2012 Fiscal Year Research-status Report
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24501249
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
月澤 美代子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40311980)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 医療情報 / 医療啓蒙者 / 医療専門職 / 民衆 / 明治時代 |
Research Abstract |
本研究の目的は、明治初期日本における医療情報の伝達・普及の状況を「形成過程にある医療専門職集団」と「民衆」、さらには、この間を媒介した「医療啓蒙者」のそれぞれの層に目配りしながら同時代史観点から歴史的に跡付け直すことにある。 「形成過程にある医療専門職集団」に対する医療情報の伝達と普及の検討に関しては、コレラ、皮下注射器を具体的な研究対象として分析と研究を行い、明治初期日本における、薬剤の経口投与を困難にするアジアコレラの流行と、明治10年の西南戦争における臨時病院における臨床実践が、皮下注射法という新しい医療技術に関する情報の日本国内への普及に大きな意味をもったことを明らかにした。この研究成果は、一部を平成24年度の日本医史学会で口頭発表した上で論文にまとめ、日本醫史学雑誌に、「明治初期日本における医療情報の伝達―西南戦争・コレラと皮下注射法の普及―」として発表した。 「人体」に関する情報の「民衆」への啓蒙活動に関する検討に関しては、上田維暁(文齋)を中心に資料の整理と分析を行い、検討した一部を、平成24年度の教育史学会で、「明治初期日本における近代医学の受容と民衆の人体像―明治8~11年出版「人体問答」書の分析―」と題して口頭発表した。 また、本研究を進める上での基本的な背景をなす、明治初期日本への医療情報の発信元である19世紀イギリス、および、アメリカの医療に関わる政治・文化・思想状況の検討を進め、日本看護歴史学会におけるテーマ・セッション「ナイチンゲール『看護覚え書き』の「神の法則」の意味」において、「1850~70年代イギリスにおける広教主義と「神の法則」」と題して口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度研究実施計画のうち、2)「人体」に関する情報の「民衆」への啓蒙活動に関する検討、3)「形成過程にある医療専門職集団」に対する医療情報の伝達と普及の検討、に関しては、当初の計画以上に順調に伸展している。1)資料の収集と整理、に関しては、当初の計画から方針を多少変更した。また、研究の進展によって論文の構成の再検討を行ったために、英文論文の完成が当初の予定に比して若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、「2)「人体」に関する情報の「民衆」への啓蒙活動に関する検討」を中心に、5月に東京で開催される日本医史学会学術大会、および、7月にイギリス・マンチェスターで開催される24th International Congress of History of Science, Technology and Medicineでの発表を行い、方向性を確認しながら研究を進展させる。さらに、平成24年度に概要を纏めた研究に関して英文論文を完成させて関連学会誌に投稿する。これと平行して、本研究を進める上での基本的な背景をなす、明治初期日本への医療情報の発信元である19世紀イギリス、および、アメリカの医療情報に関する先行研究の検討をさらに進める。「1)資料の収集と整理」も、この検討成果に沿って当初の計画を修正しながら進めていく。平成26年度は、こうした具体的事例に関する研究に立脚して、明治初期日本における医療技術の移入・受容と一般民衆への情報の普及を多様な観点から分析して研究を纏めていくことを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度繰越金は、当初、予定していた、国際学会への参加費用の納入、ならびに、英文論文のネイティブ・チェックと投稿費用が平成25年度に繰り越されたことにより生じた。平成25年度予算のうち、外国旅費は、当初の計画通り、イギリス・マンチェスターでの国際学会への参加と関連資料の収集、国内旅費は仙台、松本、大阪への関連資料の収集に使用する。また、関連図書資料は、研究対象としている医療啓蒙者に関する一次資料、ならびに、研究テーマに関連する二次資料の収集を中心に行う。人件費・謝金は、平成24年度に引き続き、データの整理と打ち込み、および、英文論文のネイティブ・チェックに充てる予定である。
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Research Products
(6 results)