2012 Fiscal Year Research-status Report
理系専門課程における科学史の歴史研究に基づく教育カリキュラムの提言
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24501251
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中根 美知代 日本大学, 理工学部, 研究員 (30212088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植松 英穂 日本大学, 理工学部, 教授 (70184968)
溝口 元 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (80174051)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 物理学史 / 数学史 / 化学史 / 生物学史 / 地質学史 |
Research Abstract |
研究課題に即して、調査すべき対象・資料を特定できるようなデータの準備をした。『科学史研究』・『化学史研究』・『数学史研究』の目次で、電子化されていない部分を整備した。何種類かの雑誌と「物理学史通信」があり、どの部分も情報が電子化されていない物理学史関係については、全体像が見渡せる形で目次を電子化した。また、大学の年史として、どのようなものが編纂されているかを調査した。 それらの調査に基づいて、制度化以前に科学史にかかわり、この分野で研究成果を挙げた方々を数学・物理学・化学・生物学・地質学から選定し、インタビューした。その結果、旧制高校で学んだ語学・哲学や社会学系学問の基礎的な素養があったこと、戦後の知的なものへの渇望があったこと、科学への期待がある一方、戦時中の最新の科学技術兵器の使われ方から、科学の本質や、それを取り巻く社会情勢へと自然に関心が向かったことから、科学史への興味がはぐくまれたこと、それを学び、研究するのに必要な素養が旧制の教育課程では養われていたことが明らかになった。また、科学史研究者とは言い難いが、科学史に興味のある科学者の研究グループがあったこと、新制設立期の大阪大学理学部数学教室のように、「数学史」とは銘打たないが、通常の数学の授業を展開するにあたって原論文に直接あたるという形で歴史に親しむ雰囲気もあったことも示された。 以上のような積み上げの上が、1980年代の、個別科学史の学会活動を支えたと考えられる。また、この積み上げから、理系学生向け個別科学史の授業を置く着想も得られたと考えられるので、個別の大学での講義設置状況の調査にとりかかり、何件かの大学については、その実情を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理系学生向けの科学史の教育課程を考案するために、最初の2年間は、このことにかかわる分野の歴史的状況を押さえることに重点を置いた。当初計画した、『科学史研究』および個別科学史にかかわる雑誌類を検討するためのデータの整備の整備は、ほぼ順調に進んでいる。ただし、研究遂行の途中で、大学年史など、当初考えていなかった提案が出されたため、その分の遅れはある。 当初予定していた方々へのインタビューもほぼ予定通り進んだ。インタビューにより、検討するべき人物や調べるべき事柄が具体的になったが、それは、ほぼ予想していた規模であった。 理系学生向け授業については、個別の大学の状況から調査にとりかかる予定だったが、今年度整備した資料に基づき、より全国的な視点から体系的な調査が可能と判断し、そちらから取り掛かった。並行して、個別の調査も進めているが、この部分については、わずかながら遅れてはいる。 実施してみたうえで必要とされた仕事が出て、それに伴う遅れがでてきた。しかしその変更は小さなもの、という状態なので、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に完成できなかった研究遂行上の基礎データの整備をする。 また、昨年のインタビューで指摘された、制度される以前に科学史にかかわっていた人々についての調査を続ける。さらに、そのような人々がかかわった、主として個別科学史にかかわる著作を調査する。 前年度の調査の結果、日本学術会議の調査に関する資料が見つかり、1950年に理系専門科目として科学史の講義が設置されていた大学が明らかになった。研究計画提出時に挙げた大学のほかに、その調査で指摘されている東北大学・東京工業大学などの数校を加えて、大学ごとの調査を進めていく。1950年以降、設置大学が増えた可能性があるので、体系的な全国調査も進めていく。ただし、個別の調査結果がないと、全国調査で確認すべき情報が定まらなくなるので、両者を並行して進めていく計画である。そのうえで、上述した科学史の著作と照らし合わせ、どのような授業が行われていたかを推定する。 数学・物理系を植松・中根、化学・生物・地学系を溝口・矢島・工藤が分担する。 なお、中根は、海外での状況を確認するべく、トロント大学科学技術史研究所を訪問する計画である。ただし、状況によっては、調査地を変更する可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要とした物品の購入額が予想以上に少なかったため、剰余金が生じた。 これまで得られた成果から、名古屋大学をはじめとする、首都圏外の大学での調査を、応募時に予想していた以上の規模で行わなければならないと考えられるので、次年度の旅費として充当する予定である。
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Research Products
(1 results)