2013 Fiscal Year Research-status Report
ProhibitinおよびHint2による低酸素下の細胞死の制御機構の解析
Project/Area Number |
24501312
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 清敏 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任助教 (50401386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 俊一郎 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (00260480)
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Keywords | PHB / 低酸素 / 細胞死 |
Research Abstract |
研究代表者らは低酸素条件下の細胞死の制御機構を明らかにするため、低酸素で発現が変動するタンパク質を網羅的に探索した。その結果、ミトコンドリア内膜タンパク質Prohibitin (PHB) が低酸素刺激により減少することを見出した。さらに、PHBが細胞生存因子として機能することを明らかにした。加えて、PHBがミトコンドリアタンパク質Hint2と結合すること、Hint2過剰発現細胞株は抗癌剤の感受性が高いことを見出した。これらの知見より、研究代表者らは細胞生存因子PHBと細胞死促進因子Hint2のバランスが低酸素条件下の細胞死を制御しているという仮説を立てている。本研究では、検証し、この細胞死制御機構の破綻と癌細胞の低酸素耐性の因果関係を明らかにすることを目的としている。 これらの研究目的を達成するため、正常酸素濃度条件下と低酸素条件下におけるPHBおよびHint2の発現量と細胞内局在を明らかにするための予備実験を行った。具体的には、内在性のタンパク質を検出するために、抗PHB抗体と抗Hint2抗体を用いて検出のための条件検討を行った。さらに、蛍光顕微鏡観察のためにPHB-GFPとHint2-mCherry発現ベクターを構築し、ともにミトコンドリアに局在することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PHB-GFPとHint2-mCherry発現ベクターを構築し、培養細胞において両者がミトコンドリアに局在することを確認できた。また、内在性のPHBとHint2を検出するための条件を決定できた。さらに、正常酸素濃度条件下と低酸素条件下におけるPHBとHint2の発現量に関する予備的なデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍組織における癌幹細胞の周囲の微小環境(ニッチ)は低酸素状態であり、様々な低酸素応答が癌の悪性化と関連していることが明らかになってきている。そこで、PHBの安定化とHint2の減少が癌細胞の低酸素耐性の原因であるのかを検証する。 まず、正常酸素濃度条件下と低酸素条件下の癌細胞におけるPHBおよびHint2の発現量をウエスタンブロッティング法により調べる。次に、低酸素条件下でもPHBが減少しなかった癌細胞を用いて、PHBをノックダウンした場合に低酸素による細胞死が増加するのかを調べる。同様にHint2を強制発現した場合に低酸素による細胞死が増加するのかを調べる。さらに、内在性のPHBとHint2の結合を拮抗阻害するようなPHBまたはHint2のdeletion mutantの発現ベクターを数種類作製し、これらを強制発現させて同様の実験を行う。両分子の結合を阻害するタンパク質断片の領域を詳細に特定することで、創薬につながる情報を得ることができると考えている。 以上の解析により、PHBおよびHint2による低酸素条件下における癌細胞の細胞死の制御機構を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、前年度に研究費の前倒しにより購入した試薬類を使用して研究を遂行したため、試薬を新たに購入する必要がなく次年度使用額が生じた。 現在遂行している以下の解析を継続して、PHBの減少により遊離したHint2による細胞死誘導機構を明らかにする。 まず、正常酸素濃度下と低酸素下の癌細胞におけるPHBおよびHint2の発現量をウエスタンブロッティング法により比較する。さらに、PHBをノックダウンした癌細胞またはHint2強制発現癌細胞の低酸素感受性をトリパンブルー法および細胞検出器Cytellにより測定する。 これらの研究計画の遂行のために、細胞培養のための培地・血清・抗体・蛍光試薬を購入する。以上の解析により、PHBとHint2の量比による細胞の生死の制御機構が明らかになると期待できる。
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