2012 Fiscal Year Research-status Report
雲・エアロゾルの気候影響評価のためのSKYNETデータ再解析
Project/Area Number |
24510007
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高村 民雄 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (40272356)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | エアロゾル / SKYNET / 放射収支 / 単一散乱アルベド / 光学的厚さ |
Research Abstract |
SKYNET(http://atmos.cr.chiba-u.ac.jp/)では、気候調査の基礎量である放射収支について、エアロゾル・雲と放射量を継続的に観測している。sky radiometerを用いた光学的厚さ(AOT)と単一散乱アルベド(SSA)の継続観測と推定では、これまでAOTについては精度良く推定されてきた。一方、SSAの精度は観測条件に依存して、解析結果が異なることが指摘されてきている。本研究では、SKYNETサイトに波長別日射計(MS-700)を追加設置し、散乱日射量及び全天日射量を波長別に計測して、これから独立してAOT及びSSAを推定する手法を開発し、これまでの結果(sky radiometer)と比較検討してきた。 平成24年度は、SSAの信頼度に関する調査研究を主として実施した。SKYNET福江島サイト周辺で、上記2種の計測器から推定されたAOT及びSSAと、航空機により直接計測されたBC粒子及び全粒子から推定されたAOTとSSAの相互比較を行った。その結果、地上観測のMS-700とsky radiometerによるAOTはよく一致していることが明らかとなり、SKYNETでのAOTの信頼性が確認できた。一方、SSAの比較では、MS-700とSky radiometerから求めたものにかなり違いが見られた。これに対して直接計測した航空機観測の結果は比較的違いが少なくMS-700の結果に近い。これに基づき、MS-700 によるSSAの推定結果を全季節について解析し、sky radiometerの結果との比較を推進中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エアロゾルのSSAの精度評価とSKYNETで計測してきた東アジアを中心としたエアロゾルデータの再評価(再解析)が本研究の中心課題である。SSAの信頼度については、2種の異なる器材による結果の比較、大気中のBC粒子の直接計測による推定などで、従来のSSA過大評価の指摘を確認することが出来た。これに基づき、これまでのSKYNETの全データを、再解析することで進んでいる。ほぼ当初の研究計画に沿って進んでおり、sky radiometerの解析ソフトの入れ替え(Ver.4からVer.5へ)も進んでいる。現在、これに伴う全データの再解析の前に、SKYNET特定サイトの試験解析が行われている。従来結果との比較検討の後、SKYNET全サイトデータの解析を行い、同時にウェブを通じて公開予定であるが、現在はその過程にあり、比較結果については公開していない。 一方、SKYNET各サイトの維持管理は従来通り行われている。本年度も、気象研究所における比較検定を実施し、精度維持を図った。しかし、設置から時間の経ったサイトでは器材の老朽化も進み、器材の更新等の新たな問題も発生しており、解析と並行して検討を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
SKYNETに展開するsky radiometerは天空輝度分布を計測する器材であり、これからエアロゾルの性質を推定する。MS-700はこれに対して放射束密度(放射照度、エネルギーフラックス)を計測するもので、天空全体の直達・散乱日射量全量を計測するものである。散乱光を分離計測することでは同じ原理であるが、積算(全天)散乱日射量の計測は放射収支の評価のためのパラメート推定としては、より直接的である。高精度SSA推定のための再解析は、精度を検証する手法の確立が必須であるが、本研究では、基準となる(全波長)全天日射量(直達・散乱成分)の再現性から精度を評価することとしている。 SKYNETサイトの維持管理は引き続き行う予定であるが、前述のように器材の老朽化に対する対策を検討する時期に至っている。このため、器材の更新を含めた長期に安定に動作する新たな器材の開発も視野に入れた研究の推進も必要と考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用は、再解析等に使用する計算機資源関連の消耗品(計算機本体は初年度購入しており、データ蓄積用追加ハードディスク、関連解析ソフト等が中心となる)とデータ処理補助のための費用、またSKYNETの維持管理のためのサイトへの出張に伴う費用である。また現地器材の保守用の消耗品の一部も本研究でまかなう予定である。
|