2013 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍組織標本からの腫瘍抗原ペプチドの定量解析とがん免疫療法バイオマーカーへの応用
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24501334
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
本間 定 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50192323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小井戸 薫雄 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (70266617)
岩本 武夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90568891)
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Keywords | がんワクチン / 質量解析 / 腫瘍抗原 / 腫瘍組織標本 |
Research Abstract |
腫瘍抗原に対する特異的T細胞免疫反応を誘導して抗腫瘍効果を得るがんワクチン療法においては、腫瘍細胞における特定腫瘍抗原の発現が必須と考えられる。現在まで腫瘍組織における腫瘍抗原の発現は免疫組織化学的手法により行われてきた。しかし、用いる腫瘍抗原に対する抗体の種類によりその結果は一定せず混乱を招いている。たとえば、代表的な腫瘍抗原Wilms’ Tumor 1 (WT1)のmRNAを発現し、WT1特異的T細胞受容体遺伝子を導入したCD8+T細胞に感受性を有するヒト膵がん細胞株を免疫不全マウス皮下に移植して形成させた腫瘍組織は免疫組織化学においてWT1陰性の結果を示す。この原因として一般に使用可能な抗WT1抗体を使用した際、WT1の細胞内局在や他の蛋白との立体関係などにより免疫組織化学的にWT1を検出できない場合があるという限界を示している。一方、近年の質量解析の急速な発展は抗体を使用せずに細胞内、組織内の特定分子の同定を可能にした。特に腫瘍組織内にT細胞が直接認識する主要組織適合抗原クラスI分子に結合して提示される抗原性ペプチドが実存するかは極めて重要な問題である。本研究では細胞傷害性T細胞に認識される各種腫瘍抗原の抗原性ペプチドの腫瘍組織内の発現を質量解析技術をもちいて直接的に証明する試みである。ハイスループットな検出技術を確立することにより、悪性腫瘍組織から各種の既知の腫瘍抗原ペプチドを同定し、この知見をもって各悪性腫瘍症例に最も適応のあるがんワクチンの選定が可能となると予想される。また、多数の腫瘍抗原の発現を効率よく解析することにより、特定腫瘍抗原の発現による特徴的な病態形成や予後予測などにも有益な知見が得られることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
われわれは以前、WT1mRNAを発現しWT1特異的TCR遺伝子導入CD8+T細胞により傷害されるヒト膵がん細胞MIA Paca2を免疫不全マウスに移植して形成させた腫瘍組織にHLA-A24拘束性WT1抗原性ペプチドが存在することをLC/MS/MSを用いた質量解析法により証明し報告した(Takahara A et al. Cancer Immunol Immunother, 2013)。この解析においては腫瘍組織の新鮮凍結標本を用いたことによりWT1抗原性ペプチドの検出に成功したが、多くの臨床サンプルはホルマリン固定標本であり、このような試料からの腫瘍抗原ペプチドの検出の可否が臨床応用のためには重要である。上記のMIA Paca2移植腫瘍組織のホルマリン固定標本をレーザーマイクロダイセクション法を用いて腫瘍部分と間質部分に分けてそれぞれ採取し、LC/MS/MSを用いて繰り返しWT1抗原性ペプチドの検出を試みたが、ホルマリン固定標本からのWT1抗原性ペプチドの検出には至らなかった。このことは抗原性ペプチドがホルマリン処理により変性、または他の成分と強固な結合を示したためと考えられた。そこで、新たに導入されたTOF massシステムを用いてWT1抗原性ペプチドの腫瘍組織内の検出を試みた。MIA Paca2移植腫瘍の凍結切片から真空下でレーザー照射により放出されるイオンピークを検出し、WT1抗原性ペプチドと同一の質量を有するイオンピークを探索した。すると、目的のWT1抗原性ペプチドと全く同一の質量を有する成分の検出が可能であった。顕微massによるWT1ペプチドの腫瘍組織内局在の解析では、広く腫瘍組織内に存在するが、部位による発現量の相違、不均一性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
TOF massを用いた質量解析により、免疫組織化学では検出の困難な腫瘍抗原WT1の抗原性ペプチドと同一の質量を有する成分をヒト膵がん移植腫瘍組織内から検出することに成功した。この成分が真にWT1蛋白由来の抗原性ペプチドであることの実証はMS/MS解析によるアミノ酸配列の決定を要するが、そのためにはより確実なイオンピークの同定が必須であり、本年度はその解析を重点的に施行する。また、腫瘍のホルマリン固定標本においてもTOF massを用いた解析が可能であるかを、同上組織を用いて検討を行う。 上記方法が確立されたら、倫理委員会の承認を得て外科手術で摘出したヒト膵がん組織からWT1抗原性ペプチドの検出・定量を試みる予定である。われわれは既にHLA-A24拘束性WT1抗原性ペプチドはLC/MS測定系において定量可能であることを示した(Takahara A, Cancer Immunol Immunother,2013)。このことを利用して、膵癌症例のWT1抗原性ペプチドの定量値と臨床的特徴の関連を検討する予定であり、WT1抗原性ペプチドの新たな膵がんの予後予見マーカーとしての可能性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たなTOF mass装置の導入に若干の時間を要したため、その間、研究に空白時間が有ったため。 TOF mass関連の消耗品などの購入が中心となる予定である。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Augmentation of antitumor immunity by fusions of ethanol-treated tumor cells and dendritic cells stimulated via dual TLRs through TGF-β1 blockade and IL-12p70 production2013
Author(s)
Koido S, Homma S, Okamoto M, Namiki Y, Takakura K, Takahara A, Odahara S, Tsukinaga S, Yukawa T, Mitobe J, Matsudaira H, Nagatsuma K, Kajihara M, Uchiyama K, Arihiro S, Imazu H, Arakawa H, Kan S, Hayashi K, Komita H, Kamata Y, Ito M, Hara E, Ohkusa T, Gong J, Tajiri H
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Journal Title
PLoS One
Volume: 24;8(5)
Pages: e63498
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Immunochemoradiotherapy for patients with oral squamous cell carcinoma: augmentation of OK-432-induced helper T cell 1 response by 5-FU and X-ray irradiation2013
Author(s)
Tano T, Okamoto M, Kan S, Bando T, Goda H, Nakashiro K, Shimodaira S, Koido S, Homma S, Fujita T, Sato M, Yamashita N, Hamakawa H, Kawakami Y
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Journal Title
Neoplasia
Volume: 15
Pages: 805-814
Peer Reviewed
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[Journal Article] Wilms tumor gene (WT1) peptide-based cancer vaccine combined with gemcitabine for patients with advanced pancreatic cancer2013
Author(s)
Nishida S, Koido S, Takeda Y, Homma S, Komita H, Takahara A, Morita S, Ito T, Morimoto S, Hara K, Tsuboi A, Oka Y, Yanagisawa S, Toyama Y, Ikegami M, Kitagawa T, Eguchi H, Wada H, Nagano H, Nakata J, Nakae Y, Hosen N, Oji Y, Tanaka T, Kawase I, Kumanogoh A, Sakamoto J, Doki Y, Mori M, Ohkusa T, Tajiri H, Sugiyama H
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Journal Title
Journal of Immunotherapy
Volume: 37
Pages: 105-114
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Immunotherapy for colorectal cancer2013
Author(s)
Koido S, Ohkusa T, Homma S, Namiki Y, Takakura K, Saito K, Ito Z, Kobayashi H, Kajihara M, Uchiyama K, Arihiro S, Arakawa H, Okamoto M, Gong J, Tajiri H
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Journal Title
World Journal of Gastroenterology
Volume: 19
Pages: 8531-8542
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 進行膵癌に対するWT1ペプチドワクチンとゲムシタビンによる集学的治療法の選択基準2013
Author(s)
小井戸 薫雄, 西田 純幸, 本間 定, 込田 英夫, 高原 映崇, 高倉 一樹, 内山 幹, 今津 博雄, 荒川 廣志, 大草 敏史, 田尻 久雄
Organizer
第55回日本消化器病学会大会
Place of Presentation
東京
Year and Date
20131009-20131012
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