2012 Fiscal Year Research-status Report
炎症による上皮細胞分化制御の二面性と腫瘍形成機構への関与
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24501314
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石川 智夫 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (70322162)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | がん / 炎症 / マウスモデル |
Research Abstract |
本年度は、胃がんモデルマウスのマイクロアレイ解析からこれまでに得られた”炎症によって発現が変化する未分化性に関連した遺伝子”の中で腫瘍原性に関与するものを、siRNAとソフトアガーコロニー形成を用いた腫瘍原性に対するスクリーニングにより同定した。また、Cox-2/PGE2経路活性化により構築された炎症性微小環境の中で、TNFalphaの重要な役割が明らかとなったので、TNFalpha依存的に胃腫瘍形成において発現変化が見られる遺伝子群についても、同様のスクリーニングを行った。その結果、Noxo1とGna14を炎症性微小環境に依存した発現を示す腫瘍形成促進因子の候補として同定した。 炎症によって引き起こされるこれらの遺伝子発現の上昇が間質細胞ではなく腫瘍上皮細胞で起こっている事は、組織より酵素処理によって分離した上皮細胞を用いた解析、さらにレーザーマイクロダイセクションにより確認され、これらの遺伝子が炎症により腫瘍そのもので発現する促進因子である事がわかった。また、これらの遺伝子の発現は、ヘリコバクターを感染させた胃粘膜で上昇している事、PGE2レセプターのひとつであるEP4に対する阻害剤により炎症が抑制された胃では減少している事から、炎症との密接な関連が示された。一方、単離した上皮細胞を用いた分化の実験より、これらの遺伝子の発現が未分化状態で高く、分化と共に減少する事がわかり、未分化性との関連も示唆された。 さらに、腫瘍原性に対する影響を調べるために、低酸素条件下で培養した胃がん細胞のスフェア形成における役割をsiRNAを用いて調べたところ、Noxo1, Gna14それぞれを阻害した場合にスフェア形成が抑制された。 これらの結果から、我々はNoxo1とGna14は炎症によって誘導される胃がん発生促進に働く重要な因子であると考え、さらにその機能と役割の解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、遺伝子発現解析により得られた炎症によって発現が変化する細胞未分化性に関与する遺伝子の中から、腫瘍形成・進展に機能するものを同定、解析し、その役割と炎症による腫瘍形成・進展機序を分化の制御という視点から明らかにする事を目的としている。その中で今年度は、マイクロアレイ解析から得られた遺伝子リストの中から、siRNAを用いた機能的スクリーニングにより候補遺伝子を2つの遺伝子に絞り込む事ができた。また、これらの遺伝子の上皮細胞での発現の炎症依存性、未分化性、腫瘍原性への関与についてを示すデータも得られた。 一方で、マウスの胃腫瘍ならびに正常細胞を継代培養し、遺伝子導入を行う系の確立を試みたが、解析に十分な効率で遺伝子導入を行には至っていない。そこで、SV40 T antigenを発現するトランスジェニックマウスを胃がんモデルマウスとの掛け合わせにより不死化した上皮細胞株の確立を行った。得られた細胞株についてては現在その性質を調べているところである。 以上の状況から、本年度の大きな目的であった候補遺伝子の絞り込みは達成する事ができ、次年度からの機能解析へとつなげる事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたNoxo1, Gna14の腫瘍形成における機能解析を行うために、誘導型のshRNA発現ベクターならびに遺伝子発現ベクターを構築し、ノックダウン、過剰発現をコントロールできる細胞株を樹立する。さらにこれらの細胞をルシフェレースレポーター遺伝子で標識し、in vivo に移植した細胞における腫瘍形成におけるこれら遺伝子の機能解析を行う。移植の方法としては、常法である皮下への移植以外に、胃粘膜下への同所移植をおこなう。また、炎症整備量環境によって誘導され、腫瘍原性に果たす役割が微小転移した腫瘍細胞の増殖二ksん夜する可能性も考え、脾臓、直腸への移植による転移における役割についても調べる。 一方で腫瘍原性と未分化状態における役割が、がん幹細胞としての性質にも関与している事を考え、スフェア形成における役割の解析をさらに進め、幹細胞マーカーの発現との関与についてもFACSを用いて調べる。 Noxo1はNADPH oxidase organizerをコードし、活性酸素を生成する酵素複合体の因子として働く事が知られている。この観点から、Noxo1による活性酸素レベルの変化とその胃がんにおける役割を、胃がんモデルマウスとNADPH oxidase阻害剤を用いた実験より調べる。また、in vitroにおいて、腫瘍原性とNoxo1, 活性酸素の関連について調べる。 また、これら遺伝子のin vivoでの機能を解析するために、コンディショナルノックアウトマウスの作出のためのベクター構築も始める。 これらの実験より、Noxo1, Gna14の腫瘍形成における役割をマウスのin vivo実験を中心に明らかとし、ヒトにおける胃がんの予防、治療への適用の可能性を探っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Ishikawa, T., Oshima, H., Yoshida, G.J., Naoi, K., Ju, X., Maeda, Y., Naka, K., Yamada, Y., Minamoto, Y., Mukaida, N., Saya, S. and Oshima, M.2013
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