2013 Fiscal Year Research-status Report
日本とアジア各国での大気汚染による健康影響に関する包括的研究
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24510033
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
土居 弘幸 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20452568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
頼藤 貴志 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (00452566)
津田 敏秀 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (20231433)
鹿嶋 小緒里 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 助教 (30581699)
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Keywords | 大気汚染 / 粒子状物質 / 健康影響 / 脳血管疾患 / 環境保健 |
Research Abstract |
大気汚染による健康影響はアジアでの影響が大きいと考えられている。その為、我々は、国内や東南アジア諸国で大気汚染に関する余剰死亡推計や政策評価、大気汚染の短期的・慢性的影響評価、周産期指標への影響の研究を行っている。 平成25年度は、アジア各国(ASEAN+3)での大気汚染による余剰死亡数推計の学会発表・論文作成と短期曝露と死亡の関連のデータセット作成と評価、国内での大気汚染短期曝露と疾病の関連の評価、大気汚染曝露の母体合併症への影響評価を行った。アジア35都市において、2008年又は2009年、一年間での粒子状物質曝露による全死亡と心肺血管系死亡・肺がん死亡の予測を行った。WHOが推奨する基準値まで大気汚染濃度を下げると多くの余剰死亡を防げることが推計された。その結果を国際学術会議にて報告し、共同研究者と論文をまとめ現在投稿中である。またアジア各国において、大気汚染短期曝露と死亡の関連を評価するデータセットを作成・評価し、学会発表を行った。 国内の研究では、大気汚染の短期曝露による影響評価として、粒子状物質を含む大気汚染物質が救急搬送を増加させるかを、岡山市消防局より入手した2006-2010年の救急搬送データを利用し評価した。発症0-6時間以内の大気汚染物質が心血管系疾患や脳血管疾患による救急搬送を増加させていること、発症24時間以内の大気汚染曝露が呼吸器疾患による救急搬送を増加させていることがわかった。更に、静岡県の周産期医療センターで出生した約2万人の児を対象とし、道路近傍に住む母親が妊娠中の母体合併症を多く発症していることを認め、現在投稿準備中である。今回得られた知見は、日本を含むアジア地域における環境政策に貢献すると思われる。我々が所属する「Regional Forum on Environment and Health」においてアジア各国と共有していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載し、平成24年度に検討できなかった「大気汚染の周産期指標(母体合併症など)への影響の検討」を今年度行うことが出来た。平成25年度の計画としては、次の3点の計画を予定していた。①アジアでの大気汚染の短期曝露による全死亡・死因別死亡への影響の検討、②東京都以外の府県も対象にした、上述のディーゼル車排出規制の好影響の検討、③国内での大気汚染の児の健康・成長・発達への影響の検討の為のコホートの確立。「8.研究実績の概要」で述べた通り、①と③には取り掛かっている。②は達成できなかったが、代わりにデータ入手のしやすさより、平成26年度に予定していた「大気汚染の短期曝露による脳梗塞発症への影響の検討」をまず行った。来年度予定していたことも既に出来ており、「おおむね順調に進展している」と自己評価できるものと思われる。今年度検討できなかった上記②の課題については平成26年度に検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に従い、今後もアジア各国、国内での研究を並列して推進していく。平成26年度に達成しようと考えている内容は、アジアでの短期影響評価の完了、国内での環境政策評価、小児期コホートのスタート、気温と大気汚染の相互作用の評価である。 具体的には、アジア各国での研究としては、我々が以前東京都で行った研究(Yorifuji et al., JOEM 2011)に則り、大気汚染物質(粒子状物質、二酸化硫黄、二酸化窒素、オゾン、一酸化炭素)への短期曝露と全死亡・死因別死亡との関連の評価を行う。データは収集し、準備は行っている。 国内の研究では、我々が以前評価したディーゼル車排出規制の好影響の検討(Yorifuji et al., STOTEN 2011)を、東京都以外の府県にも拡大し、ディーゼル車排出規制が、実際の大気汚染濃度、結果的には健康にどのように影響を与えているかを検討する。また、大気汚染の短期曝露と心肺血管系疾患罹患(特に脳梗塞発症)との関連を検討する際に、大気汚染と気温の相互作用を検討する。また、大気汚染の小児期発達への影響を評価するために、周産期施設と協力し、児の健康・成長・発達を追跡・評価できるコホートをスタートさせる。
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Research Products
(5 results)