2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24510020
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
太田 俊二 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10288045)
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Keywords | 水温評価モデル / 個体群動態モデル / 生態系影響評価 / 感染症媒介生物 / 地球温暖化 |
Research Abstract |
今年度は当初の研究目的である感染症媒介生物の気候学的・生態学的分布域評価モデル開発の一環として、個体群動態モデルの開発を中心に行った。このモデルが確立されると、日単位という高い時間解像度での媒介蚊各種の分布や発生密度の予測が可能となる。初年度の研究計画であった水・熱収支モデルに結合させる個体群動態モデルの基盤部分やマラリア媒介蚊各種のパラメータの設定はほぼ終了した。 このモデルの開発状況と成果については、個体群生態学会第29回大会(2013年10月)や日本生態学会第61回大会(2014年3月)において発表した。開発中の個体群動態モデルがマクロスケールでの種の発生可能時期を予測するだけでなく、実際のマラリア媒介蚊各種の季節的な発生状況をミクロスケールでも再現可能であることを報告した。この結果より、二年目の実施計画であった本モデルのマルチスケールモデルとしての信頼をある程度確かめることはできたものの、とくにミクロなスケールにおいて複数種が同時に発生する地域を対象とした地理的分布や発生時期の検証が不十分であることから、本モデルの信頼性の確保は途上にある。ただし、気候値をもとに世代数を再現するモデルを発展させた複数種の潜在分布や優占種分布の研究は完成し、国際誌への投稿準備中である。 一方、二年目のもう一つの目標である将来の気候変動に伴う媒介蚊の将来予測研究は、先の個体群動態モデルの修正のため、当初計画よりも3~4ヶ月程度の遅延が生じている。ただし、将来の気候データの整備や気候変動研究の分析手法確立の一環として、日本農業気象学会2014年全国大会(2014年3月)では気候変動と水稲の収量の関係性を分析する方法を発表したり、各種AOGCMのダウンスケールは完了している。将来を見据えた気候変動予測を行うための準備は終了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二年目の前半でほぼ完了する予定であった感染症媒介生物の気候学的・生態学的分布域評価モデルとしての個体群動態モデルの開発に手間取ったことが原因である。とくに、精度の高い感染症媒介生物のマルチスケールモデルとして発表するためには、亜種ごとの生息地等の生理学的な違いを考慮する必要があることが新たに判明した。そのため、当初の計画にはなかったそれら亜種の生理学的な違いの追加調査やパラメータ設定と検証に時間がかかったことが遅延の直接の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた計画よりもやや遅れている。そのため、早急に亜種を含めた感染症媒介生物の生育評価モデルの確立と将来予測を行うことを最優先とし、これらの結果は、査読付きの国際誌上で発表することを最終年度の最優先目標としたい。さらに、現在主に取り扱っているマラリア媒介生物以外の昆虫については、生活史や生理学的特徴が似ているイエカなどの「媒介蚊」に対象種を限定して分析を行うことにより、当初の予定よりも遅れた分の対応をしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で購入予定であったワークステーションの発売に遅延が生じた(2014年2月から出荷が開始された)ことが差額の理由である。併せて、モデル開発の遅れから大学院生のコーディングアルバイト(人件費)の必要性が低下したことも影響した。 2014年に出荷開始されたワークステーションの購入と遅れている分のコーディングや入力データベースの整形整理のアルバイトが大量(当初予定の2年次までの分が最終年度)に発生するため、これらに充当し、当初計画の遅延分を取り戻す予定である。
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Research Products
(5 results)