2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノ化デキストラン・マグネタイトを用いた食道癌に対する誘導温熱免疫療法の開発
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24501328
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
阿久津 泰典 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00375677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 裕 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50263174)
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Keywords | 免疫療法 / 温熱療法 / 食道癌 |
Research Abstract |
申請者はこれまで食道癌細胞株を用いた動物実験において放射線照射によるヒートショックプロテイン(HSP)の発現増強と、それによる免疫反応の増強に成功した。今回、より汎用性の高い温熱療法を用いることでより効果的にHSP発現を増強させ、さらに強力な免疫療法の開発を引き続い行っている。特に本研究で独創的と考えている温熱療法における発熱量増加と抗腫瘍効果をもつ微小磁性体デキストラン・マグネタイト(DM)を併用する方法であるが、DMをリポソームに封入しナノ粒子化し、ナノ粒子のEPR効果によってDMを腫瘍に特異的に集積させることが確認できた。 (1) 誘導温熱療法併用樹状細胞腫瘍内局注療法の開発 マウス担癌マウスモデルを用いて、樹状細胞腫瘍内局注による免疫療法治療単独による抗腫瘍効果の評価と、温熱療法単独における上乗せ効果およびLipo-DMによる誘導温熱療法による相乗効果の評価を行った。マウスの樹状細胞の腫瘍内局注は、温熱による樹状細胞のダメージを避けるため、すべての温熱療法の終了後、day7,8,9の連続3日間、1x106個/日とした。その結果、温熱療法を併用したマウスにおいて、樹状細胞による抗腫瘍効果が増強されることを確認した。 (2) 抗腫瘍効果の増強のメカニズムの証明 上記の温熱療法による免疫療法の賦活効果、すなわち抗腫瘍効果増強の理論的裏付けとして、マウス扁平上皮癌細胞株SCCVIIおよび、ヒト食道癌細胞株T.TnとTE2を用いて抗腫瘍効果を増強するメカニズムの分子生物学的評価を行った。まずAbscopal Effectの中心的役割であるgp96(GRP94)の発現が誘導温熱療法によってどのように変化するかを凍結切片での蛍光染色、パラフィンブロック薄切切片での免疫染色にて確認したところ、温熱療法にておいて発現の増強がみられた。同様にin vitroにおいてもmRNAレベル(リアルタイムPCR)タンパクレベル(ウェスタンブロット)で評価したが、同じく発現の増強がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本件研究の研究実施計画として、 平成24年度の研究実施計画:(1)Lipo-DMの作成とEPR効果の確認、(2)Lipo-DMによる誘導温熱療法の増強効果についての検討、についてはほぼ予定通りの研究を行い、当初想定した結果が得られた。この結果については学術集会にて口演を行った後、英文論文を作成し現在投稿中である。 また、平成25年度の研究実施計画:(3)誘導温熱療法併用樹状細胞腫瘍内局注療法の検討、(4)抗腫瘍効果の増強のメカニズムを科学的に証明する、についても、平成24年度同様順調に研究が進んでおり、これについても英文論文を作成し現在投稿中である。 平成26年度は、(5)TDLN(tumor drainage lymph nodes)中のCTL分画(フローサイトメトリー)、IFN-γ分泌能(ELISA、ELISPOTアッセイ)、Th1/Th2バランスなどの免疫学的評価、(6)成果発表、を行う予定であるが、現在上記(5)について解析を進めており、初年度より極めて順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究実施計画(最終年)、上述の通り、TDLN(tumor drainage lymph nodes)中のCTL分画(フローサイトメトリー)、IFN-γ分泌能(ELISA、ELISPOT アッセイ)、Th1/Th2バランスなどの免疫学的評価もあわせて行う。「免疫療法」を論ずるにあたって避けては通れない免疫逃避機構が本研究で考案した新規免疫治療でどのように変化するかもあわせて評価する。おもな免疫逃避機構関連物質(IL-6,IL-10,VEGF,TGF-,PD-L1,SOCS,MHC-ClassI)の発現を評価するとともに、抑制性T細胞(Treg)の増減についてもFoxP3の免疫染色、フローサイトメトリーにて定量する。これらの免疫逃避機構を解明することで、さらなる免疫療法の新しい増強法開発への足掛かりを作り、次への研究へとつなげて行く。 特に免疫抑制分子の制御は今後の免疫療法のキーとなる部分であるため、現在、PD-1, PD-L1, PD-L2などの抑制性分子およびそのリガンドの発現と食道癌症例の発現状況、病期、予後との関連性を検討している。 また、最終年度の締めくくりとして、前述の論文2報とともに、全体の仕上げとして国際学会への発表と論文公表を予定している。
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Research Products
(1 results)