2014 Fiscal Year Annual Research Report
散発性小脳髄芽腫発生モデルの構築とがん微小環境の作用
Project/Area Number |
24501324
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
柳沼 克幸 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 研究員 (40182307)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | Medulloblastoma / Patched1 / 腫瘍モデルマウス / 腫瘍微小環境 / CXCR3 signaling / microglia |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん抑制遺伝子であるPatched1(Ptc1)に焦点を絞り、その遺伝子量が微小環境に作用し腫瘍の進展に影響を及ぼす現象に注目して、その分子機構の解明を試みた。 昨年度までに、Tamoxifen処理によってPtc1変異を導入した小脳細胞を注入する方法を利用して腫瘍進展のモデルマウス実験系を構築したことで、Ptc1アレルに変異のない野生型マウスと、変異型Ptc1をもつヘテロ接合体マウスの2種類を用いて、異なる微小環境下における小脳腫瘍の進展を解析した。野生型マウスでは、小脳組織内での腫瘍増殖は観察されず、野生型微小環境下では強い炎症反応で増殖阻害が起きた。一方、Ptc1ヘテロ接合体マウスでは、小脳組織内での増殖が高い確率で観察され、Ptc1ヘテロ接合性が腫瘍の増殖を維持する微小環境をもたらすことが示された。この差異を明らかにする目的で、マイクロアレイによる遺伝子発現の比較解析をしたところ、Ptc1ヘテロ接合体の小脳組織で免疫応答に関与するCXCL9の発現が亢進しており、また、発生した髄芽腫組織内では、同様のCXCL10が発現していることが判明したことから、これらをリガンドとするCXCR3リセプターのシグナル経路の活性化が、免疫系のmicroglia細胞を介する形で腫瘍の進展に役割を果たしている可能性が示唆された。さらに、これを支持するデータとして、モデルマウスを用いたCXCR3リセプターの特異的阻害剤の投与実験で、移植された腫瘍の増大が抑制される結果が得られた。現時点では、Patched1遺伝子とCXCR3リセプター遺伝子の機能的関連性を示す、他からの報告はないが、今回の研究で、Patched1遺伝子の、Shhシグナル系因子としてだけでない、がん抑制遺伝子としての新規の機能解明に至る端緒を開いた。
|
Research Products
(1 results)