2013 Fiscal Year Research-status Report
放射線影響に関する調査研究体制についての科学史的研究
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24501243
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
柿原 泰 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (60345402)
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Keywords | 科学史 / 放射線被曝 / 放射線影響 / 健康調査 / 原爆調査 / 倫理 / リスク論 / 疫学 |
Research Abstract |
本研究は、60 年間以上にわたり現在に至るまで続けられている原爆被爆者の調査を始めとした、放射線影響調査に関する科学史的研究であり、これまでの放射線影響をめぐる調査研究は、どのような体制で行なわれてきたのか、それらは何のため、誰のために行われたのか、その結果はいかに活用されたのか、などについて解明することを目的としている。本年度は、原爆の影響に関する初動調査以降の体制形成期、特に占領終了後の1950年代について調査研究を進めた。調査のための「固定人口集団」の設定という課題をはじめとした、調査体制の立て直し、強化を図るフランシス委員会報告(1955年)に注目した。 また、現在進行中の福島の事態をフォローしながら歴史的知見と結び付けていくべく、福島原発事故を受けて始められた福島県「県民健康管理調査」や、関連することとして、チェルノブイリ以降の放射線リスク研究などについて、引き続き調べを進めた。県民健康管理調査については、毎日新聞の日野行介『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』(岩波新書)をはじめとして、情報公開請求によって公開された情報によって、検討委員会の「準備会」を含めた議論の経緯など、あらたにわかってきたこともあり、注目される。チェルノブイリ以降の放射線リスク研究については、IARC(国際がん研究機関)でのARCH(チェルノブイリ健康研究アジェンダ)報告書に注目し、後述の研究会にて内容を検討しながら翻訳し、公表を始めている。 なお、これまでと同様に、本研究を進めるにあたって、市民科学研究室の低線量被曝研究会メンバーの研究協力を得て、研究会をほぼ月1回のペースで開催し、研究会での議論を重ねながら研究を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、市民科学研究室の低線量被曝研究会メンバーの研究協力を得て、研究会をほぼ月1回のペースで開催し、研究会での議論を重ねながら、本研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
資料の調査・収集については、順調に進んでいるものの、いまだ不足しているので、次年度も進めていく。資料の収集にあたっては、大学間図書館ネットワークの相互貸借を利用することによって、かなり助かっている。次年度以降も大いに利用することによって、ますます研究を進展させる所存である。また研究成果の公表にも努めていく所存である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料調査にあたっては、ウェブ上から閲覧可能になったものや大学間相互貸借制度の利用によって、各地に出かけなくとも入手できるものが増えたこともあり、旅費の支出が抑えられたと考えられるが、本年度にも調査に行く予定であった広島・長崎に、諸般の事情で調査に行けなかった。 次年度には、資料の調査や研究成果の発表のために旅費を支出する予定である。
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