2014 Fiscal Year Research-status Report
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24510020
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
太田 俊二 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10288045)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水温評価モデル / 個体群動態モデル / 生態系影響評価 / 感染症媒介生物 / 地球温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の予定では、感染症媒介生物の将来気候下での分布域評価を行うことを最終年度の目標に、その源となる個体群動態モデルの開発を中心に行ってきた。このモデルの精度が十分に高いことが証明できれば、日単位という高い時間解像度での媒介生物の分布や発生頻度、密度の予測が可能となる。モデルの開発はほぼ終了し、将来気候データの準備も整っており、成果をとりまとめる段階であった。しかし、二年目の課題遂行中、モデルの推定精度に疑義が生じ、丁寧にその修正を行ったため、三年目の最終年度もすでに6ヶ月ほどの遅れでスタートした。科学的に信頼性の低いモデルでの将来気候時の予測を上塗りするよりも、原点に立ち返ってモデルの再構築することを選択した。 (1)とくに、熱収支及び水収支に関わる項目に時間解像度の問題があることがわかり、この点を改めるため、媒介蚊の生息する森林を想定した植物の生長モデルを構築して実蒸発散量を正確に求めることを試み、熱収支的な計算のズレを解消することに成功した。この点に関しては、日本農業気象学会(2015年3月)で報告した。 (2)現在、開発したモデルに関する論文の投稿準備中である。 (3)ほかに、気候変動適応策研究の一環として、将来気候下の生物評価の手法の一般的な部分を抽出し、解説する一般書の編著を行い、年度末に刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要にも記したように、個体群動態モデルの出力精度に問題があることがわかり、その修正対応が遅延の最大の理由である。モデルの骨子は修正され、投稿論文を準備中である。また、提供を受けた将来気候モデルによるデータの解像度が研究計画申請時に想定したよりも低かったため、モデルの出力形態の調整を含め、計画を変更せざるを得なかった。 加えて、平成26年度中に関東近郊を中心に発生したデング熱を媒介するイエカ、シマカへの本モデルの応用を試みる必要性を感じ、適応範囲の広いモデルへと発展させるためにさらに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目から蓄積した遅れを三年間の課題期間中で取り戻すことは不可能であると判断したため、また提供データの不備も相まって、一年間の延長申請を行った。十分な精度をもったモデルであることを確認したのち、早急に査読付き国際誌への投稿を進めるとともに、結果的に四年間の計画となるので、デング熱の評価モデルへの応用できる準備研究として意味をもった研究へと発展させることも試みたい。
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Causes of Carryover |
2013年度までにハマダラカ各種の分布モデルと個体群動態モデルを開発し、2014年度はそれらをもとに将来気候変化時の分布や動態のシミュレーションを行うとともに学会発表や国際学術雑誌において発表する予定であった。ところが、提供を受けた将来気候モデルの出力空間解像度が計画申請時の予定ほど高いものではなかったため、計画を変更せざるを得なくなった。とくに、モデルの調整作業に多くの時間を費やすこととしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
将来気候下での予測シミュレーションや学会発表及び論文発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充当する計画である。
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Research Products
(5 results)