2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24501299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
鳴海 邦匡 甲南大学, 文学部, 准教授 (00420414)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地図史 / アメリカ議会図書館 / 測量 / 近世 / 近代 / 海図 / 都市図 |
Research Abstract |
平成24年度の研究計画は、①盤針術の導入(近世測量術のはじまり)、②三角関数(近世測量術の近代化の萌芽)、③近世-近代の連続・非連続(近世測量術と近代のつながり)という3つのテーマに関して、資料調査と検討を行うことであった。このうち、主に作業を実施することができたのは、②と③に関するテーマについてであった。 ②のテーマを検討するため、主に予定した鳥取県立博物館と鳥取県立図書館、および鳥取市内において調査(資料、フィールド)を実施した。実施した調査日は、平成24年10月20日、11月23日、翌25年1月29~31日、3月20~21日となっている。幕末に鳥取城下で作成された実測の城下町絵図の作成技術を検討するため、関連する資料の調査を実施した。特に、作成に関わった人物が残した資料群を調査し、作成技術の検討を進めることができた。得られた成果については、平成25年度刊行予定の書籍に掲載する原稿として準備をしているところである。 ③のテーマを検討するため、予定したアメリカ議会図書館およびアメリカ国立公文書館において資料調査を実施した。調査を実施した期間は、平成24年4月1日~9月31日、翌25年3月3~13日までである。両館において、(A)近代以前に作成された日本関係の古地図資料、(B)近代に旧日本軍関係機関の作成した地図資料を主に調査した。(A)については、これまで基本的な調査が実施されてこなかった資料群であり、現在、調査データの整理を進めているところである。(B)については、主に明治初期に海軍の作成した東アジア地域における海図の調査を足掛かりとして、図書館に所蔵される同地域における各国の海図の調査を実施した。その成果の一部は、平成25年度に予定される学会(6月、8月)にて報告する予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記した主な研究目的は、近世日本の測量と地図の展開をみるために、近世の日本における実測図の展開と近代以降におけるそのつながりを検討することである。より具体的には、①近世における盤針術(磁石を用いた測量)の展開、②近世における三角法による測量(三角関数を活用した測量と製図)の展開、③近代測量にみる近世測量の影響の3つのテーマを設定している。 ①のテーマについては、平成24年度に明治大学図書館などでの調査を計画したが、実現できなかった。ただし、文献収集とその検討は進めており、その結果、当初推測した技術導入のプロセスとは異なる理解も得られるようになった。そのため、調査資料の対象について一部再検討することとなった。 ②については、平成24年度に鳥取の事例についての調査はほぼ終えることができ、その分析を残すのみである。また、今年度以降に予定している、古地図閲覧方法の提案についても、平成24年度から鳥取県立博物館などと協力しながら検討を進めており、平成25年度中に成果を公表する予定としている。 ③のテーマについては、旧日本軍の陸地測量部が利用した伊能図(アメリカ議会図書館所蔵)の調査を行った。また、アメリカでの資料調査の過程で、旧日本海軍の作成した海図とその東アジア海域における影響という新たな研究テーマを得ることとなった。特に後者は未開拓のテーマであり、平成25年度以降も引き続き調査を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方は、①近世における盤針術(磁石を用いた測量)の展開、②近世における三角法による測量(三角関数を活用した)の展開、③近代測量にみる近世測量の影響という3つのテーマ別に述べると次の通りである。 ①については、日本近世初期に作成された江戸実測図について検証(調査ずみ)するほか、そのほかの近世初期実測図についても事例調査を行いたい。日本における近世初期の測量技術のルーツを検討するため、16世紀頃までの西洋における測量技術書の調査を開始したいと考えている。そのほか、現場での測量技術の応用例をみるため、17世紀の畿内における河川・湾岸工事の際に作成された資料の分析(調査ずみ)を行いたい。 ②については、平成25年度も鳥取城下町絵図の事例について作業をすすめ、タブレットPCを活用した調査資料の公開を実現する予定となっている。また、三角法を活用した測量術を記す文献の調査を行い、その成果の一部を出版物に掲載する予定で作業を進める。 ③については、新たなテーマとなった旧日本海軍による明治前半期の海図の調査(アメリカ議会図書館、海上保安庁海洋情報部など)を進めたいと考えており、その成果の一部を平成25年8月の国際学会で報告する予定となっている。また、可能であれば近代初期の地籍測量についても調査(国立国会図書館など)を開始したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究費の使用については、①近世における盤針術(磁石を用いた測量)の展開、②近世における三角法による測量(三角関数を活用した)の展開、③近代測量にみる近世測量の影響という3つのテーマ別に述べると次の通りである。 ①については、資料調査にかかる費用として旅費と撮影費が必要になると予定している。また、関連する文献資料の購入費も必要となる。 ②については、現地調査のほか、資料の公開にかかる費用が必要となると考えられる。また、関連する文献資料の購入費も必要となる。 ③については、資料調査にかかる費用として旅費と撮影費が必要となる。また、収集した調査データの整理のため、アルバイト謝金も必要となる。関連する文献資料の購入費も必要となる。
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