恵会医科大学(東京都)

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Published: 2015-05-28  

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