2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24501290
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
山田 周二 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80295469)
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Keywords | 防災教育 / 自然災害 / 水害 / 地形 / 土地利用 / 地理教育 |
Research Abstract |
本研究は,土地利用や身近な事象の分布と水害の危険性との関係をあきらかにすることを目的として,土地利用の分析と,身近な事象を対象とした野外調査を行った. 土地利用については,奈良盆地の中央部に位置する9市町を対象として,過去に発生した河川の氾濫による浸水範囲と地形,土地利用に関する調査を行った.その結果,1920年代の市街地は,相対的に浸水の危険性が低い地域に分布していたことがあきらかになった.自然堤防や台地がみられる市町においては,市街地はそれらの地形に立地していた.また,町内のほとんどが氾濫平野からなる地域においては,河川の合流点や屈曲部といった氾濫の危険性が高い地域の周辺を避けて立地していた.これらのことから,対象地域においては,1920年代の土地利用から,水害に対する相対的な安全性を知ることが可能であると考えられる. 野外調査については,奈良県斑鳩町において,伝統的な建物,高層建物,店舗,公共サービスに関わる事象(消火栓,ごみ集積所等)を対象として,それらの分布を調査した.その結果,伝統的な建物について,蔵は,1920年代に集落があったすべての地域に分布しており,その後に市街化した地域にはほとんど見られなかった.また,町家は,その多くが,1920年代に集落があった地域の中で,旧街道に沿った地域にのみ分布しており,その後に市街化した地域には,全くみられなかった.一方,2000年代のすべての市街地には,消火栓やごみ集積所が分布しており,市街地外には全くみられなかった.また,高層建物や商店は,2000年代の市街地の中でも,駅や主要道路といった交通の要所にそのほとんどのものが分布していた.以上の結果から,蔵や町家は,1920年代の集落や交通の状況を知るための手掛かりになり,また,消火栓や商店の分布との対比によって,それが一層明瞭になると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定していた,奈良盆地の浸水範囲外における土地利用の分析と身近な事象を対象とした野外調査について,おおむね順調に進めることができた.浸水範囲外の土地利用については,地理情報システムを利用することによって,多くのデータを効率的に分析することができた.野外調査については,モバイルGISソフトウェアをインストールしたタブレット型携帯端末を利用することによって,データ収集を迅速に行うことができ,また,データの分析を効率的に行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は,次の二点を重点的に進める.一つは,野外調査の拡充である.これまでに,奈良県の斑鳩町において行った野外調査から,一定の成果は得られたものの,多くの地域に応用するためには,さらなる調査が必要である.斑鳩町の調査において,かつての街道沿いの集落と農村集落の事例が得られたため,今後は,かつて城下町であった地域や,近年の再開発が著しい地域においても,身近な事象を対象とした野外調査を行う.二つ目は,研究成果の公表である.これまでにも,得られた成果の研究発表や論文投稿を行っているが,今後はそれらに加えて,広く教材として利用できるように,インターネットを利用して,成果を公表する.これまでに得られた成果,およびこれから得られるであろう成果の多くは地図としてまとめることができ,また,防災教材としても地図という形で利用することが最も効果的と考えられるため,インターネットを利用して地図を公開する.現在,地図を扱うソフトウェアの中で,最も利用が容易であり,広く普及しているGoogle Earthで利用可能なファイル形式で地図を作成して,それらのファイルをインターネットで公開する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果発表を予定していた学会が,日程の都合で参加できなくなったため,学会参加費用と考えていた額を,次年度に使用することにした. 成果発表のための学会への参加のための旅費として使用する.
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Research Products
(1 results)