2012 Fiscal Year Research-status Report
レジオネラ症患者由来と環境由来SG1株間の疫学的及び病原性相違に関する研究
Project/Area Number |
24510038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
大野 章 東邦大学, 医学部, 講師 (40223903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚之 東邦大学, 医学部, 准教授 (50104154)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Legionella pneumophila / PCR based subgrouping / MLST |
Research Abstract |
レジオネラ市中肺炎から分離される原因菌Legionella spp.の約90%はL.pneumophila serogroup 1(SG1)である。血清型であるSG1は抗原性LPS構造のバリエーションによりsubgroupingすることができる。一方レジオネラ肺炎の感染の場は本邦では多くが循環式浴槽水、欧米では冷却塔水あるいは景観水など、いずれにしても人工水環境である。しかし人工水環境から分離されるSG1株のsubgroupは臨床から分離されるsubgroupと異なることが報告されている。しかしなぜ人工水環境からはほとんど分離されないSG1によって人は感染するのかその要因は不明のままである。本研究はその要因を明らかにすることを目的としている。 平成24年度の研究計画は東邦大学医学部微生物・感染症学講座に全国より送付されたL.pneumophila SG1患者分離株51株、そして自身で集めた循環式浴槽水分離株29株、冷却塔水由来33株を用い、PCR法によるSG1 subgroupingを実施し、さらに疫学的解析に重要な位置を占めている7つのhouse keeping遺伝子のallele多様性を基にしたMLST:Multi-locus sequencing typing解析を実施することで、本邦におけるL.pneumophila SG1の疫学的特徴を明らかにすることにある。平成24年度の研究計画に対しては予定通りすべて実施した。その結果、患者分離株と、環境分離株でsubgroup、MLST typeにそれぞれ特徴が見られ、また環境分離株でも温泉分離株と冷却塔分離株で特徴が異なることが明らかとなった。 さらに平成25年度に実施予定の病原性因子の解析についても一部先行実施し、これも患者分離株と、環境分離株、環境分離株でも温泉分離株と冷却塔分離株で特徴が異なることも明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施予定の研究計画であるL.pneumophila SG1株の subgroupingおよびMLST解析についてはすべて完了し、患者由来、環境水由来でこれら疫学的な特徴が大きく相違すること、また環境水由来株でも循環式温泉浴槽水由来株と冷却塔水由来株間で相違することを明らかにすることができた。さらにL.pneumophilaが共通して持つ病原性因子Type IV secretion system B, Type II secretion system と、菌株間で多様であることが報告されている病原性因子Type IV secretion system A, Pore形成因子Rtx, 65kb Pathogenic IslandについてPCR法により解析することを平成25年度に予定していたが、それについても一部先行して実施することができた。その結果subgroupingやMLST解析結果同様に、患者由来、環境水由来で、さらに環境水由来株でも循環式温泉浴槽水由来と冷却塔水由来間で後者の病原性因子の保有状態が相違することを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方は、平成24年度で明らかにされてきたエビデンスをもとに、患者由来株、循環式浴槽水由来株、冷却塔水由来株のそれぞれの特徴を表す菌株を混合し、レジオネラの自然界での宿主の一つAcanthamoeba、および人マクロファージ由来U937細胞を用いて感染実験を行う。これらを感染温度を変えることでも行い、たとえば人マクロファージに対しては患者由来株がより感染力が高い、Acanthoamoebaに対してはその反対などの結果が得られれば、なぜ環境に少ないL.pneumophila SG1株が環境に多く分布するSG1株よりも容易に感染するのかなど、解析していく。さらにそれぞれの由来株の特徴を有するSG1株の各複数株の全ゲノム解析を行い、それぞれの特徴を明らかにし、なぜ患者由来SG1株が、環境水中にマイナーな存在であるのかその理由を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の使用金額が予定を下回った理由は、MLST解析依頼の費用が値下がりしていたこと、あるいは講座のストックするディスポーザブル材料などを使用させてもらっていたことなどがあげられる。平成25年度は、上記研究を遂行するにあたって、細胞感染実験に使用するBCYE寒天培地600枚、同プラスチックチューブ1000本、同200μL用、1mL用チップ100本入り各10箱の購入、さらに全ゲノム解析委託費などに主に使用する予定である。前年度使用予定の経費は、全ゲノム解析に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)