2012 Fiscal Year Research-status Report
寒冷域に生育する森林生態系炭素循環の環境変動に対するレジリエンスの定量化
Project/Area Number |
24510029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
戸田 求 広島大学, 生物圏科学研究科, 講師 (40374649)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 森林生態系モデル / 逆推定解析 / レジリエンス / 国際情報交換 アメリカ / 国際情報交換 ドイツ |
Research Abstract |
本研究では,冷温帯から亜寒帯の北半球高緯度帯に生育する森林生態系を対象に,森林炭素循環の年々変動を制御する植生動態要因(生物要因)と環境要因(非生物要因)の不確実性評価を行うことを目的とした。この目的を達成する上で,24年度において筆者は生態系モデルの構築,ベイズ逆推定解析を行うためのアルゴリズム開発,これらの統合化を進めた。生態系モデルと解析プログラムの構築はほぼ終了できた。一方,生態系プログラム中に含まれている解析対象パラメータ数の数がやや多いことにより,予想外に解析計算時間のかかることがわかった。そこで,現在は,これらのモデルと解析プログラムの統合化を行う上で,計算効率を高めるためにキーパラメータの選定を行っている段階である。 同時に,筆者は解析対象とする森林で得られた観測データの収集を確実に行ってきた。本解析研究に必要となるデータの収集は,公開されているデータベースからの抽出以外に,対象サイトを管理している研究者とコンタクトをとることで進めてきた。また,それらの解析利用に向けてのフォーマット化をおこなった。これにより,全対象地域のうち半数以上のサイトでのデータベースが構築できた。残りは25年度に関係機関の研究者と連絡を密にし,完成させることとする。 最後に24年度に,筆者は寒冷域生態系の気候変化応答に関する文書を作成し,現在投稿査読過程にある。同文書は本研究の目的や重要性をより詳細に取りまとめたものであり,25年度中の出版を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の中で,これまでの進展具合と問題点などについてはすでに触れた。解析を行う上で必要となるデータベースの構築には幾分時間を要する点が生じているが,25年度において達成できる見通しである。これにより,おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ構築できた生態系モデルと解析アルゴリズムの統合化により,作成過程にある複数の森林サイトのデータベースを入力値として,パラメータ逆推定解析を開始する。解析の結果と考察については,各森林サイトで本解析では使用されなかった観測調査によって得られた結果などを加味し,包括的な議論を行っていく必要がある。そこで,解析結果を取りまとめ,関連する海外研究者とのセミナー実施や情報交換が重要な場となる。また,現在構築中の生態系モデルでは,モデル入力変数として必要な観測データが得られていない地域があり、代替的な手法を用いて必要な変数を使用している。今後は,必要な計測機器を導入しそれらを用いた解析を行うことを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策に述べた通り,対象とする森林でのデータを管理する海外の研究者との交流を定期的に実施することは重要であると考える。そのため定期的な訪問を行い,結果・考察の打合せ,および研究論文の取りまとめに関する打合せを実施する。さらに,使用する生態系モデルの入力変数として有効なデータの観測値を収集するための観測機器,およびデータ収録に要する収録機器を予算内の研究費を使用して購入することを検討する(いずれも備品対象にはならない)。これらの活動を通して,国内外学会で研究成果を公表するために研究費を使用する計画である。
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