2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24501336
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Disaeses |
Principal Investigator |
井上 徳光 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), 研究所, 部長 (80252708)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | dichloroacetate / 腫瘍随伴マクロファージ / アルギナーゼ / 乳酸 / IL-23 / IL-17 |
Research Abstract |
我々は、がん細胞におけるエネルギー代謝の変調 (Warburg効果) により、がん細胞から多量にがん微小環境に分泌される乳酸が、炎症誘導に関わるIL-23/IL-17炎症経路を活性化する事、T細胞の増殖抑制に関わるアルギナーゼ1の発現を誘導する事を明らかにしてきた。今回、TCAサイクルを促進する事により、乳酸の産生を抑制することが知られているピルビン酸脱水素酵素リン酸化酵素 (PDK) の阻害剤dichloroacetate (DCA) の抗がん免疫に対する効果を検討した。IL-23産生増強が、乳酸イオンによって誘導されるのに対し、ARG1の発現誘導は、主に、酸性化によってもたらされたが、DCAは、マクロファージなどの骨髄系細胞に作用し、乳酸によるIL-23やアルギナーゼ1 (ARG1) の発現増強を共に抑制した。さらに、マクロファージを乳酸や酸性化処理すると、そのマクロファーは、T細胞の増殖活性を抑制する細胞に転換され、DCAは、その作用をキャンセルした。また、in vitroにおいても、DCAは、腫瘍内の乳酸濃度だけでなく、腫瘍細胞中のアルギナーゼ1の発現を抑制した。さらに、飲料水としてDCA投与されたEG7移植マウスの脾臓では、DCAによってIFNγ産生NK細胞やCD8陽性T細胞の割合が増加し、NK細胞依存的な腫瘍であるB16メラノーマ腫瘍、CD8陽性T細胞依存的なEG7サイモーマ腫瘍のどちらのモデルにおいても、TLR3リガンドであるPoly(I:C)による抗がん免疫治療の効果を増強した。それ故、DCAは、担がん状態にある個体の免疫状態を改善するドラッグとなりうると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画と比較して、Poly(I:C)との併用によってDCAの効果が、はっきりと観察され、早期に結果を出す事ができた。また、当初、期待していなかった乳酸や酸性化処理されたマクロファージが、T細胞の増殖を抑制し、DCAによって回復されるというきわめて興味深い結果が得られ、計画以上の進展を得る事ができた.その結果、DCAの効果に関する論文をInternational J. Cancerに掲載確定に結びつける事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
DCAは、確かに乳酸の効果を抑制し、免疫状態を改善したが、乳酸の作用は、DCAのターゲットであるPDKを活性化していない事も明らかとなった。それ故、乳酸イオンと酸性化が、以下に炎症経路と免疫抑制経路を活性化しているのかを明らかにできていない。これらの経路の解明は、より効果的な免疫状態改善効果を生む薬剤を開発できると考えられる。それ故、乳酸イオンと酸性化の両者のシグナル経路の解明に全力を費やしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の成果を、海外学会において、平成25年度に口頭発表する事が決定した為、平成24年度助成分を当てた。 DCAが、乳酸イオンと酸性化の両方の作用を抑制したが、それらは、それぞれ別々のシグナル経路を持っていると考えられるので、マイクロアレイ(受託研究費 440千円)によって、それぞれで誘導される遺伝子に差が生じるはずである。平成25年度は、それらを検索する事により、乳酸イオンと酸性化のシグナル経路を明らかにしたい。また、OT-IIマウスなどマウスの世話やジェノタイプを解析する技術補佐員の謝金として、300千円、学会発表の為の国内外旅費として、300千円、その他を消耗品として使用する予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Dichroloacetate improves immune dysfunction caused by tumor-secreted lactic acid and increases antitumor immunoreactivity2013
Author(s)
Ohashi, T., Akazawa, T., Aoki, M., Kuze, B., Mizuta, K., Ito, Y., Inoue, N.
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Journal Title
Int. J. Cancer
Volume: 133
Pages: 1107-1118
DOI
Peer Reviewed
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