2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24501258
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
福間 浩司 同志社大学, 理工学部, 准教授 (80315291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯部 博志 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (80311869)
齋藤 武士 信州大学, 理学部, 准教授 (80402767)
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Keywords | 地球磁場強度 / テリエ法 / 考古遺物 / 火山岩 |
Research Abstract |
陶器などの考古遺物は焼成時の地球磁場を記録しており,その強度は焼成時の遺物の向きが不明である場合でも実験室での測定により得ることができる.考古遺物だけでなく火山岩などの試料からリファレンスとなる地球磁場強度の変動が求められていれば,焼成された時期が特定されていない考古遺物についても年代を求めることが可能になる. 昨年度および今年度は,まず伊豆大島および三宅島に過去500年間に噴出した火山岩の収集に赴き,溶岩やスコリアの様々な岩相から噴出年代が明確にわかっている数百個の試料を収集することができた.地球磁場強度を得るにはテリエ法と呼ばれるプロトコルに従い実験室で試料を段階的に加熱して測定する必要がある.この測定には1個の試料についてほぼ24時間と多大な時間を必要とするため,自動的に測定を行う装置を使用できるようにした.磁場をON/OFFした上で試料を加熱・冷却し,さらに測定も行うことができる全自動の測定装置を作動させるために全面的なソフトウェアの改訂を行った. 採取した数百個の全試料についてキュリー点及びヒステリシス特性の測定を行い,磁気的な特徴を多面的に数値データとして捉えることができた.溶岩の上下クリンカおよびスコリアと溶岩内部との間には磁気的な特徴に明瞭な違いがある.従来地球磁場強度を測定するために採取されていた溶岩内部の試料は複数の磁性鉱物を含み磁気的に不安定であり,むしろ上下クリンカおよびスコリアが地球磁場強度測定に適していることがわかった.さらに地球磁場強度測定への適否を自動測定装置を使ったテリエ法による測定をこれまで約半数の試料について終えた.上下クリンカおよびスコリアのほぼ全試料から期待される地球磁場強度が得られることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地球磁場強度のリファレンスとなる変動曲線を得るための試料の収集と測定のための自動化された装置のソフトウェア開発は初年度においてほぼ完全に達成することができた.今年度は2台目の自動装置もルーチン測定に使うことができるようになり.2台の装置を並行して使用し昼夜の別なくテリエ法による測定を進めている.一方,標準的な地球磁場強度測定法であるテリエ法に適した試料を選別するために,事前に磁気的性質の測定を行い,火山岩の岩相と磁気的性質の対応を明らかにすることができた.採取した試料の約半数についてテリエ法による測定を終えており,最近に噴出した試料については期待される地球磁場強度が上下クリンカやスコリアから得られることを確認することができた.また,過去500年間の地球磁場強度変動をリファレンスカーブを得る予定のうち,現在から遡って約200年間の試料の測定を終え,磁気的性質から期待されるように上下クリンカやスコリアから地球磁場強度のデータを得ることができた. データの信頼度を上げるためには他の装置との比較測定が重要であるが, 今年度はロシア科学アカデミーのボロック地球物理学研究所にある自動試料振動型測定装置を使って測定する機会を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度・今年度の火山岩の収集に引き続き,生産地での陶磁器片の収集として,磁器の代表的な生産地に赴き,窯跡などで得られた陶磁器の破片を採取する.また,補足の火山岩試料を得るため伊豆諸島に試料採取に赴く.これまで採取した試料と併せることにより,さらに密な時間間隔で採取されたデータを得ることが可能となる. 次年度以降に補足収集した陶磁器片および火山岩試料も含め,初年度・今年度と同様に岩石磁気測定とX線解析・電子顕微鏡観察を進め,磁性鉱物の組成・粒径とテリエ法における振舞いとの関係を明らかにして試料選別のプロトコルを確立する.岩石磁気測定によって選別された試料についてテリエ法による地球磁場強度データの蓄積を進め,過去500年間の日本における地球磁場強度の標準曲線を得る. 同志社大学歴史資料館に保管されている試料の中で,型式による編年などである程度の幅で年代が推定されている試料や,年代が全く未知である試料の地球磁場強度を測定して,地球磁場強度の標準曲線と対比して年代を求める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の途中において代表者の健康上の理由により試料の採取に赴くことができなくなったため,予定していた旅費を使用することができなかった.人件費・謝金として旅費に予定していた額の一部を使用したが,それにもかかわらず次年度使用額が生じてしまった. 代表者の健康状態も回復に向かっているので次年度は今年度に行うことができなかった試料採取を行う予定である.
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Research Products
(8 results)