2014 Fiscal Year Annual Research Report
中部山岳地域の亜高山帯における地表環境特性が森林動態に与える影響の解明
Project/Area Number |
24501288
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐々木 明彦 信州大学, 先鋭領域融合研究群山岳科学研究所, 研究員 (20608848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山縣 耕太郎 上越教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (80239855)
鈴木 啓助 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (60145662)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 亜高山帯 / 針葉樹林 / 物質移動 / 森林動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,これまで議論されることがほとんど無かった亜高山帯斜面における地表環境特性を定量的に捉え,同時に亜高山帯針葉樹林の動態を明らかにして,亜高山帯における地表環境特性と森林動態の関係を明確にするものである。そのために北アルプス常念岳,乗鞍岳,妙高火打山,蔵王火山の亜高山帯を対象として,H24年度とH25年度に①森林構造の記載,②微地形区分,③地表物質移動量の観測,④林内気象の観測を実施した。H26年度は以上の観測を継続しつつ,積雪グライド量の観測を実施し,調査を完了した。それらの結果の概要は以下の通りである。 地表面で働く作用は地表流による表土の侵食・運搬と表土の凍結融解によるソイルクリープであることが明らかとなった。前者については,侵食・堆積の量は最大でも3 mm厚ほどで,消雪以降の期間毎の物質移動量は期間毎の日降水量の多少との関係が良好であった。したがって,地表流による物質移動は降雨強度の強さに規制されるといえるが,それがどの程度なのかは明らかになっていない。データ回収の頻度を多くするなどの工夫が必要である。後者については,1cm深での凍結融解サイクルが秋季に数回認められるが,10cm深では土層の凍結は認められなかった。土層に埋設したマーカーが地表から1cm深程度まで変形していることから,凍結融解作用によるソイルクリープが発生していると考えられる。 森林動態はオオシラビソの実生・稚樹の生存状況から把握した。当年性実生は,地表流が発生する夏季~秋季に数をほとんど減らすことなく生存するが,冬季~春季を越して消雪後にはそれらはほとんど残らないことが明らかとなった。したがって,深さ数mmに影響を与える地表流による物質移動は,実生の生長阻害にはほとんど効いていないといえる。一方,秋季に発生する土層の凍結融解作用は,実生の根切れを生じさせている可能性がある。
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