2013 Fiscal Year Research-status Report
氷縁域における波ー海氷相互作用および氷盤分布の形成過程に関する研究
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24510001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
豊田 威信 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (80312411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三寺 史夫 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20360943)
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Keywords | 極地 / 海氷 / 波―海氷相互作用 / 氷盤の大きさ分布 / 気候変動 |
Research Abstract |
今年度は当初の予定通り(1)東南極域でヘリに搭載したビデオカメラで取得した画像の解析、(2)衛星画像(MODIS)データを用いた氷盤分布の解析、(3)東南極域で取得した波エネルギーデータの解析、そして(4)波-海氷相互作用の数値モデルの開発などを行った。 初年度の観測(2012年9月~11月)において、ヘリコプターによるビデオ観測は当初予定していた氷縁域ではなく海氷内部領域で実施された。そこで今回は目的を修正し、波の影響が少ない内部領域における氷盤分布特性と従来同じ海域の氷縁域で得られた氷盤分布特性とを比較することにより、波―海氷相互作用の影響を間接的に理解することとした。(1)はこのことに対応するものであり、直径約100m以下の比較的小さな氷盤を対象に行った。(2)は直径約1km以上の比較的大きな氷盤を対象としたものである。解析の結果、2つのスケールでともにほぼ自己相似性の特徴を持つこと、ただしフラクタル次元は顕著に異なり小さなスケールでは約1.3、大きなスケールでは約2.9の値を取ること、氷縁域で見られた直径数10mを境とする明瞭なレジームシフトは見られないことなどが分かった。これらの特徴を基に氷盤の形成過程を考察した結果、小さな氷盤は氷盤同士の衝突破砕過程が、大きな氷盤は風応力による破砕過程が重要であり、波―海氷相互作用はこれらの特徴を変調する役割があることなどが示唆された。(3)は研究協力者(Kohout, Meylan)が中心となって行い、波高3m以上の大きな波は氷盤の破砕効果により波の減衰が弱まることを見出した。(4)は研究分担者(三寺)を中心に独自の数値モデルを開発し、内部波によって特徴的な海氷分布パターンが生じることを示した。以上のように、ほぼ当初の研究目的に沿った有意義な結果を出すことができたと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は氷縁域における現場観測から得られたデータを基に、データ解析およびその結果に基づく数値計算により波―氷盤形成の相互作用の実態を明らかにしようというものである。ただし、研究実績の概要で記した通り、現場で氷盤分布の画像を取得できたのは氷縁域ではなく内部領域であったため、研究計画を若干変更せざるを得なかった。そのような状況下で視点を内部領域の氷盤分布の特徴を調べることに移してヘリコプターから取得したビデオ画像および衛星画像の解析を行った結果、意義ある解析結果を導き出すことができた。すなわち、内部領域における氷盤分布には風や氷盤衝突で生じる破砕作用のため既に氷縁域の氷盤分布の原型となる特徴が存在しており、氷縁域における波―海氷相互作用はそれを変調する役割を果たしていることを間接的に示すことができた。この点、研究目的はある程度達成できたと考えている。 一方、波のエネルギー伝搬特性に関しても、限られたブイデータの解析であったが意義ある結果を導き出すことができた。すなわち、波高3メートル以上の大きな波はそれ以下の波と異なり、波の減衰係数が波高に依らず一定の値を持つことが示され、これは氷盤を破砕する効果によるものと推論された。このことは現実の海氷域でストームに伴う大波が氷縁から数100キロメートルも内部に侵入しうる観測事実を説明するとともに、氷盤形成過程と密接に結びついていることが示された(本結果は近くNature誌に掲載予定)。従って、この点においても研究目的はある程度達成できたと考えられる。ただし、波―海氷相互作用に関わる数値モデルの開発に関しては、研究協力者が昨年度は観測データの解析および論文執筆に力を入れた事情もあり、今後の進展が待たれる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度の項目で記述した通り、昨年度は波と氷盤分布の双方の観測データから有意義な解析結果を得ることができたので、最終年度にあたる今年度は解析結果を論文にまとめる作業、それに波―海氷相互作用モデルによる氷盤解析結果の検証に時間を費やす予定である。 論文に関しては、波のエネルギー伝搬特性については研究協力者が既に執筆が終了して近く掲載予定である。氷盤分布解析の結果については、2007年に行われた同じ季節、同じ領域の氷縁域での観測から得られた結果と比較することにより波―海氷相互作用の役割を考察する方針で執筆する予定。また、波―海氷相互作用について直接的に理解するために、研究協力者(Meylan, Kohout)と共同して数値モデルを用いて研究を進める予定である。具体的には、内部領域で観測された比較的小さい氷盤の大きさ分布と比較的大きな氷盤の大きさ分布を与えて波の伝搬特性(特に侵入距離)がどの程度変わるかを海氷域に侵入する波の大きさの関数として調べることなどを予定している。そして観測から得られた、波高3m以上の大きな波は氷盤の破砕効果のため侵入距離が増大するという結果の検証を行いたいと考えている。検証結果が得られれば研究分担者(三寺)と共同して気候モデルに用いられる数値海氷モデルに応用する手法を検討する計画である。研究協力者とは基本的にはメールで連絡を取り合い、可能であれば今年度内に一度渡航して研究打ち合わせを行う。
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Research Products
(19 results)
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[Presentation] Oxygen isotope fractionation during the freezing of seawater
Author(s)
Toyota, T., I. Smith, A. Gough, P. Langhorne, G. Leonard, R. Van Hale, A. Mahoney, and T. Haskell
Organizer
Europian Geoscience Union General Assembly 2013
Place of Presentation
Austria Center Vienna, Vienna, Austria
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