2012 Fiscal Year Research-status Report
2011年東北地方太平洋沖地震による内陸の地盤災害と土地履歴に関する研究
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24501285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
阿子島 功 福島大学, 人間発達文化学類, 特任教授 (00035338)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地盤災害 / 自然災害 / 防災 / 地震 / 土砂災害 / 国土保全 |
Research Abstract |
2011年3月11日東北地方太平洋沖地震によって発災した東北地方内陸地域の地盤災害は、いまだその全体像が明らかでない。その実態を調査記録する。宮城県仙台市や白石市の今回の発災箇所と1978年宮城県沖地震による発災箇所の比較ができた箇所では、同一箇所での地変の再現が確認された。これは1978年宮城県沖地震による発災箇所の記録がなければできないことであった。したがって今回の発災箇所の記録を残すことは重要である。 造成地の前地形(谷埋め造成地は”人工地すべり”と呼べる)や1978年地震被害などの「土地履歴」と今回地震被害との対比を検証する意義はもうひとつある。国土交通省が平成22年度から事業化した、防災図の基礎となる土地分類「土地履歴調査」の策定にあたって、地理学分野から多くの研究者が参加し、研究代表者はそのとりまとめに参加したが、その試作図として公開したのは今回の地震被災地「仙台地区」であった。その検証と改良を目標としている。 調査結果の一部は、中・日・韓国合同地理学会(2012.8長春)、東北地理学会(2012.10秋田)、日本地理学会(2013.3熊谷)で報告した。造成前の地形図・空中写真を重ねて立体視表現する方法を示し、現地観察では福島市南部の丘陵地で造成された団地で道路の微起伏やごくわずかなカーブによっても谷埋め部分であることを確認できた。台地面の造成地の地すべり・崩壊の例として福島第一原発敷地内の送電塔の崩壊をもたらした造成地崖端の崩壊箇所の前地形(谷埋め造成地)、台地面上の須賀川市市街の振動被害箇所と約400年前の城館の環濠を埋めた箇所(微地形観察と古地図との現地対比による)が一致する部分があるなどを指摘できた。低地の地盤液状化は低地の利用の拡大に伴って、宮城県では1978年宮城県地震から、福島県では今回地震で顕在化したが、微地形や土地履歴との対応を検討できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
〔現地調査および資料調査〕:福島・宮城・岩手の各県で現地調査を行う計画であったが、福島県中通り・いわき地区、宮城県南部の調査を集中的に行うことができた。資料収集・解析を継続中である。地盤災害は平成24年度になって復旧工事が相当すすんでおり、その現況をふくめて調査している。 〔成果の公表〕:調査結果の一部は、平成24年度内に、中・日・韓国合同地理学会(2012.8長春)、東北地理学会(2012.10秋田)、日本地理学会(2013.3熊谷)で報告した。発災後これまでに報告したのは、地理学分野の学会で口頭発表を6報(2011.5,2011.10東北地理学会および立正地理学会,上記の2012.8,2012.10,2013.3)、速報として2報を日本地理学会災害対応ホームページ(2011.5)と福島大学ホームページ(2011.9)に公開し、普及誌(古今書院月刊地理2011.12)、福島大学年研究報告(2012.3)で印刷公表した。 並行して平成23年度から地域で災害考古学や防災図にかかわる公開講座・講演会を複数回開設してきた。平成24年度は防災公開講座(須賀川市3回)に参加した。地域広報誌(2013.3福島とうほう地域総合研、「福島の進路」,No.367)などの機会を利用して一般の関心に答えられるように努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
福島・宮城・岩手各県において復旧工事を含めて現地調査を継続し、丘陵地造成地の前地形判読については、研究代表者が提案した簡易な手法(造成前の地形図・空中写真を重ねて立体視表現する方法)の実用的精度をさらに検証する。 台地の造成地については、約400年前に中世城館の濠を埋めた特異な事例である須賀川市市街地について、絵地図との対比ができたが、もともとの絵図の精度には限界があることから、さらに現地比定の精度を高めるために表層地質調査資料の収集や地下レーダー調査を検討する。 低地については、震源から遠い会津盆地の低地(うち扇状地の造成地)で地盤液状化が生じていることから、さらに検討を行う。 2013.8に国際地理学会が京都で開催され、その後の現地検討に福島県いわき地区が計画されていることから、津波被害にあわせて誘発活断層(2011.4.11発現)や斜面災害などを検討事項として準備中であり、また2013.9に日本地理学会が福島を会場として開催される。 本研究の成果の発信方法として、これまでに地理学分野の学会で口頭発表を6報(2011.5,2011.10に2学会,2012.8,2012.10,2013.3)、速報として日本地理学会災害対応ホームページ(2011.5)と福島大学ホームページ(2011.9)の2報、普及誌(古今書院月刊地理2011.12)、福島大学年研究報告(2012.3)で公表した。 並行して平成23年度から地域で災害考古学や防災図にかかわる公開講座・講演会を複数開設してきた。平成24年度は防災公開講座(須賀川市3回)に参加し、地域広報誌(2013.3 福島とうほう地域総合研発行”福島の進路”,NO.367)に執筆した。今後も一般への広報に努めるつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅 費:福島・宮城・岩手各県において復旧工事を含めて現地調査を継続する調査旅費 および学会報告に参加する旅費として使用します(おおむね30%)。 物品費:現地調査記録、デジタル地図作成、データ保存などに関わる機材購入に使用します(おおむね30%)。 謝 金:資料を整理の補助作業に使用します(おおむね15%)。 その他:地図類(ファイル含む)、空中写真、資料購入などに使用します(おおむね15%)。
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Research Products
(4 results)