2013 Fiscal Year Research-status Report
降水試料濾過フィルターを用いた元素状炭素粒子の現在・過去の地表面性沈着量評価
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24510028
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
兼保 直樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (00356809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 泉 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部・環境科学研究センター, 研究主幹 (10442617)
秋山 雅行 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部・環境科学研究センター, 研究主幹 (30442619)
松本 潔 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60373049)
山口 高志 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部・環境科学研究センター, 研究員 (90462316)
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Keywords | 元素状炭素粒子 / 沈着フラックス / 年々変動 / 長距離輸送 / 都市大気汚染 |
Research Abstract |
地方自治体での酸性雨測定の際に前処理に使用されている濾過メンブラン・フィルターに保持された元素状炭素を測定する手法を確定し、バックグラウンド地点(北海道利尻島)および都市域(札幌市)における20年程度遡った時点までのバルク(湿性+乾性)沈着量レコードを復元しつつある。利尻島でサンプル採取されている1997年~2001年、2008年~2012年の期間について分析が終了し、札幌についても1997~2001年、2011年~2012年までの分析を終了した。 大都市である札幌と、極めて人口密度の低い利尻での沈着量は年間値でみると予想外に差は小さく、多い年でも札幌は利尻の2倍程度である。また、年による変動が大きいが、その変動パターンは両地点で極めてよく類似している。すなわち、大気中から地表面に主として沈着を起こすメカニズム(湿性沈着)の支配要因(降水量などの気象要素)、および両地点への長距離輸送による到達量により沈着量の変動は支配されており、札幌で発生した都市起源の元素状炭素粒子がその場に沈着する量はあまり多くないと考えられる。また、2000年、2001年の年間沈着量が突出して大きく、特に2001年の利尻における月間沈着量は冬季のほか4~5月の春季に大きいことから、シベリア・アムール川流域における森林火災の影響を大きく受けたものと考えられる。札幌での沈着量の年々変化には国内のディーゼル排気ガス規制の影響が現れている可能性があるが、2000年代中葉の分析結果が出てきた時点で明確になると期待される。 また、年間沈着量の10~50 mg /m2 /yの絶対値は、先行する数値モデル研究の北半球中緯度帯での平均的なバルク沈着量の計算値と整合的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
このような分析が実際に可能であるかどうかという大きな課題に関しての検討は完全に終了し、実際の分析データを次々と出し始めた状況にある。また、予想外に大きな年々変動が両地点で同期して得られていることから、分析値が実際の大気からの輸送状況とは無関係な要因、たとえば分析時のコンタミネーションなどに大きく影響されているものではないこともはっきりした。これより、概ね順調に研究は進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度中に札幌のサンプルの分析を終了し、さらに大気中に浮遊するエアゾル中の濃度分析を進め、両者を併せてscavenging ratio (洗浄比)を算出する予定である。これより、輸送量が変動したのか、それても沈着メカニズムを支配する気象要因が変動したのかについて切り分けることができると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度で必要とした消耗品の必要額の予測がやや大きかったため、若干の差が生じた。 次年度の研究においてより良い結果を出せるよう、消耗品(フィルター類)の一部のグレードをより上位のものとすることに充当する予定。
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