2012 Fiscal Year Research-status Report
新規がん分子マーカーとしてのテロメア機能性RNAの解析
Project/Area Number |
24501344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
大屋敷 純子 東京医科大学, 医学部, 教授 (20191950)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | telomere RNA / 5-azacytidine |
Research Abstract |
近年、機能性RNAの一つとしてテロメアC鎖を鋳型としたテロメア配列を有するRNA(テロメアRNA)の存在が明らかになった。テロメアRNAはテロメアへテロクロマチン構造の変化、テロメラーゼの制御などと関係していることが知られているが、その詳細は不明である。そこで、本研究ではがん細胞におけるテロメアRNA定量系を確立し、新規分子マーカーとしての有用性を検証することを初年度の目標として研究を展開した。 まず、ヒト白血病細胞株を用いてテロメアRNAの検出系を確立し、画像解析システムで定量化した。これによりテロメアRNAの量的変化について各種抗がん剤投与後の変化を検証した。脱メチル化剤の代表である5ーアザシチジンを用いて、テロメアRNAの変化を解析したところ、5-アザシチジン感受性に感受性のある2株ではテロメアRNAの誘導に伴って、テロメラーゼの抑制、テロメアの短縮が認められたのに対して、5-アザシチジンに対して抵抗性を示すK562細胞では5-アザシチジン投与前後のテロメアRNA発現変化はなく、テロメアRNAの挙動は5-アザシチジン感受性と深く係っていることが判明した。 本研究の成果は第71回日本癌学会学術総会(2012年9月19-21日、札幌)で発表し、そのタイトルはDNA demethylation and up-regulation of telomere repeat-containing RNAs (TERRAs) in human leukemia cellsである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 方法論(検出系):初年度の目標であるテロメアRNAの同定に関しては、同定方法のクオリティの向上という面では80%程度の到達率であるが、画像処理の数値化については現在マニュアルで行っており、新たな課題として今後のテクニカルな改善が必要と考えられ、数値化については60%程度の達成率である。 (2) 方法論(定量系):定量系についてはPCRをベースにした系が構築できた。すなわち、細胞株を用いた解析ではその再現性が証明されているが、臨床サンプルを用いた解析ではデータのばらつきがみられ、改善の余地がある。従って達成度は80%程度と考えている。 (3) in vitro 実験系:5-azacytidineを用いた系では2つの薬剤耐性株の樹立に成功し、親株と比較する事によって、DNAメチル化とテロメアRNAによるテロメア制御の関係を解明するモデル実験系が構築できた(100%)。しかしながら、その作用機序に関しては様々な経路が考えられ、一つには古典的なRNA障害経路、他方、DNAメチル化、DNA障害経路などは想定されている。これらの経路の解明が望まれるが、現時点ではRNA経路において重要な役割をもつUCK2の発現低下が証明されいる一方、DNA障害に関してはDNA修復系も含めて更なる検討が必要と考えられる(到達率60%)。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 5-azacytidine耐性株の解析-1:初年度に樹立された5-azacytidine耐性株の解析を進め、テロメアRNAを介したテロメア制御機構の破綻、修飾のメカニズムを解明する。このことは臨床応用されている5-azacytidine(商品名ビダーザ)の薬剤耐性獲得例の分子病態を明らかにするのみならず、テロメアRNAが耐性獲得の早期マーカーとなることを示唆している。 (2) 5-azacytidine耐性株の解析-2:予備実験の結果、5-azacytidine耐性株では二本差DNA切断にかかわるDNA damage/repair pathwayの変化が認められたため、ATM/ATRを介したシグナル伝達経路の解明を行う。 (3) (1)(2)と平行して、テロメアRNAの発現と細胞周期の関係について解析を進め、臨床サンプルでの解析の基礎データを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究経費として計画している蛍光標識試薬類やPCR関連試薬として使用し、平成25年度の研究を遂行する。
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Research Products
(3 results)