2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24510020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
太田 俊二 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (10288045)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 感染症 / 熱収支 / 水収支 / 気候条件 / 灌漑 / 半乾燥域 / 生理生態的特性 / ハマダラカ |
Research Abstract |
従来型の感染症分布モデルではほとんど考慮されてこなかった媒介生物の生理生態に着目した生育評価モデルを構築し、感染症リスクモデルにたいして基礎的知見を与えることを目的としている。熱収支気候学的モデルとハマダラカの生活史にもとづく日単位の世代数推定モデルを結合させることを試みた(coupled model for Ecophysiological and Climatological Distribution of mosquito generation: ECD-mg)。その結果、ハマダラカの季節的な消長やモンスーンアジア域での空間的な生息域を表現することに成功した(Clim Res, 53, 77-88)。このモデルの主要な変数は気候データであり、将来変化すると予測される気候値に変化させると、ハマダラカの生息の将来予測を行うことが可能になる。本モデルの意義は将来の地球温暖化研究に応用可能な点である。 加えて、構築したハマダラカの生息域評価モデルのうち、ハマダラカ各種ごとのパラメータ設定を行い、気候値をもとにした分布域評価に展開することを試みた。また、このモデルに農業のための灌漑水を水収支モデルの部位に組み込み、インド西部の乾燥地域で再現実験を行ったところ、単に気候値のみを入力するよりも灌漑を組み込んだほうがハマダラカの生育分布や生育時期を正確に表現することができた。以上のことから、人為的な水がハマダラカの生育に大きな影響を与えていること、人間の食料を得るための農業がかえって感染症を拡大することに働いてしまっていることが明らかになった(Int J Biometeorol, in press)。また、この研究は、30分グリッドといった大まかな気候値でしか評価してこなかったECD-mgモデルが比較的小さな地域でも高い精度でハマダラカの挙動を説明できることも同時に示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
灌漑を組み込んだモデルはInt J Biometeol 誌に受理されている。また、ハマダラカ各種のパラメータ設定は完了し、論文執筆中である。個体群動態モデルのアップデート作業もおおむね順調に進み、動作テストを行い、微修正の途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
個体群動態モデルへの書き換えはそれほど困難ではないものの、さらなる発展が可能な骨太な熱・水収支–個体群動態の結合モデルを目指すべきであり、2年次の重要テーマとして初年度とあわせて2年計画に変更した。代わりに、感染症罹患者予測や将来予測を前倒しし、完成したモデルを利用した出力を行い、随時研究発表をしていく方針としたい。それゆえ、3年目の課題終了時には計画と同じ目標に到達できるものと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算機資源が不足しているため、それを補うようなCPUの導入を計画している。また、国内の通常の学会、国際学会などでの発表を考えている。なお、コーディング等で学生の力を借りるため、謝金にある程度支出する予定である。
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Research Products
(8 results)