2013 Fiscal Year Research-status Report
光学的手法を用いた植物プランクトンによる一次生産速度の連続測定
Project/Area Number |
24510015
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
後藤 直成 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40336722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伴 修平 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50238234)
石田 典子 名古屋女子大学, 文学部, 教授 (90191874)
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Keywords | 一次生産 / 植物プランクトン / クロロフィル蛍光 |
Research Abstract |
本研究では,植物プランクトン細胞から放射されるクロロフィル蛍光と光化学系IIにおけるに電子伝達速度(ETR:この値から高い精度で酸素発生・炭素固定速度を推定できる)との関係を評価し,クロロフィル蛍光による連続的一次生産速度測定の可能性を検討した。 植物プランクトン単離培養種(6種)と琵琶湖北湖表層から採取した天然植物プランクトン群集(4群集)を用いて以下の室内実験を行った。温度を一定に保ったインキュベータ内にて,植物プランクトンに照射する光量子量を2時間ごとに変化(5段階:0~584 umol quanta/m2/s)させながらクロロフィル蛍光強度を連続的(10分間隔)に測定した。同時に,光量子量を変化させるごとに植物プランクトンのETRおよびクロロフィルa濃度を測定した。 単離培養種(緑藻を除く)および天然植物プランクトン群集のクロロフィル蛍光強度(単位クロロフィルa濃度で規格化)は光量子量の増加とともに低下する傾向を示した。また,暗条件下におけるクロロフィル蛍光強度は明条件における蛍光強度よりも高くなる傾向を示した。このような現象は,植物プランクトンの蛍光の量子収率が光量子量の増加に伴い低下(キサントフィルサイクルやステート遷移による非光化学消光)したためであると推測される。 各単離培養種の暗条件下と明条件下におけるクロロフィル蛍光強度の比(明暗比)とETR間には顕著な高い正(あるいは負)の相関関係が認められた。ただし,全単離種で上記2者間の関係を評価した場合,2者間に相関関係は認められなかった。これらのことから,各植物プランクトン単離種のETRの推定はクロロフィル蛍光強度から高精度かつ連続的にできるが,一方,天然植物プランクトン群集のETRの推定は現状では困難であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、係留型クロロフィル蛍光計を用いて植物プランクトンの一次生産速度を連続的(およそ10分間隔)に測定する方法を検討した。その結果、係留型クロロフィル蛍光計で測定した植物プランクトンのクロロフィル蛍光強度(クロロフィルa濃度で規格化)の明暗比はETRと高い正(あるいは負)の相関関係にあることが明らかとなった。このような関係性は、緑藻(2種)を除く、多くの植物プランクトン単離培養種(珪藻2種、シアノバクテリア1種、鞭毛藻1種)で確認され、また、各月における琵琶湖の天然植物プランクトン群集においても確認された。これらの結果は、単種、あるいは、ある時期における天然植物プランクトン群集の一次生産速度をクロロフィル蛍光計により連続的に測定できることを示している。実際に現場水域での測定に応用するためには、いくつかの課題が残っているが、クロロフィル蛍光の昼夜比とETR間に一定の関係性が存在することを示せたことから、「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究では、各植物プランクトン単離培養種およびある時期の天然植物プランクトン群集のクロロフィル蛍光強度の昼夜比とETRとの間に高い正(あるいは負)の相関関係があることを示した。しかしながら、この関係性は各単離種および各群集間で異なっており、全体で評価した場合、2者間には相関関係は見られなくなった。このため最終年度は、さらに多くの単離種について、昼夜比とETRとの関係を評価し、各単離種間で関係性が異なる要因を探る。また、琵琶湖の天然群集については2014年4月~12月まで月に1回の頻度で昼夜比とETRとの関係を評価する。このとき、琵琶湖湖水の各環境因子(水温、光量子量、栄養塩濃度など)および天然群集の種組成も多波長励起蛍光計により測定する。最終的に、これらの実験・観測で得られた種々のデータに基づいて、クロロフィル蛍光強度の昼夜比からETRを推定するアルゴリズムを作成し、現場水域における植物プランクトンの連続的一次生産速度の測定を可能にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の支出内訳の一部を年度途中に変更したため,次年度使用額が発生した. 次年度使用額は,翌年度分として請求した助成金と合わせて物品費として支出する.
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