2012 Fiscal Year Research-status Report
糖転移酵素LARGEを用いたジストログリカンの機能亢進による新規癌治療法の開発
Project/Area Number |
24501357
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
清水 輝夫 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (00107666)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 癌 / 糖鎖 |
Research Abstract |
ジストログリカン(DG)はジストロフィン糖蛋白複合体の構成蛋白質であり、基底膜のラミニンと結合する膜表在性蛋白質のα-ジストログリカン(α-DG)と、細胞内においてジストロフィンと結合する膜貫通性蛋白質のβ-ジストログリカン(β-DG)から成っている。DGは基底膜と細胞骨格を連携することで細胞膜を安定化し、細胞内外のシグナルトランスダクションに関与している。近年各種の癌においてα-DGの糖鎖修飾不全によりラミニン結合能をはじめとする機能低下が惹起されている事が見い出され注目を集めている。一方、糖転移酵素と考えられている蛋白質LARGEによりα-DGの糖鎖修飾が著明に亢進しその機能が増強する事が最近の研究から明らかとなった。本研究はこのLARGEの持つα-DGの機能亢進作用を利用した癌に対する新規治療法の開発を目指すものである。申請者らは予備実験においてHeLa細胞へLARGE遺伝子を安定発現させることでHeLa細胞の増殖性、浸潤性が大きく減弱することを見いだしている。初年度の平成24年度には同様の効果がin vivoの系でも得られるかどうかを検討するためにマウスを用いた実験を開始した。すなわち、申請者らが作出したLARGEトランスジェニックマウスと乳癌発症マウスとの交配を行いLARGEの過剰発現に伴うα-DGのラミニン結合能亢進によって、乳癌発症マウスにおける癌の発症、浸潤、転移などがどのように変化するかを検討している。現在まだ実験がが終了しつつある段階で、データの解析を急いでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、発癌モデルマウスへのLARGE遺伝子導入による治療実験は平成25年度に行い、平成24年度にはヌードマウスへのLARGE発現HeLa細胞の移植実験とLARGEトランスジェニックマウスへの癌細胞移植実験を行う予定であったが、スケジュールの都合上これらを逆にして開始した。平成24年年度開始した乳癌モデルマウスへのLARGE遺伝子導入による治療実験は順調に経過してゃいるもののまだ最終的な結論には至っていないため、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降、以下の実験計画を順次実施する。①ヌードマウスへのLARGE発現HeLa細胞の移植実験 LARGE安定発現HeLa細胞とコントロールのHeLa細胞ヌードマウスへ移植して、癌細胞の増殖、浸潤の程度や転移の有無を比較検討する。移植は皮下や腹腔内へ行い、尾静脈内注入による肺転移モデルも併用する。②LARGEトランスジェニックマウスへの癌細胞移植実験 LARGEトランスジェニックマウスと野生型マウスに癌細胞を移植して癌の増殖、浸潤、転移を比較観察する。癌細胞は野生型のHeLa細胞を使用する。同トランスジェニックマウスはα-DGのラミニン結合能の亢進により基底膜におけるラミニンの発現が増加しており癌浸潤に対して抵抗性に働くことが予想される。③発癌モデルマウスへのLARGE蛋白質の投与による治療実験 近年ライソゾーム酵素欠損病において酵素補充療法が実用化され大きな成果を挙げている。LARGEも糖鎖修飾に関わる酵素と考えられていることから同様のアプローチを試が可能であると考えられる。申請者らはLARGEを安定発現するHEK293細胞株をクローニングしておりこれを用いてLARGEリコンビナント蛋白質を作製して担癌マウスへの投与を行い、癌の増殖、浸潤、転移などに対する抑制効果を検討する。④LARGEによる癌抑制に関与するシグナル系の同定 α-DGのラミニン結合能が亢進することで細胞の外から中へ癌の制御に関わる何らかのシグナルが伝達される可能性が示唆されている。そのシグナルを明らかにすべくDNAマイクロアレイやリン酸化抗体アレイを用いて癌抑制に関与するシグナル系の同定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は479円の未使用研究費が生じた。これは平成25年度の研究費と併せて消耗品の費用として使用する予定である。これらには抗体をはじめとする各種試薬やプラスチック用品が含まれる。この他サンプルの輸送費用やマウスの購入代金に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)