2013 Fiscal Year Research-status Report
2011年東北地方太平洋沖地震による内陸の地盤災害と土地履歴に関する研究
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24501285
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
阿子島 功 山形大学, 人文学部, 名誉教授 (00035338)
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Keywords | 地盤災害 / 自然災害 / 防災 / 地震 / 土砂災害 / 国土保全 / 土地履歴 |
Research Abstract |
2011年3月11日東北地方太平洋沖地震によって発災した東北地方内陸地域の地盤災害の実態を調査記録する。宮城県仙台市や白石市の今回の発災箇所と1978年宮城県沖地震による発災箇所との比較ができた箇所では、同一箇所での地変の再現が確認されたが、これは1978年宮城県沖地震による発災箇所の詳細な記録がなければできないことであった。したがって、今回の発災箇所の記録を残すことは重要である。 調査対象は主に福島県・宮城県の内陸側の丘陵地・台地・低地である。2011年3月11日東北地方太平洋沖地震の発災箇所は、1978年宮城県沖地震の発災箇所に比べて広範にわたったが、それは2011年地震が1978年地震に比べて地震規模が各段に大きかっただけでなく、約40年間に、より脆弱な地盤条件の土地への土地利用が拡大したためと考えられる。この40年間に災害記憶が風化していると考えられる事象もあった。 造成地の前地形(谷埋め造成地は”人工地すべり地”と呼べる)などの「土地履歴」や1978年地震被害今回地震被害との対比を検証する意義はもうひとつある。国土交通省が平成22年度から事業化した、防災図の基礎となる土地分類「土地履歴調査」の策定にあたって、地理学分野から多くの研究者が参加し、研究代表者はそのとりまとめに参加したが、その試作図として公開したのは今回の地震被災地「仙台地区」であった。その検証と改良を目標としている。 また、「土地履歴調査」は、正確な測量調査が行われた明治・大正期の旧版地形図や昭和中期からの空中写真を主たる資料として行われているが、絵図類や歴史史料も用いて広い意味の土地履歴と今回被害との関係を検討する。それは微地形や埋没地形の編年にもかかわる観点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
〔現地調査および資料調査〕:平成25年度は、福島県中通り(白河市、須賀川市など)、宮城県南部(浜通りを含む)の調査を行うことができた。平成25年度に復旧工事が相当すすんで災害痕跡が修復されており、その現況をふくめて調査している。災害痕跡を追跡できるのはここ数年であろう。丘陵地では亜炭廃坑の陥没の問題なども認識した。台地面上の須賀川市市街の振動被害箇所と約400年前の城館の環濠を埋めた箇所が一致する部分があること(微地形観察と古地図との現地対比による)などを指摘できた(日本地理学会2013.3)が、ひきつづき地下水位との関係などを井戸遺構を含めて検討中である。 低地の地盤液状化や振動被害は低地の利用の拡大に伴って、宮城県では1978年宮城県沖地震から、福島県では今回地震で顕在化した。微地形や土地履歴との対応は必ずしも一様ではないことがわかった。台地をおおう扇状地末端は低地に等しい評価が必要である。 〔成果の公表〕:平成25年度内に、国際地理学会議が2013.8に京都で開催されその巡検コースのひとつとして福島県いわき地区の津波被害および「2011.4.11福島県浜通り地震(3.11太平洋沖地震による誘発地震とされる)にともなう内陸活断層による地盤災害」を準備し参加者を公募したが不成立であった。2013.9に福島大学を会場として日本地理学会秋季大会が行われ、その巡検コースのひとつとして、「2011.4.11福島県浜通り地震にともなう内陸活断層と地盤災害」の現地討論を実施できた(日本地理学会発表要旨集84,pp.149-150)。 平成25年度の検討結果を「地盤災害と土地履歴」の第4報として東北地理学会(2014.5仙台)にて発表予定である。山形県埋蔵文化財センターの一般公開講演会(2013.12)で「山形県の災害考古学」として、地盤災害と広い意味の土地履歴について紹介した。
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Strategy for Future Research Activity |
〔今後の研究の推進方策等〕 福島・宮城・岩手各県において復旧工事を含めて現地調査を継続し、丘陵地造成地の前地形判読については、研究代表者が2011年に提案した簡易な手法(造成前の地形図と現況の空中写真を重ねて立体視表現する方法)の実用的精度をさらに検証する。 福島県では須賀川市で亜炭廃坑の陥没による建物被害を確認しており、福島県中通りではこの2例のみであるが宮城県では100ケ所を超える亜炭廃坑の陥没による被害が生じたとされているので、新たな調査項目として宮城県内を中心に調査を行う。この災害種は、乱掘や過去の記録の不備によって生じた側面があり、地点推定や予測に関して著しい困難が予想され、土地履歴調査でも残された課題となる。 台地上面は一般に地盤良好と評価されるが、約400年前に中世城館の濠を埋めた箇所で発災した特異な事例である須賀川市市街地について絵地図との対比ができた。これは新しい観点であったが、絵図の精度にはもともとの限界があることから、予定されている発掘調査の機会に立ち会うなど現地比定の精度を高め,地質資料の収集などを継続する。 低地についても、埋没旧河道が一様に軟弱とは限らないことが認識されたので、よりこまかな検討を行う。これらは「土地履歴調査」の仕様・説明にかかわっている。
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Research Products
(1 results)