2012 Fiscal Year Research-status Report
博物館学史の方法論に関する研究-アメリカの博物館学思想受容過程における双方向性-
Project/Area Number |
24501272
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
財部 香枝 中部大学, 国際関係学部, 准教授 (00421256)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スミソニアン協会 / 博物館 / ジョセフ・ヘンリー |
Research Abstract |
本研究は、スミソニアン協会の博物館等、在米機関所蔵の未紹介資料(文献、標本)に基づき、アメリカの博物館や博物館学の受容過程を主題として探究するものである。受容研究を行う際、受容する側のみならず、受容をもたらす側の状況を正確に把握することが不可欠である。 平成24年度は、研究代表者の従来の研究の再検討を行った。それに関連して、原資料の確認のため、ワシントンDCのスミソニアン協会アーカイブスにて、現地調査を実施した。 1、スミソニアン協会の博物館管理者の日記:1858年にパテント・オフィスからスミソニアン協会へのコレクション移転に伴って移動したヴァーデン(Varden)の日記が、スミソニアン協会アーカイブスに所蔵されている。同アーカイブスにて、同日記を詳細に調査し、当時の博物館の状況および万延元年遣米使節団等に関する記述を明らかにした。 2、スミソニアン協会初代長官ジョセフ・ヘンリーの博物館学思想:スミソニアン協会アーカイブス・協会史部の資料を検討し、ヘンリーの博物館学的側面を検討した。知識の普及より増大を重視するヘンリーは、博物館には消極的だったとされるが、実際は、アイヌ等文化人類学的コレクションの収集に積極的であった。また、議会向けのパフォーマンスの色彩が指摘されるものの、公衆に対する講演を数多く企画した。 3、博物館学史の方法論、とりわけオーラル・ヒストリーの活用について、同アーカイブスの協会史部研究者と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究実施計画」に沿って、研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、おおむね、交付申請書に記載した「研究実施計画」に沿って研究を行うことができた。そのため、平成25年度以降も申請時の計画に沿って研究を進める。 平成25年度は、フィラデルフィア万国博覧会に展示された日本の教育関連資料に関する調査を行う。日本の教育博物館設立を巡り、同博覧会の影響に関し博物館学界でなされてきた数々の先行研究を検討したうえで、下記の現地調査を行う。 1、フィラデルフィア万国博覧会教育コレクションの同定:申請者はすでに、1910年に合衆国教育局からスミソニアン協会に移管されたコレクションについて、スミソニアン協会アーカイブスのアクセッション・レコード(マイクロフィルム)を簡単に確認したことがある。それは、教育関連および自然史関連標本が混在しており、一部は国立自然史博物館に移管されたように見受けられた。そこで、まず、アーカイブスにてアクセッション・レコードの内容を詳細に確認するとともに、国立アメリカ歴史博物館にて日本の教育コレクションの撮影を行い、アクセッション・レコードとの照合を行う。 2、当時のアメリカ教育界の博物館学思想および教育博物館創設を巡る動き:合衆国教育局は、博覧会のわが国の教育コレクションを高く評価し、実際同コレクションを収集した。在米資料を検討し、フィラデルフィア万国博覧会当時のアメリカの教育界および博物館創設を巡る動きを整理・検討する。とりわけ、教育局長官ジョン・イートンの博物館学思想や、彼が日本のコレクションを評価したポイントに着目する。 3、博物館学史の方法論について、引き続き、同アーカイブスの協会史部研究者と意見交換を行う。 4、スミソニアン協会の広報部の歴史(とりわけサイエンス・コミュニケーションの歴史)に着目する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、おおむね、交付申請書に記載した「研究実施計画」に沿って研究を行うことができた。しかしながら、消耗品の値引きにより、若干の残額が生じた。そのため、24年度に予定していた消耗品の購入は、平成25年度研究計画の予算と合わせて前半に予定することとした。
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