2013 Fiscal Year Research-status Report
癌悪性化におけるVasohibin―2の機能解明と新規治療法への応用
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24501309
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 康弘 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60332277)
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Keywords | Vasohibin / 上皮間葉転換 / 癌悪性化 / miRNA / 癌幹細胞 / 血管新生 / 炎症性サイトカイン / 転移 |
Research Abstract |
マイクロアレイによる解析の結果、ヒト乳がん細胞株MCF7にVasohibin-2 (VASH2)を強制発現することによって、LCAT、PLA2G1B1、MOGAT1等のmRNAの発現に加え、miR-4267、miR-210、miR-4710等のmiRNAの発現が2倍以上変化することを見出した。癌細胞にVASH2-Flagを遺伝子導入し免疫染色法にて細胞内の局在について確認したところ、VASH2はミトコンドリアに局在すること、また、VASH2のフラグメント蛋白を発現するベクターを用いた解析から124番目から260番目の領域がミトコンドリア局在に重要であることを確認した。精製VASH2蛋白と各種脂質成分との結合を脂質アレイにて解析したところ、VASH2蛋白がミトコンドリア内膜に局在するカルジオリピンに結合することを見出した。マウス皮下に卵巣癌細胞株を移植するモデルにおいて、VASH2 siRNAを投与することによって癌の発育と血管新生が抑制されることが確認された。胃癌発症モデルGanマウスとVASH2ノックアウトマウスの交配を行い、VASH2を欠損するGanマウスを作出したところ、VASH2欠損によって胃腫瘍部の発育が抑制される傾向があった。同時に、遺伝子発現解析の結果から、VASH2欠損するGanマウスの腫瘍組織ではIl11、Cd44、Ereg、Areg、Tek、End1、Klf5等の炎症性サイトカイン、癌幹細胞、上皮細胞増殖因子、血管新生等に関わる遺伝子群の発現が低下し、Per3、Dbp、Hlf、Tef等の時計遺伝子の発現が高くなることが確認された。以上の結果から、VASH2は癌細胞のミトコンドリアに局在すること、腫瘍組織においては癌増殖・血管新生・悪性化に関与する遺伝子やmiRNAの発現に影響を与えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた実験を遂行し、in vitroの解析では、VASH2高発現は脂質代謝・シグナルに関係する遺伝子と幾つかのmiRNAの発現に影響を与えること、癌細胞内ではVASH2がミトコンドリアに局在し、カルジオリピンに特異的に結合することを新たに見出すことができた。腫瘍移植モデル・胃癌発症モデルにおいては、VASH2ノックアウトもしくはsiRNAによるノックダウンによって、腫瘍の成長を抑制する効果があることを確認することができた。その作用機序の一因として、胃癌発症モデルでは炎症性サイトカイン、癌幹細胞、上皮細胞増殖因子、血管新生等の癌悪性化に関わる遺伝子群の発現と幾つかの時計遺伝子の発現がVASH2の欠損によって変化することを新たに見出した。以上の結果は、本研究の目的達成のための重要な成果であり、現在まで順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)種々の癌細胞におけるVASH2のミトコンドリア局在とその生理的意義について調べるとともに、癌細胞の遊走や浸潤に対する影響について解析を進める。具体的には、VASH2のフラグメント蛋白や一部のアミノ酸を欠いた欠損蛋白を発現するプラスミドベクターを癌細胞に導入し、癌悪性化に関わる遺伝子群の発現変化やミトコンドリア機能(エネルギー変換、アポトーシス、カルシウム貯蔵等)に影響があるかどうか調べる。2)VASH2の発現によりmRNAレベルで変動が見られた遺伝子に関して、動物モデルの腫瘍組織切片を用いて免疫染色を行い、蛋白レベルでの変化と癌悪性化の関係について解析する。変動するmiRNAについても引き続き解析を行う。3)ヒトVASH2 mRNA 3'UTR中のmiR-200b標的領域を同定するとともに、他のmiRNAによるノックダウン効果について継続して調べる。4)VASH2高発現あるいはノックダウンした癌細胞株、VASH2の中和抗体、siRNA、ドミナントネガティブ変異体を移植モデルあるは胃癌発症モデルに用いることによって、腫瘍の成長、転移頻度、癌細胞のEMT誘導、癌細胞の浸潤、腫瘍内部の血管新生・リンパ管新生、マクロファージの動員などに対して影響があるかどうか継続して調べていく。
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