2013 Fiscal Year Research-status Report
能動・受動型測器と数値モデルを複合利用したエアロゾルの大気境界層への影響解明
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24510026
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
工藤 玲 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (00414508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 智明 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 主任研究員 (10462491)
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Keywords | エアロゾル / 大気放射 / 大気境界層 / リモートセンシング |
Research Abstract |
平成25年度は、平成24年度に開発した放射伝達モデルと境界層モデルを組み合わせた一次元大気モデルを用いて、1976年から2008年のつくばにおけるエアロゾル光学特性の長期変動が、大気放射場を通して大気境界層へ与える影響について感度実験を行った。また、スカイラジオメータとライダーの観測を継続し、データの収集を行った。 先行研究で得られている1976年から2008年のエアロゾル光学特性の変動は、光学的厚さの減少(エアロゾル量の減少)と一次散乱アルベドの増加(光吸収能力の低下)に特徴づけられている。一次元大気モデルを用いた感度実験の結果、これらの変動は、大気への直接加熱量の減少と地表面へ入射する日射量の増加をもたらした。そして、地表面での日射量の増加は、顕熱・潜熱フラックスの増加を引き起こした。この顕熱フラックスの増加は、大気境界層高度を増加させた。一方、潜熱フラックスの増加は、大気中に含まれる水蒸気量を増加させた。大気中の水蒸気量の増加は、温室効果を増強し、地上気温の日平均値と日最低値を増加させた。日最高気温に関しては、顕熱フラックスの増加よりも、エアロゾルによる大気への直接加熱量の減少が大きく影響した結果、減少する傾向が見られた。このように、エアロゾル光学特性の1976年から2008年の長期変動は、太陽放射-地表面-大気境界層-地球放射の物理過程へ大きな影響を持ち、結果、気温、水蒸気等の大気要素の長期変動をもたらし得ることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で予定している工程は、大きくは、「1.観測からエアロゾルの光学特性の鉛直分布を推定する手法の開発。」、「2.エアロゾルの大気境界層への影響を調べるための数値モデル開発。」、「3.エアロゾルの短期・長期変動が大気境界層へ与える影響の解析。」の3つである。当初の予定通り、平成25年度までに1、2の工程を終え、3の工程の内、エアロゾルの長期変動が大気境界層へ与える影響を調べることが出来た。また、ライダーとスカイラジオメータの継続観測を行うことが出来、予定通りのペースで作業は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ライダーとスカイラジオメータの観測を実施し、データを蓄積する。そして、開発済みの推定法を使って、エアロゾル光学特性の鉛直分布を導出し、エアロゾル光学特性の短期変動を調べる。そして、開発済みの一次元大気境界層モデルを用いて、エアロゾル光学特性の高度分布の短期的な変動が、大気境界層へ与える影響について調べていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
観測機器(スカイラジオメータとデータ収録を含めた周辺部)の消耗部品の購入を予定していたが、観測不能に陥るような消耗が見られなかったために次年度使用額が生じた。 平成26年度も継続してスカイラジオメータの観測を行うため、機器の消耗部品の購入に充てる。また、平成25年度に実施した文献調査により、スカイラジオメータの観測方法を変更することで、研究の発展が見込まれるため、観測用のソフトウェアの更新に充てることを予定している。
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Research Products
(9 results)