2013 Fiscal Year Research-status Report
沿岸生態系におけるアマモ場からの懸濁態有機物移出過程の定量的評価に関する研究
Project/Area Number |
24510008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 秀樹 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (30451892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
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Keywords | 海洋生態 / 環境変動 / 生態学 / 海洋保全 |
Research Abstract |
本年度は計画に従い、大槌湾箱崎・根浜両地区のアマモ場での観測を実施した。計画書にあるようにアマモが水柱内で立ち上がっている夏季の状態を観測するために9月に、またアマモが海底部に仰臥する冬季の状態を観測するために11月に係留系を設置する大規模な観測を行ったほか、5月、7月には溶存態・懸濁態物質の分布状況を把握するための採水も行った。 9月および11月にはアマモ場周辺の海水流動場を把握するために両地区に対し、それぞれ二基ずつの電磁式流速計を係留した。当初の計画ではアマモ場周辺の流れ場の観測ではGPS波浪ブイの使用を計画していたが、箱崎地区に東北マリンサイエンス事業が電磁式流速計を含む係留系を設置したこと、また国際沿岸海洋研究センターの調査船の確保が難しかったことなどから、船舶で監視し続ける必要がある同ブイではなく電磁式流速計での観測に切り替えた。アマモの分布状況を調査したが、根浜地区におけるアマモ場の面積は震災前の10%未満にとどまっていた。しかしながら震災の回復過程の貴重な知見となると考えられることから、今後も記録を行っていく予定である。 それぞれ地区のアマモ生育可能な水深に設けた3つの観測点、対照地点として水深9 mの線上に設けた3つの地点にて栄養塩類、溶存有機炭素・窒素、懸濁態有機炭素・窒素およびその安定同位体比測定用のサンプルを採取した。深度の浅い3点での栄養塩類の濃度は対照とした3つの沖側の測点よりも優位に高く、海底付近の栄養塩類の再生が活発に行われていることを示す結果となったが、これらはアマモが繁茂する箱崎地区のみならず、アマモ場が回復していない根浜地区でも見られたことから、アマモによる流速の緩和と懸濁物の沈降過程の促進とは必ずしも連動していない可能性が示された。次年度は底質の組成に対する調査も行い、引き続き検討を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に選定した箱崎・根浜両地区での本調査が開始されたが、導入が遅れていた東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター所有のセジメントトラップも使用することが出来たことから観測については順調に進展していると言える。成果の発表については日本海洋学会大会での発表のほか、大槌湾のある岩手県盛岡市で行われた2件の公開シンポジウムで報告したほか、昨年の推進方策にあった米国で開かれたASLO Ocean Science Meetingにても成果を発表したことから、成果の発表という点でも順調に進展していると考えている。一方で、本年度より懸濁粒子の炭素・窒素の安定同位体比の分析を行う予定であったが、利用予定だった大気海洋研究所のIR-MSの稼働状況が当初の予想以上であったため、分析会社に依頼分析として出すことも計画したが、選定していた会社の予備分析結果が思わしくなく、標準物質による校正法などについて同社の担当者との検討が行われたところから、年度内の分析を完了することが出来なかったため、達成度は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も大槌湾根浜・箱崎地区にて夏季・冬季の各一回ずつ観測を行う予定である。平成24年度に同湾で開始された東北マリンサイエンス事業より得られる資源を利用するため、地区の選定が遅れたことのほか、根浜地区でのアマモ場の回復速度の遅さを考慮して、当初の計画では本年度は夏季にて観測を終了する予定だったが、冬季まで観測を行うこととする。冬季観測で得られた試料分析などスケジュールはタイトなものになることが予想されるが、依頼分析などの活用により対応していくことを考えている。年度末行われる日本海洋学会の春季大会およびスペインで行われるASLO Aquatic Sciences Meetingでは本事業で得られた成果を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一に平成24年度の観測時に利用を予定していた東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターのセジメントトラップの整備が遅れたこと、東北マリンサイエンス事業による箱崎地区アマモ場の調査開始などがあったため、同年度の冬季に行う予定であった観測が行えず、観測時期が平成26年度後半にまでずれ込んだため。また第二に調査船の確保が難しかったことから、流動場の測定をGPS波浪ブイから急遽、大気海洋研究所から借り受けた電磁式流速計にて行ったことから、波浪ブイのサービスの契約を結ばなかったため。第三に炭素・窒素の安定同位体比の分析が大気海洋研究所の分析機器の利用状況の混雑から年度内に行えなかったため。 平成26年度の後期に行う予定の大槌湾での観測調査のための旅費および消耗品の購入、調査に使用する電磁式流速計2基の購入費用、また炭素・窒素の安定同位体比の依頼分析に行うための雑役務費のとして利用を計画している。
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Research Products
(7 results)