2012 Fiscal Year Research-status Report
能動・受動型測器と数値モデルを複合利用したエアロゾルの大気境界層への影響解明
Project/Area Number |
24510026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
工藤 玲 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (00414508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 智明 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (10462491)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エアロゾル / 大気境界層 |
Research Abstract |
本年度は、能動(ライダー)・受動測器(スカイラジオメータ)による観測から、光吸収性を含めたエアロゾル光学特性の鉛直分布を推定する手法の開発と、エアロゾル光学特性の変動が、大気放射場を通して大気境界層へ与える影響を調べるための一次元大気境界層モデルの開発を行った。 観測からエアロゾル光学特性の鉛直分布を推定する手法の手順は、まず、スカイラジオメータの太陽直達光、散乱光の観測から大気気柱平均(または積算)の光学特性を推定する。次に、大気気柱平均(積算)値をもとに、ライダー観測の各高度から帰ってくる信号を使って、鉛直分布を求める。開発した推定法の評価を行うために、鉛直に不均質な分布のエアロゾルを想定してシミュレートしたライダーとスカイラジオメータのデータを作成し、テストを行った。エアロゾル光学特性の鉛直構造は、概ね良く推定できていた。光学特性のうち、光吸収性に関わる消散係数と一次散乱アルベドの推定に対する誤差は、それぞれ約20%と約5%であった。また、エアロゾルの粒径分布の鉛直構造も、定性的に扱える程度には推定できることがわかった。開発した推定法を使って、黄砂が到来する春季の実際の観測データを解析したところ、大気境界層内のエアロゾルとその上空のダストの光学特性を区別して示す結果が得られた。 一次元大気境界層モデルの開発に関しては、気象庁の短期予報モデルに使われている大気境界層の物理過程を組み込んだ数値モデルを導入した。今後、大気放射伝達の物理過程を高度化し、エアロゾル光学特性の影響を調べることが出来るように改造していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で予定している工程は、大きくは、「1.観測からエアロゾルの光学特性の鉛直分布を推定する手法の開発。」、「2.エアロゾルの大気境界層への影響を調べるための数値モデル開発。」、「3.エアロゾルの短期・長期変動が大気境界層へ与える影響の解析。」の3つである。本年度と次年度で1と2の工程を終える予定でいる。1の工程は、本年度で達成することが出来た。2の工程に関しては、本年度でベースとなる数値モデルを導入することが出来き、予定通りのペースで作業は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ライダーとスカイラジオメータの通年観測を実施し、データを蓄積する。そして、開発した推定法を使って、エアロゾル光学特性の鉛直分布を導出し、エアロゾル光学特性の短期変動を調べていく。大気境界層モデルの開発に関しては、本年度に導入したベースとなる数値モデルに、より高度な大気放射伝達の物理過程を組み込む作業を行っていく。大気境界層モデルが完成した後、先行研究で得られているエアロゾル光学特性の長期変動の結果を使って、エアロゾルの長期的な変動が、大気境界層へ与える影響について調べていく。また、ライダーとスカイラジオメータから得られたエアロゾル光学特性の鉛直分布の短期変動が、大気境界層へ与える影響についても調べていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度からの繰り越しを含めて、成果発表のための研究集会への参加、解析補助用PCの購入、スカイラジオメータとライダー観測のメンテナンスとデータ保存のためのストレージの購入に使用する。
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