2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24501258
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
福間 浩司 同志社大学, 理工学部, 准教授 (80315291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯部 博志 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (80311869)
齋藤 武士 信州大学, 理学部, 准教授 (80402767)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地球磁場強度 / テリエ法 / 考古遺物 / 火山岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
考古遺物は焼成時の地球磁場を記録しており,その強度を実験室での測定により得ることができる.考古遺物だけでなく火山岩などの試料からリファレンスとなる地球磁場強度の変動が求められば,考古遺物の焼成年代を求めることが可能になる. 一昨年度および昨年度は,伊豆大島および三宅島に過去500年間に噴出した火山岩の収集に赴き,溶岩やスコリアの様々な岩相から噴出年代が明確にわかっている数百個の試料を収集した.地球磁場強度を得るためのテリエ法には多大な時間を必要とする.磁場をON/OFFした上で試料を加熱・冷却し,さらに磁化測定も行うことができる全自動の測定装置を実用化するために全面的なソフトウェアの改訂を行った. 採取した数百個の全試料についてキュリー点及びヒステリシス特性の測定を行い,磁気的な特徴を多面的に数値データとして捉えることができた.その結果,上下クリンカおよびスコリアが地球磁場強度測定に適していることがわかった.地球磁場強度測定への適否を自動測定装置を使ったテリエ法によるテスト測定を行い,上下クリンカおよびスコリアから期待される地球磁場強度が得られることを確認した. 今年度は,これまで三宅島で採取した過去400年間に噴出した上下クリンカおよびスコリアを用いて,自動測定装置を用いてテリエ法による地球磁場強度測定を行った.三宅島で得られた過去の400年間の地球磁場強度は年代値が文献に基づいているため誤差がなく,地球磁場強度のためのテリエ法の成功率は100%に近かった.羅針盤データに基づく地球磁場モデル gufm1を援用することにより,三宅島の地球磁場強度から双極子モーメントの過去400年間の変動を求めることができ,1世紀で約5%のほぼ一定の割合で双極子モーメントは過去400年間ずっと減少を続けてきたことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度において地球磁場強度のリファレンスとなる変動曲線を得るための試料の収集と自動測定装置のソフトウェア開発はほぼ完全に達成することができた.第2年度は2台目の自動装置もルーチン測定に使うことができるようになり.2台の装置を並行して使用し昼夜の別なくテリエ法による測定を進めることができた.一方,地球磁場強度測定法であるテリエ法に適した試料を選別するために,事前に磁気的性質の測定を行い,火山岩の岩相と磁気的性質の対応を明らかにした.テリエ法によるテスト測定により,最近に噴出した試料については期待される地球磁場強度が上下クリンカやスコリアから得られることを確認できた. 最終年度において,過去400年間の地球磁場強度変動を三宅島という地理的に極めて限定された領域において密にデータを得ることができた.試料の噴出年代が文献によって誤差なく決定できるという利点があるため,極めて精度の高い地球磁場強度の日本付近においてのリファレンスカーブを得ることができた.この成果は第2年度までに判明した磁気的性質により分別し,上下クリンカやスコリアに集中してテリエ法による測定を行ったことが極めて高い成功率に結びついたことによる.自動測定装置により昼夜なく効率的に測定を進めることができたのも大きな要因であった. 三宅島で得られた地球磁場強度はグローバルに見れば一点でのスポット観測にすぎないが,グローバルな地球磁場モデルであるgufm1に基づき双極子モーメントの変動を求めることができた.長年の課題であった19世紀半ばに機器観測が始まって以降の双極子モーメントの一貫した減少はいつ始まったのかという問題にも答えを与えることができた.さらにgufm1を通して過去400年間について地球上の任意の地点・時間における地球磁場強度を与えることができるということは研究当初には期待していなかった成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において日本付近における極めて精度の高い地球磁場強度の標準曲線が得られたことは今後の研究に道を切り開くことができた.方位付けが行われていない陶磁器片などの考古遺物についても地球磁場強度の測定を行い今回得られた標準曲線と対比することによって精度の高い年代が得られる.今後は型式による編年などである程度の幅で年代が推定されている試料や,年代が全く未知である試料の地球磁場強度を測定して,地球磁場強度による年代推定が精度よく行えることを実証データに基づき示す研究を行う.さらに日本周辺で文献から年代が明らかになっている火山岩試料を収集し.三宅島で得られたデータと併せることにより,さらに密な時間間隔で標準曲線の確度を向上させる. 今回溶岩の上下クリンカおよびスコリアを用いれば地球磁場強度を求めるためのテリエ法が極めて高い成功率で行えることを実証できた.日本だけに限らず,地球上の様々な火山において上下クリンカおよびスコリアを収集して今回実用化できた自動測定装置による測定を進めれば,現存のグローバルな地球磁場モデルを精密にすることができまさに地球上の任意の地点・時間での地球磁場強度を得ることができるようになる.このモデルは考古遺物の年代測定という目的に留まらず,地球の核での流体運動や地球の磁気シールド効果による炭素・ベリリウムの核種生成や気候変動の研究にも大きな意義をもつ. 今後,地球磁場強度測定を進めていく上で,データの信頼度を向上させると同時に効率的に測定を進めて行くには更に測定装置の機能向上を進めていくことが必要である.昨年度に訪問してテスト測定を行ったロシア科学アカデミーボロック地球物理学研究所にある自動高温磁力計に倣い,より感度が高い新たな自動高温磁力計の開発を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
2012および2013年度に試料採取を行い,測定装置を稼働するソフトウェアを完成し,テリエ法による地球磁場強度の測定をほぼ予定通りに終えることができた.しかし,2013年度秋に腹部の手術を受け,術後しばらくの間は重いものをもてないため2013年度後半および2014年度は野外に試料採取に赴くことができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
明確な結論を得るために必要なデータを揃えるため,詰めの試料採取を行う.術後の経過を鑑みながら,次年度中に三宅島などに補足の試料採取に赴くことを考えている.未使用額はそのための旅費に充てる予定である.
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[Journal Article] Submarine record of volcanic island construction and collapse in the Lesser Antilles arc: First scientific drilling of submarine volcanic island landslides by IODP Expedition 3402015
Author(s)
Le Friant, A., Ishizuka, O., Boudon, G., Palmer, M.R., Talling, P.J., Villemant, B., Adachi, T., Aljahdali, M., Breitkreuz, C., Brunet, M., Caron, B., Coussens, M., Deplus, C., Endo, D., Feuillet, N., Fraas, A.J., Fujinawa, A., Hart, M.B., Hatfield, R.G., Hornbach, M., Jutzeler, M., etc.
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Journal Title
G-cubed
Volume: 16
Pages: 420-442
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Temperatures, thermal structure, and behavior of eruptions at Kilauea and Erta Ale volcanoes using a consumer digital camcorder2015
Author(s)
Gregory T. Carling, Jani Radebaugh, Takeshi Saito, Ralph D. Lorenz, Anne Dangerfield, David G. Tingey, Jeffrey D. Keith, John V. South, Rosaly M. Lopes and Serina Diniega
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Journal Title
GeoResJ
Volume: 5
Pages: 47-56
Peer Reviewed
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