2013 Fiscal Year Research-status Report
震災復興に向けた自然環境利用型博物館教育システムの構築
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24501270
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
朝日田 卓 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (00296427)
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Keywords | 東日本大震災 / 被災文化財 / 博物館教育 / 文化財修復 / 自然博物館 / 干潟再生 / 生物調査 / 教育普及活動 |
Research Abstract |
昨年度、波打ちぎわでの仔稚魚等の採集調査を行った結果を基に、プログラムへの組み込み法や、大潮の干潮時が午前にあたる春季から秋季に実施できるような試験運用法を策定したが、震災被害が大きかった陸前高田市においては、候補地の選定までは行い得なかった。今年度の実地調査によって、当該市における候補地を小友浦旧干拓地とすることが適切と判断し、調査項目を検討した。小友浦は干潟を埋め立てた干拓地であったが、ほとんど利用されないまま大震災の津波被害を受け、その多くが浸水域となったことから、市が干潟の再生を計画している場所である。干潟再生に関連付けた各種調査や観察、保全活動を学習プログラムとすることで、復興とその後の保全活用を強く意識できる学習につながるものと期待される。また、再生後の干潟およびその周辺環境を自然博物館として活用するための受け皿となる地域団体の構築も視野に入れた検討を行い、関係者と協議した。 これまでに作成したプログラムの試験運用は、本年度も川をフィールドにして被災小学校において行ったが、震災後3年目を迎えて児童の海への恐れもかなり解消し、海における試験運用も可能と判断された。このため安全確保の方策を立てて、次年度に試験出来るよう協力校と検討を行った。 被災文化財修復をプログラムに組み入れて学習素材として活用することについては、実際の作業を行って検討した結果、まず震災によって多くが失われた動植物や化石等の標本を再び作製することが適切と判断され、それに向けた用具等のキット化を被災博物館において行った。標本の作製は、児童生徒が興味を持ちやすいだけではなく、理科などの教科単元を含んでおり、また震災後休止している博物館の教育普及活動としても有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被災浅海域や被災河川での生態系調査は順調に進んでおり、学術的な成果が蓄積されると共に、調査項目のいくつかを組み入れた学習プログラムを作成した。次年度は、干潟への再生が計画されている陸前高田市の被災干拓地をフィールドに、調査を兼ねた試験運用を行う計画である。プログラムは学校教育に組み入れやすいように教科単元を含んでおり、また被災地の特性を考慮した安全方策も組み込んである。 大船渡市では8月に、協力小学校(被災校)における川での調査観察会を実施したが、海への恐れを抱く児童は昨年に比べて大きく減少し、次年度はより海に近い約100m下流の地点を実施の候補地とする予定である。 被災資料の安定化や修復作業には、学習プログラムに組み入れ困難なものも多いため、被災地文化財の活用については、被災を免れた自然環境を用いた活動を中心とすることとし、震災後途絶えている教育普及活動の再開にも繋がる、昆虫や化石等の採集や標本作製プログラムと器具類のキット化をおこなった。次年度は実際の運用を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、開発したプログラムを用いて被災した博物館教育システムの復興に取り組む。 陸前高田市では、初年度から行っている浅海域等の調査成果を利用して、被災干拓地(干潟再生予定地)で調査を兼ねたプログラムの試験運用を行う。また、研究終了後に博物館と共に地域の教育を支援できる団体の構築を目指した活動を行い、人材の発掘や育成を目指す。 大船渡市では、協力小学校における「川の楽校」を継続すると共に、得られた成果を基にした教材を自給できるシステムの構築を行い、学校教育に活用できる博物館教育普及プログラムとする。これらの成果は取りまとめて印刷物とし、情報の発信と学校教育での活用を図る。 また、被災地の状況は変化を続けていることから、本格化している博物館関連復興事業の状況を確認しながら、被災博物館資料の活用、埋蔵文化財発掘事業との連携などを検討すると共に、研究によって得られた情報を地方自治体等と共有できるシステムの構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた主な理由は、協力校において行った学習プログラムの試験運用にあたって、当初必要と判断した児童生徒の移動費が実際には発生しなかったためである。これは被災によって実施場所の変更を余儀なくされていたため、バスによる移動が必要と判断していたが、新たに学校近くに被災を免れた場所を見つけて予備調査を行った結果、実施可能と考えられたので、新たな場所での実施を行ったことによる。 次年度使用額は、陸前高田市における学習プログラムの試験運用地が決まったことを受けて計画した野外学習への参加者の移動費に用いる他、運用に必要な消耗品類の購入等にあてる計画である。
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Research Products
(2 results)