2012 Fiscal Year Research-status Report
人との共存を目指したGPSを利用したクマのリアルタイムハザードマップ
Project/Area Number |
24510010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
山本 麻希 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (90452086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 克之 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (00432097)
入江 博樹 熊本高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70249887)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | GPS測位 / ツキノワグマ / ネットワーク技術 / 安全 |
Research Abstract |
初年度は、作成するGPS首輪の性能と比較するため、既存GPS首輪を用いて野外で活動するクマの行動調査を実施した。新潟県津南町で有害捕獲された4頭のツキノワグマに麻酔をかけ、Tellus社製のGPS首輪を装着し、放獣した。その後、首輪に装備されているVHF発信機の電波を利用し、クマに近接し、1頭から3か月間のGPSデータのダウンロードに成功した。 クマの活動量を正確に計測するためと首の動きで機械発電が可能かどうかを調べるため、ボードPCを利用して3軸の加速度を計測するデータロガーを開発し、クマによる外部からの破壊行動に耐えうるケースに収めた。このロガーを飼育下のクマに装着し、発電量をシュミレーションするため、北秋田市にあるクマ牧場で行う実験の準備を行った。開発するGPS首輪で使用する発電装置、情報通信のための機材について情報収集を行った。 GPSモジュールの開発については、入江らが浅海域の潮流計測用に開発したGPS搭載漂流ブイシステムを設計基本として、クマの活動にあわせたGPS首輪システムを開発している。浅海域人間の活動域と重なることから浅海域無線通信コストは、携帯電話は最も低いものの、クマの活動域である山岳地帯でも通信エリア及び通信料金の点のマイナス面があることも否めない。このような地域での利用を補うことを考慮して、携帯電話の3Gデータモジュールに小型の通信モジュールであるZigBeeを通信モジュールを組み合わせた、ハイブリッド方式を検討した。ZigBee通信モジュールの性能を調べるため、見通しのよい広場でアンテナ高さ2mとしたとき、直線距離で500mで必要な情報量を送受信できることを確認した。しかし、アンテナ高さが低くなると通信距離が短くなるため、GPS首輪として利用するには、中継用ネットワーク局を準備するなどの新たな検討点が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存のGPS首輪を用いたデータ取得についてはおおむね順調に進んでいる。 当初、データロガーは既存の商品を購入しようと考えたが、将来、活動センサーとしてGPS首輪に組み込むことも視野に入れ、3軸加速度を計測するデータロガーを自作した。市販のロガーは3軸から計算される活動量を記録している。今回自作のロガーによって、より精度良く活動量を計測でき、活動量に基づく省エネ機能の検討に役立つことも期待できる。 GPSモジュールについては、市販のGPS受信モジュールとしてuBlox社のLEA-6Tを利用して省電力状態で動作させた場合の測位精度の劣化を調べた。GPS首輪は、GPS受信機の電源を定期的にON-OFFさせることで、電力の消費を抑えるが、位置を計測するだけで電源をONの時間を設定すると、数秒以内にOFFすることができる。しかしながら、衛星の位置情報であるEphemeris(放送歴)を新たに取得するためには、最低でも30秒以上時間が必要となり、Ephemerisを取得してからの経過時間は測位精度と関係している。測位開始時間について、クマの活動域を想定したシミュレーション方法を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
精度比較用の既存GPS首輪を装着したツキノワグマ4頭について、冬眠明けにVHF発信機の探査調査を実施し、データをダウンロードする。本研究で開発したGPSモジュールが完成したら、これを人間が持参して実際にツキノワグマが移動していた環境へ赴き、測位精度の比較検証を行う。 自作した3軸加速度ロガーを飼育下のクマに装着し、クマの基本的な動作の加速度データを取得する。取得データを用いて、クマの行動に基づく省エネ機能の検討と機械発電が可能かについて検討する。ロガーに3G携帯を接続し、エネルギー使用量などの実験を行う。 GPSモジュールについては、米国のGPSのほか、ロシアのGLONASSや日本の準天頂衛星(QZS)を利用することを検討している。利用できる衛星数が増えることで、谷間の空が見えにくい場所での測位条件の改善から、測位までの時間短縮が期待できる。本研究で対象とする地域での天空の遮蔽状況を地形情報からシミュレーションする。平成25年度に熊本高専に導入予定のマルチGNSSエミュレータシステムを活用することで、現場と同様のGPS衛星からの信号を実験室で再現することができる。GPS首輪の電源制御の動作条件を変えて、GPS首輪の測位精度と省電力化の効果を比較し、バッテリーの持続時間を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度と同様、実験実施のための物品、旅費(現地での実験・評価、学会発表、研究打合せ)、を予定する。
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