2015 Fiscal Year Annual Research Report
オリゴ糖に着目した海水中の低分子溶存有機物の動態の解明
Project/Area Number |
24510013
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宗林 留美 (福田留美) 静岡大学, 理学部, 准教授 (00343195)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オリゴ糖 / 海洋生態系 / 生元素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、駿河湾表層海水中の二糖について、糖の高感度分析の定法とされている高性能イオン交換クロマトグラフィー(HPAE)とパルスドアンペロメトリ(PAD)検出を組み合わせた分析法(HPAE-PAD)により分析を行った。ただし、海水試料にHPAE-PADを適用する場合、海水に大量に含まれる塩類がPADによる糖の検出を妨害するため、前処理としてグラファイトカーボンカラムを用いた固相抽出により脱塩を行い、脱塩した試料を蒸発乾固して二糖を濃縮した。2016年9月の駿河湾湾奥部の測点SR1では、深度0m、10m、100mでスクロースが検出され、その濃度は0.36~1.30nmol/Lであった。また、中央部の測点SR3でも深度100mでスクロースが0.22nmol/L検出された。スクロース以外の二糖では、マルトース(SR1、10m、0.76nmol/L)、トレハロース(SR1、100m、1.77nmol/L)、ラクツロース(SR3、10m、0.90nmol/L)が検出され、パラチノースとマルツロースは検出されなかった。スクロースは先行研究においても沿岸海水で検出されており、スクロース、マルトース、トレハロースは平成24年度にMPN法により調査した二糖を利用して増殖可能な原核生物のうち、特に駿河湾海水中での現存量が高かった二糖であった。一方、ラクツロースは人工化合物であるが、駿河湾海水中の原核生物が増殖に利用できることを確認しており、今回、ラクツロースが駿河湾海水中で検出されたことからラクツロースが沿岸生態系に寄与している可能性が示された。また、分析対象とした6種の二糖以外にも未同定のオリゴ糖が検出され、その種類は陸寄りの測点SR1で4~6種と、沖寄りの測点SR3の3~5種よりわずかながら多く、二糖の多様性に陸域からの影響があることを示唆した。
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[Presentation] 駿河湾における繊毛虫の分布2016
Author(s)
宗林留美, 鬼頭信幸, 吉川 尚, 西川 淳, 松浦弘行
Organizer
2016年度日本海洋学会春季大会
Place of Presentation
東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)
Year and Date
2016-03-14 – 2016-03-18