2012 Fiscal Year Research-status Report
立山弥陀ヶ原湿原の土壌形成に対する黄砂の寄与とアジアの砂漠化の推移
Project/Area Number |
24501301
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 富山市科学博物館 |
Principal Investigator |
朴木 英治 富山市科学博物館, その他部局等, 学芸課長 (10373482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 幸一 富山県立大学, 工学部, 准教授 (70352789)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 黄砂 / 気候変動 |
Research Abstract |
1.立山有料道路沿いの標高650m~2450mの間の10カ所に設置したバルクサンプラーによって降水を採取し、標高1800m地点では人工芝を使用した代理表面サンプラーを併設して降水を採取し、標高およびサンプラーの種類による懸濁物の沈着量の違いを観測した。2012年の観測では1420m、1930m、2305mの観測点で懸濁物の降水中濃度、沈着量が他の観測点よりも多くなり、上空だけを通過する黄砂の存在を確認すると共に、一部の期間であるが沈着量を計算した。 2.液中微粒子計により、降水中に懸濁した粒子の個数濃度を粒径別に計測した。その結果、懸濁する粒子の個数濃度は粒径が大きくなるにつれて低下すること、アジア大陸起源の気団による降水では太平洋起源の気団と比べて粒子個数濃度が時には1桁多くなることがわかった。また、降水中の黄砂に関しては、粒径2μmの粒子よりも3μmの粒子の個数濃度が大きくなる特異な現象が一部で観測された。さらに、強い黄砂の場合、大粒子の個数濃度も増加することが分かった。この観測データが、黄砂の強度や気象状況と粒径別個数濃度との関係を検討するための基礎データとなる。 3.標高970mと1930m地点で大気中のエーロゾルの個数濃度を粒径別に計測した。このデータから上空だけを通過する黄砂の粒径別個数濃度に関する情報が得られた。 4.過去の黄砂発生源地域の気候変動を解析するための試料として、環境省および富山森林管理署の許可を得て、弥陀ヶ原湿原の標高1870m地点で長さ80cmの土壌柱状試料を採取した。泥炭層の長さは60cmあり、その下部にはおよそ7000年ほど前に飛来したアカホヤ火山灰を含む層の存在が期待された。この試料を3mm程度の厚さに切り分け、各層別に黄砂の粒径別個数濃度を計測して垂直変化を解析し、いくつかの層について炭素年代測定を行う予定である(平成25年度)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
降水や大気の観測、および、土壌試料の採取については予定どおり進行した。 進行がやや遅れている原因として、計測用の土壌粒子を懸濁させるために使用する水に含まれる粒子の除去方法の開発に時間がかかった。また、土壌粒子を懸濁させる際には、室内のエーロゾルによるコンタミが無視できない場合があることが分かり、実験室内の簡易クリーンルーム化と実験室内に設置するクリーンベンチの製作に手間取ったことによる。これらの作業はほぼ終了したため、今後は予定どおり進行できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.黄砂現象の強弱や気象状況によって飛来する黄砂粒子の粒径別個数濃度がどのように変化するのかを検討するため、観測事例の蓄積を目的に、立山における大気観測、降水観測、代理表面観測を今年度と同等のレベルで行う。 2.平成24年度に採取した弥陀ヶ原湿原の土壌柱状試料については、層構造を確認しながら厚さ3mm程度毎に切り分け、含まれる黄砂粒子の粒径別個数濃度を順次計測していく。計測は平成26年度前半までかかると推定される。 3.上記の切り分けた土壌試料のいくつかの層について、炭素年代測定を行う。 2.から分かる黄砂粒子の粒径別個数濃度の垂直変化、3.から分かるいくつかの層の形成年代、および、1.の観測事例による黄砂粒子の粒径別の粒子個数濃度と気象要素などとの関係から過去の黄砂発生源地域の気候変動を推定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、観測を継続するための消耗品費や気象観測用のデータロガーなどの若干の備品が必要になるが、なるべく最小限としたい。ここで捻出した費用で、予定している炭素年代測定の試料数を1試料でも増やしたい(分析費は5~6万円/1試料)。 5月に千葉県で開催される日本地球惑星科学連合2013年大会でこれまでの研究成果(主に降水観測の結果)を発表する予定で(エントリー済み)、さらに出張が可能ならば、9月に新潟県で開催される大気環境科学会でも研究発表を行いたい。このため、旅費および参加登録費の執行を行う。さらに、発表した内容を整理し論文として投稿したい。
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