2013 Fiscal Year Research-status Report
国有林史料を活用した実態的定量的分析による多様な森林景観形成過程の解明
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24501300
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
宮本 麻子 独立行政法人森林総合研究所, 森林管理研究領域, 主任研究員 (50353876)
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Keywords | 森林計画 / 地理情報システム / 森林景観 / 森林情報 / 森林利用 / 林相図 |
Research Abstract |
国有林史料を活用して森林景観形成過程を実態的定量的に明らかにするために、(1)国有林史料の収集およびデータベース化の継続、(2)森林景観の時系列変化の把握、(3)地域住民の森林利用の把握を行った。(1)については対象地域の林班沿革簿、森林計画図等を関東森林管理局への調査出張により収集し、データベース化した。(2)については2010年現在で天然広葉樹林面積が9割強を占める叶津地区を対象として、約60年にわたる森林景観を過去の林相図等を用いて復元した。現在101年生以上の天然広葉樹林とされている林分の中には、過去50年の間に択伐、皆伐、林種転換等の人為撹乱の履歴を持つ林分が含まれることが明らかになった。最新空中写真画像(2009年)を用いてこれら人為撹乱の履歴を持つ林分を確認したところ、古い撹乱履歴を写真判読により把握することは困難であったこと等から、時系列の林相図分析が林分の人為攪乱履歴を空間的に把握する手段として有効であると考えられた。また、叶津地区を含む旧只見事業区について1930年代以降の森林計画書を対象とした施業方式の分析から、初の森林計画編成時に全国画一的に導入された森林施業方式から対象地の自然的立地特性を反映した施業方式へと徐々に変更されてきたことが明らかになった。(3)については国有林内での地域住民の森林利用等については、多雪地のため積雪害等の要因から森林景観に直接改変を与えるような利用(伐採や植栽、林種転換を伴う利用)は僅かであり、山菜やキノコといった特用林産物の採取を中心と利用が主体であったことが明らかになった。これらの結果については関連学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)国有林史料のデータベース化については、紙媒体の史料をデジタル化して、順次データベース化が行われていること、(2)森林景観の時系列変化の把握については、具体的な対象地を選定し、複数年時の地図情報等に基づき時系列の森林景観をGIS上に復元できたこと、そこから各種定量的数値を算出するとともに、森林計画書等の史料から景観変化の直接要因である施業方法の変化が把握できていること、(3)についても地域の森林利用特性が明らかになったことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに実施した調査、分析から一部対象地では地域住民の国有林利用としては、森林景観に直接改変を与えるような利用(伐採や植栽、林種転換を伴う利用)がほとんど行われていなかったことが明らかになった。そのため、森林景観に変化を与えた要因の分析については、国有林の計画史料から得られる直接的な要因である管理手法の変化を中心とした分析を行うこととした。 また、最終年度であるH26年度は、国有林史料を活用した分析から得られる情報と従来の景観分析に一般的に用いられる情報(地図等)との比較を行い、国有林史料を景観史研究に用いる有用性について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
地域の森林利用の特性から、予定していた地域住民への聞き取り調査の一部が不要となったことから旅費の使用額が予定より抑えられた。また、一部のデータ入力・整備に予定していた雇用についても、入手データの媒体が想定と異なり、簡易にデジタル化できる仕様であったため不要となり抑えることができた。 最終年度に成果報告を予定していた国際学会関連の支出が、当初見込みよりもかかるため、その旅費等にあてる予定である。
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